20.レヴィアタン
翠羅が結界を展開しつつ、魔法で攻撃をしていると煌が聖を連れて現れた。
「おや?蒼は?」
黒く光る双眸を丸くし、翠羅は聞く。
「恵美に残れって話してるトコ」
煌が遠い目で話すと翠羅は肩を竦め、結界で竜の攻撃を中和させる。
「それは長そうじゃな」
翠羅のセリフに二人は苦笑を浮かべた。
「聖、シードラゴンはレヴィアタンだったぞ」
「…凄い間違いですね」
呆れた聖は波状攻撃を繰り出す竜を見やる。
シードラゴンと大罪を冠するレヴィアタンでは大違いにも程があった。
「魔法のみですか」
「うむ」
「わかりました」
いつの間にか杖を取り出した聖は杖を前に突き出す。
遠雷と共に無数の雷と風の刃が竜を襲う。
竜が大きく被りを振って咆哮を上げる。
本来ならば人には聞こえない周波数の音も人ならざる者たる翠羅達には十分捉える事が出来た。それが仇となり脳裏に不快音が響く。
「白玲がおればこの辺りは無効化されるのだがなぁ」
羽ばたきと共に竜巻と大津波が発生する。
真下の海が翠羅達を襲うが結界にて阻まれる。
「いつまでも完全防御は無理だからなぁ」
何事にも限度がある。しかも自分達と同格相手になると限界は早い。
せめて水系無効には早くなって欲しかった。
「完全物理無効でしたっけ?」
「どこか弱点あったかのぉ」
消耗戦に突入し、ひたすら相手の体力を削っていく地味な戦いに聖と翠羅は呟いた。
「頭の人は?」
煌の発言に翠羅と聖は顔を見合わせる。
「やってみるか!」
「試してみましょう!」
二人は頷き合い嬉々として言うとそれぞれ得物を握り直した。
「隙を作ります。煌は最大火力であの女性を狙って」
「援護は任せよ」
「わかりました。行きます」
身に余る大剣を手に、深く腰を落として構えた煌は深呼吸する。
全身に魔素が流れ、満ちるのを感じながら瞬く。
聖も得意の魔法を展開する。
光の精霊が集まり、上空に巨大な魔方陣が描かれ、竜の四方を雷を纏った光の柱が立つ。
「えらい魔法展開したな…」
ボソリと翠羅は聖を見やる。
聖は次々と魔法展開を施していく。
竜は水を操り、自分を縛る四方の柱を崩しにかかり、同時に咆哮をあげ、その口内に禍々しい黒い炎の塊を生み出す。
聖の仕掛けた魔法が炸裂する。
四方に展開された柱は檻と化し、天空の魔方陣から眩い金色の閃光が迸る。
同時に竜は口内の黒い炎を吐き出し、煌は高く飛び上がり、翠羅がすかさず結界を強化した。
熱風と怨嗟の悲鳴が翠羅と聖を襲う。
聖が浄化の雨を降らせ鎮魂を行い、翠羅は結界をもう一段階強化する。
竜は無数の光の矢に完全に縫い止められ、動きを封じられた。
そこへ真っ直ぐ煌がてっぺんにいる半身人の形をした者に剣を突き下ろす。
ギァァァァァァァァッ!
女の悲鳴が辺りに響き渡る。
竜は地の底に響き渡るような唸り声と共に体を縫い止める光の矢を弾き飛ばす。
竜の目から凍てつく波動が迸り、翠羅の展開した結界が吹き飛ばされ、翠羅と聖も後方へと弾き飛ばされ、聖は海に落ちかけて寸での所で浮遊した。
竜の表面が再びドロドロと腐り始め、竜は唸り続けている。
構えた大剣で全ての衝撃を受け流した煌は翠羅達の元へ大きく後退し、聖に手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?」
「まさか結界を無効化されるとは…」
「ありがとう。まぁ、大丈夫かな」
大きく息を吐き、聖は竜を見据える。
「なんかヤバくない?」
頬を引き攣らせながら煌は竜を見る。
「あれじゃ。多分、逆鱗に触れたんじゃろ」
遠い目で見つめながら翠羅は呟く。
「まぁ向こうも本気のようだしの。形態が変われば妾もわからん。頑張るかの…」
「形態が変わるとはどういう事だ?」
やっと追いついた蒼達は翠羅のそばに立つと静かに聞いた。
「結局、恵美も来たのか」
肩を竦める翠羅に恵美は苦笑を浮かべた。
「さっきまでは、確かにレヴィアタンだったんじゃがな?同化してる竜女を攻撃したらゾンビ化し始めたのじゃ。な、聖」
「はい」
「…あ」
「しかし蒼、おんし少し顔色が優れぬのではないか?」
「…いや、私は大丈夫だ」
「しかしあれは何だったのだろうな、妾の結界さえ消された」
「攻撃も止みましたしね」
「形態が変わったしのぉ。よぉわからん」
被りを振りながら言う翠羅を脇に、蒼は前方の腐り落ちている竜の方へ目をやり、硬直した。
「恵美が…」
煌は茫然と立ち尽くし、呟く。
翠羅と聖が何事かと目線をやり、やはり硬直した。
双槍を握り締めた恵美は一人、腐り行く竜の側へと向かっていた。
読んで下さりありがとうございます。
続きが遅くなったらすみません。
しかし、少しはいちゃつけよ!…と、思ってしまいました マル!




