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月が綺麗ですね。〜ギルド編〜  作者: 藍歌
ギルド編
9/26

9.平和な朝

  優しい陽の光に恵美はゆっくりと瞳を開く。

  目の前で眠っている蒼を認め、目が細められ自然と笑みが零れる。

  起こさないように静かにゆっくり起き上がるとベッドの側に置かれた今日の衣装に手を伸ばした。


「もう起きるのか?」

「おはよう、蒼」


  いつの間にか目を覚ました蒼は恵美の腰に腕を回す。


「おはよう。頭は痛くないかい?」

「うん。痛くないよ?」

「吐き気もない?」

「大丈夫」

「二日酔い、全くない?」


  小首を傾げ、蒼は恵美の腰まで伸びた長い髪に口付けながら心配そうに見つめる。


「言われたらそうだねー?全然二日酔いしなくなっちゃった?」

「そうか。ならば良かった」

「ただお酒に慣れただけかな?」

「まあそのうちわかる。しかしもう酔った恵美は見れなくなるのか…」


  残念そうに吐く蒼の頭を撫でながら恵美は苦笑を浮かべた。


「ごめんね?迷惑かけて…」

「いやー?酔った恵美は可愛かったからもう見れなくなるのは少し残念なだけだ」


  しょんぼりと言う蒼に恵美は頬を引きつらせる。

  そんな恵美を笑いながら見つめると恵美は頬を膨らませ衣装に手を伸ばした。


「おいで」

「起きます」


  ぐいっと腰に回した腕に力を込め倒そうとするが、負けじと恵美はそれに耐え、素早く衣装に触れ、身に纏い、 そこで気が抜けてぱすん…と、恵美がベッドに転がる。


「あ……」


  目を点にした蒼は衣装を身に纏ってしまった恵美を静かに見つめる。


「もう着ちゃったもん」


  勝ち誇った様に言う恵美の黒に近い深い紫の瞳に星が宿る。

  ガクリと顔をベッドに突っ伏し「恵美が冷たい…」と、呟く。

  そんな蒼に恵美はクスクスと肩を寄せ合って笑う。しばらくベッドに突っ伏していた蒼は「そうだ」と言うと弾かれたように顔を上げた。

  そこにはイタズラっ子のような笑みを浮かべ、恵美に口付ける。


「脱がす楽しみがあるな」


  青い瞳を煌めかせ、満面の笑みで言うと蒼は口付けを深める。


「今、宿屋を借りてるんだからちゃんと起きよう?」


  優しく這う右手を掴み、手を繋ぐようにすると首筋へと向かう蒼の口を押さえ、恵美は真っ直ぐに蒼を見た。

  真面目な恵美の眼差しに蒼は小さく嘆息し「わかった」と言うと諦め、身を起こして今日の服に触れた。


「やっぱり朝食も向こうで摂った方が良いかな」


  ベッドでゴロゴロと転がる恵美に蒼は水差しとグラスを取り出し、一つを恵美に差し出す。小さくお礼を言って恵美が受け取ると中に水を注ぐ。


「向こうで食べた方が良いだろうな。あっちの部屋で聖達を待つか」


  冷たくて喉越しが良い水をゆっくり飲みながら恵美は頷く。

  グレーの髪が陽の光に銀色に光る様をグラス越しに見つめ、恵美は小さな吐息を漏らす。

  水差しと飲み干したグラスをサイドテーブルに置き、蒼はハタリとうっとりとした顔の恵美と目が合う。


「どうした?」

「私の旦那様はかっこいいなぁと思って」


  微笑みながら言う恵美に、蒼は破顔し恵美の手からグラスを取ってサイドテーブルに置くと片手を伸ばす。


「君は益々美しくなる」


  恵美の隣に腰掛けると蒼は愛しそうに額に口付け、コツンと額を合わせ見つめ合う。

  濡れた様に潤んだ深い紫とどこまでも澄んだ青空の瞳が交錯すし、焦れた蒼は恵美の形の良い唇を甘く咥える。


「んー?ならばそれは蒼のお陰だよね」


  くすぐったそうに身をよじりながら恵美はささやく。

  唇から離れ、コテンと首を傾げる蒼が愛しい。


「私がいた所ではね、恋をすると女の人は綺麗になるんだって。だから私は蒼に恋してるから少し綺麗になれたのかも」


  深い紫の瞳に星が宿る。

  蒼は頬に朱が注がれるのを感じ僅かに俯くと恵美を抱き締めた。


「好き過ぎるんですが…」


  肩に顎を乗せ深々とした溜め息をこぼす蒼の気持ちも御構い無しに、そんな彼の背中を撫でながら恵美は「あはは」と軽やかに笑った。




  恵美以外の衣装はみんな大して代わり映えのしない物だったが、恵美だけはよく見なくても昨日の服とはあからさまに違った。


「私もこれから同じ服でいいよ?みんな浄化の魔法を使ってるんでしょう?」


  思わず言うと、聖は穏やかな笑みを浮かべながら口を開いた。


「一緒ではないよ?微妙に刺繍やカフスボタンとか細かい場所が変わっていたり、色味が微妙に違ったりしてるけどね」


  聖に言われ恵美は目を見開き、隣に座る蒼の衣装をマジマジと見つめた。


「特に蒼様と煌は分かりにくいんじゃないかな?」


  わからないとうめく恵美に聖は口元を緩める。


「そうか?」


  小首を傾げ、蒼は下のシャツの刺繍の違いやカフス、胸元の飾りなど昨日との違いを述べてくれるが、それは余りにも細かすぎて恵美はぽかーんと呆れて口が開かずにはいられなかった。


「だからね、女官達の為にも恵美は洋服を毎日替えてあげたらいいよ」

「かなりのスケッチの束があったね」


  聖のセリフに煌は思い出したように言った。

  まだ恵美が蒼と結ばれていない時から、かなりの手厚い歓待を受け、やっと仕事が出来ると喜んでいた彼女達を思い出す。

  そして龍族とは違うから余計、彼女達は自分達では着れないからと可愛らしい物やら様々な衣装をこしらえてかなり楽しんでいた。

 

  ムリだわ…あれは。


  もしここで断るようなら、きっとまた彼女達を悲しませる事になるだろう。それだけは申し訳なかった。

  恵美は小さな吐息を漏らすと諦めた。

  そうこうしていると、宿屋の食堂兼酒場のテーブルに四人がそれぞれ注文した物が並び始める。

  恵美は軽食を。三人はかなりしっかりしたメニューを追加で沢山頼んでいたので四人のテーブルだけ賑やかだった。

 

「あのね、蒼」

「うん?」


  綺麗なテーブルマナーを披露する蒼を見ながら恵美はふと疑問に思う。


「なんでお金持ってるの?」

「は?」


  唐突な質問に蒼は面喰らう。


「ほら、神様なのに何でかなーって」

「あぁ。貴貴金属や宝石を両替している」

「じゃあ城の衣装は?」

「人の布と似た様な生成ではあるが、城下町に龍族の街があるんだ。そこで布や宝石も生成されている。良ければ今度連れて行こうか?」

「是非見てみたい!」

 

  二つ返事で答える恵美に蒼は相好を崩した。


「わかった。今度連れて行こう」

「有り難う!ずっと疑問だったから少しスッキリした」


  にこにこと屈託無い笑みを浮かべる恵美を見つめながら蒼は食事を再開し、ちまちまと切り分けては余り食べない恵美に「美味しいから食べてごらん」と食べさすのだった。

眠くて書いたら何度か消していたと言うオチです。

白紙になった時、泣けました(涙)

キャラクター達は既に先の動きしてるので辛かったデス。

文末になりましたが、ブックマーク、評価有り難うございます!

今更ですが、読んで下さり有り難うございます!

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