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月が綺麗ですね。〜ギルド編〜  作者: 藍歌
ギルド編
22/26

22.愛結と海悠

  腐敗した竜と女が全て光の結晶に変わった時、恵美は装飾性の高い長いハルバードと見事な長槍を掲げ祈る様に目を閉じる。

  身体の奥底に巡る魔素が満たされ、高まるのを恵美は感じた。

  瞳の奥、丁度額辺りの奥が熱くなるのがわかった。

  ドクンと何かが脈打つ。

  恵美は両手に握った双槍を交わらせた。


  シャァァァアン


  鈴が鳴るような音と共に淡い白い光が更に濃くなり、視界を覆った。

  全てを癒す暖かいその光は膨らむ様に強くなり、ゆっくりと消えて行く。


「ンン?」


  最初に口を開いたのは翠羅だった。


「あれ??」


  続いて恵美の側に大剣を構えて佇む煌が首を捻る。

  人魚の様な姿の女も、腐敗した竜もそこにはいなかった。代わりに……。


「あぁ。あぁ、まさかこんな…」

「もう一度触れる事が出来るなんて…」


  見た目は五、六歳ぐらいの可愛らしい子供が二人いた。

  二人はわなわな震えながらお互いを見つめ合い、両手を握り合わせ、じっと瞬きもせず見つめ合う。


「二人の記憶を頼りにしたらこんな風に…」


  さすがの恵美も目が点になっていた。


「我々が引き裂かれたのは、確かにこれぐらいの時であった」


  黒にも似た深い青い髪の少年は淡い水色の髪の少女をぎゅっと抱きしめた。


「神に貴方を消されて、もう二度と会えないと…。けど、ドラゴンゾンビとしてでも蘇ってくれて、私がどれほど…」


  嗚咽を漏らしながら少女は呟く。


「蒼、おんし消したのか?」

「私ではない」


  少女の言葉に翠羅が蒼を仰ぎ見ると蒼は被りを振った。


「えーっと…。姿が子供だけど良かった…カナ?いつかまたおっきくなるよね?」


  目を泳がせながら言う恵美に子供の姿をした二人は片膝をついた。


「本当にありがとうございます」

「星の女王に永遠なる忠誠を誓いましょう」


  子供らしくない喋りに態度は違和感以外に無かった。

  恵美としては文句が出るのを覚悟していたが意外にも、むしろ感謝され少し面食らっていた。


「そんな大それた…。星の女王ってもしかしなくても…私?」


  小首を傾げる恵美を二人はゆるゆると顔を上げ、少女は眩しそうに見つめ、少年は不思議そうに首を傾げた。


「魂を司る御方は星の女王以外はおりませんもの」

「もしや、御記憶が?」

「記憶も何も…」


  恵美は何と言えば良いか考えあぐねていた。


「まぁ、恵美はまだ覚醒途中じゃからな。護りは硬い方が良かろう?」


  翠羅の言葉に二人の子供は頷いた。

  それならば、納得出来る…と。


「まぁ二人共、立ち上がって?私の名前は恵美。二人は?」


  膝を折り、二人の手を取り立ち上がると恵美は微笑みを浮かべながら自己紹介を始める。


「名前…ですか」


  二人は互いを見つめ合う。


「二人でレヴィアタンと呼ばれていました」


  少年が困惑した様に答えた。


「ならば恵美様が名前を下されば良いのです。ねぇ」


  少女は瞳をキラキラとさせ、少年の顔が綻ぶ。


「是非に」


  恵美は蒼を振り返った。


「本人が望み恵美が良いならいいんじゃないか」

「どうした?おんし何か拗ねているのか?」


  付き合いが長い翠羅には少しつっけんどんな蒼が拗ねている様に見えた。


「誰が拗ねて…」

「どう見ても拗ねておろう。恵美、こんな面倒な奴放っておけ。いつでも妾の処に来るが良い。友としてでも歓迎ぞ」


  艶然と微笑む翠羅を蒼が睨む。


「それは駄目だ」

「遊びにぐらい良かろうに」

「帰さんだろう」


  ケチと言わんばかりにジトリと見る翠羅を蒼が冷ややかに睨む。


「よくわかったな」

「だからお前は信用ならない」


  悪びれもなくシレッと答えた翠羅を蒼は溜め息混じりで呟く。

  恵美は二人のやり取りに内心胸を撫で下ろした。

  嫌われたかもしれない…そう思っていたから。

  まだ話せば間に合うのかな?

  安堵から恵美の双眸が笑みを刻む様に緩まり、もう一度二人の子供を見つめる。


「名前、付けるの苦手なんだけど…。気に入らなければまた言って?考えるから」


  そう前置きして子供を見つめる。


「可愛らしいあなたの愛が結ばれる事を祝して。愛結あゆ


  恵美は少女の手を取り、手に優しく口付けた。

  この辛い思いを沢山した少女が、幸せになるように祈りながら…。


「蒼と似た属性だね。蒼より遥かに濃く激しい青が見える。…あぁ、海悠かいゆ


  もう一人の少年にも恵美は同じようにし、祝福を与える。

  二人に白い光が点り、吸収されていく。

  淡い水色の髪が銀色を帯び、愛結と名付けられた少女の右耳近くの髪の一房が白く変わり、黒にも似た青い髪の海悠と名付けられた少年の耳近くの髪がメッシュが入るように白く仄かに光る。


「あらまぁー。海悠は見事な黒に近い髪だから私の色が入ると…」


  煌は髪が朱の混じった金なのでまだここまで露骨ではなかった。

  愛結も淡い色だから目立たない。

  しかし、海悠は濃い色だからこそ目立ってしまっていた。


「隠せないかなぁ…」


  恵美が膝を折り、目線を合わせて海悠の白い髪を申し訳なさそうに見つめ、撫でる。


「これは我等の誇り。どうぞお気遣いなく」

「恵美様との繋がりでもありますから」


  二人は嬉しそうに微笑み、顔を見合わせた。

  複雑な気分だが、恵美はそっかぁ…と呟くと立ち上がった。


「では戻るか?」


  翠羅が声をかけると恵美は口元に笑みを深く刻んだ。


「そうだね。愛結と海悠はどうする?放って行くのも心配だし…」

「恵美様がよろしければご一緒してもいいですか?」


  愛結が言い、海悠が頷く。

  しばし目を瞬かせ、恵美は蒼を窺い見る。


「部屋は沢山あるから問題なかろう」

「そう言えば恵美様は龍神を伴侶に選ばれたのですね」


  にっこりと愛結は微笑み、海悠は感情の読めない無表情で蒼を見る。

  何となく、言外に海悠の目がなぜこいつ?と、言っている気がした蒼はムッとなり海悠を静かに見つめる。


「いや、私が選んだとかではないと言うか?」

「は?無理やりですか⁈」


  言うが早いか、愛結の気配が一気に変わる。

  可愛らしい顔が一気に険しくなり、淡い髪がブワリと宙を舞った。


「ちがうちがうちがう。相思相愛。たまたま?偶然?いや、ちがうな。とにかく、私、ちゃんと好きだから」


  焦った恵美が言い募ると愛結は「本当ですか?」と、念を押し壊れた様に恵美が何度も首を振るのを見てやっと信用した愛結は愛らしい子供の姿に戻った。


「ならば良いのです」

「蒼司、おんし大変だの…」


  翠羅は同情する様にムッとする蒼を見上げた。


「とにかく、戻りませんか?」


  今まで黙って静観していた聖は帰還を促した。

もうすぐ終わるー。


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