登録
さて、服を買って、お姉さんと冒険者ギルドの前にたどり着きました。
「・・・・・おっきいですね」
「うん、まぁ、依頼を受けることや図書館以外にも役割は大量にあるからね。
冒険者としての買い物はここだけで最低限はすむくらいだよ。いわゆるなんでも市場。って感じだね」
なんでも市場、そう考えれば、狭い、のかもしれません。
大きさは、・・・・・ほかのお店の数倍程度でしょうか?
「とにかく、入ろっか」
「はい!」
お店の扉も大きいです。
私の‥‥‥二倍くらいはありそうですが、お姉さんは軽々と押してはいります。
……もしかしたら、軽いのでしょうかと、少しだけ受け止めてみますが、だめです。
私の体が、ただ扉が戻る力だけで、押し返されてしまいそうで、慌てて潜り込みます。
一体この扉はどれほどの重さなんでしょうか。
いえ、それよりも、お姉さんは、どのくらいの力なのか。
そう思いながら、顔を上げると、中はキラキラしていました!
食べ物のいい匂い。
売り込みを続ける商人さん
行きかう人の話し声。
「ここが、ギルド……」
「ふふ、そう。ここが、メガロの冒険者ギルドだよ・・・・・。買い物はあとにして、とりあえず、受付に行こうか?」
みんなとても楽しそうです。
「は、はい!」
きっと、きょろきょろしていたのを見られていたのでしょう。
少し、恥ずかしいです。
お姉さんに手を引かれて、受付につきました。
「あら、いらっしゃい。エヴァさん。その子は?」
受付のお姉さんは、燃えるような赤髪の、眼付きの悪い女性でした。
しかし、それを差し引いても美人です。
「うん、イザベルさん。ちょっと、弟子を取ろうと思ってね。この子。キャロっていうんだ」
「は、はい!キャロです!よろしくお願いします」
私は、少し怖くて、エヴァさんの後ろに隠れます。
お姉さんとイザベルさんは、少し苦笑いをしている。
「あぁ、ついにですか?いやぁ、皆さん冒険者になったら、3年で取るのにこの人、6年も取らなかったんですよ?」
「や、やっぱり遅いんですか?」
「えぇ、ずっと師匠についている人ならともかく、独立してる人は、大体やるわ。
ギルドからも、支援者に対しては、それなりのお金ももらえるからね。それこそ、一人で暮らす分には困らないくらいにね」
少し驚きます。
そんなにもらえるなんて、思いませんでしたから。
「まぁ、この辺りの守り、としての役割も冒険者にはありますから。後進を育てるのは大事なんです。
それこそ、高いお金を払っても。だから、其れ専門に育てたりする人も多いですよ」
「まぁ、お金の話なんて子供の前でしないの。……それより。この子の登録お願いするよ。私のほうもいろいろしなきゃいけないんだろう?」
「えぇ。じゃあ、こっちに来てください。キャロちゃん」
「は、はい」
エヴァお姉さんの後ろから出てきて、なんとか、イザベルさんのほうについて行きます。
後ろを振り返ると、お姉さんは微笑みながら手を振っていました。
部屋に入ると、イザベルさんと二人きりです。
「さて、この紙にいろいろ記入してもらえるかしら?」
「はい!・・・・・あ、でも、私、字が・・・・・・・」
「あら、そうなの?じゃあ、口頭でお願いできるかしら。名前と年齢は?」
「キャロです。今年、15歳になりました」
「はい、15歳……15歳?!」
やっぱり驚かれました。
「・・・・・やっぱり、相当小さいですよね」
「ま、まぁ、冒険者は身長関係なくなれるから。それにしても、15歳ね……」
「?ほんとですよ」
年齢が疑わしいのでしょうか、くすくすと、笑っています。
「えぇ、そうね。まぁ、気にしないで、年齢制限もないですもの。では、生まれは?」
「ソの村です」
「あそこ?あそこって、たしか‥‥‥いえ。まぁかまわないわ。あとは、貴方は、何になりたい?」
何に‥‥‥。
「別に今は具体的じゃなくていいわ」
「いえ、決めています。私は……」
「お姉さん!もどりました!」
「お疲れ様。どうだった?」
「はい!しっかり終わりました。……それで。」
「ん、軽くお昼ご飯を食べてから、図書館だね」
次は文字と、魔法の勉強です。
「そういえば、……金属の鎧って人気がないんですか?」
行きかう冒険者の人をみると、なんだか、ずいぶん軽装な人が多いです。
「ん。あぁ、金属って、武器以外だと使いにくいんだ。魔力を通しにくいから、ね」
「魔力を通しにくい・・・・・ですか?」
「うん。 冒険者の装備って、基本的に魔力を通して戦うことが多いんだ。
魔法使いなら杖を通して魔力を変換して攻撃魔法に変えるし、戦士なら、武器に魔力を通して、切れ味を。
・・・・・だけど、金属の防御力を持たせたまま魔力を通しやすくするのは、重い上に、作るのに技術がいるしお金がいるからね。
だから、あんまり、主流じゃないんだ。もっとも、逆にいえば、お金があって、力があって、技術を持った職人とコネがあるなら、作ることもあるけれど。
このあたりじゃ、基本は使わないね」
「そ、そうなんですか?えっと、じゃあ、武器ではつかわれる理由はなんですか?」
「それは簡単。武器は、鎧に比べて、考慮すべきことがすくないからね。まぁ、私が使ってる銃とかは、やっぱり高くなるんだけれど」
「だから、銃は用意しにくいって言ってたんですか?」
「そういうこと。ほら、ああ、勉強始めようか」
目の前には大きな書庫。
……私の前に置かれた、大量の本に、すごく、圧力を、感じるのでした