消耗
「おかえり。初戦闘はうまくいったみたいだね」
首を持って帰ると、お姉さんはことことと、シチューを煮込んでいました。
おいしそうなにおいが辺りに充満して、その周りには、捩じ切られたような敵の数々。
「りょ、料理しながら相手したんですか?」
「ん、まぁこのくらいなら、ソリッドストライクだけで倒せるからね。よし、完成。ほら」
あたりに転がっているのは、どれもソルジャーに似た形をしていますが、其れよりも二回りほど大きな姿をしています。それに、装備も、人間が使うものに近い……。金属製の鎧なんかをつけています。
「モンスターナイト、ですわ。この辺りに出る魔物の中では強い……ですわ」
「あぁ。ちょっと、ほら、二人が帰ってくる間に資金調達の足しにでもとね?」
そう言っている間に魔物の姿が消えました。
「……どうして消えたんですか?」
「キャロお姉様は魔物の生態もしらないのですか?」
「アリス。私が教えてなかっただけだよ。……魔物は、一定の種族以外は、死体を残さないんだ。元々、魔力が大本になって生まれた種族だからね。それで、今キャロがしてるみたいに首とか一部分だけは切り取って残すことができる。でも、そのままだと、長持ちしないからね、魔力を少し流し込んで?武器に対してやる要領で」
「は、はい!」
慌てて、魔力を、首に流し込みます。
すると、首は形を変えて、黒色の宝石にと姿を変えました。
「え、えっとこれは」
「魔物を倒した証みたいなものかな?基本的に武器の材料になったりするのがその姿。それを溶かして、鉱石とかと組み合わせて武器になるんだよ。たぶん。いまキャロが使ってるナイフも、ソルジャー数体分を織り込んでるはずだよ」
「ま、魔物って武器になるんですか!?」
「なるよ。私の銃も、一応魔物素材からだしね」
……たしかに、普段武器を出していませんでしたから、じっくり見る機会がありませんでしたが、よく見ると、銃の各所にうろこのようなもの。
「金属だけじゃなくて、生物の素材……?意味があるんですか?」
「うん、魔物は、素材のほうが、普通は魔力をよく通すからね。少しの魔力で、他のモノ以上の力をだせるし。それに、強化率も高い」
……たしかに、さっきの魔物たちも、体を捩じ切られていました。
まさか、お姉さんが、握って引きちぎったとかではないでしょうから、魔力に加えて、武器の力、なのでしょう。
もちろん、お姉さんの技量を前提として。
「あぁ、お姉さまの戦いも見たかったですわ」
「ん、それはもう少しあとでね?ほら、ご飯。よそってあげるからうつわ出して?」
「「はーい!」」
寒い外での食事ですがお姉さんの暖かいシチューは、冷めた体を温めてくれます。
「はぁ・・・・あったまりますわぁ」
「とっても、おいしいです……!」
スプーンを動かす手が止まりません。
アツアツなのに、フーフーするのも忘れて口の中に入れます。
「さて、正直、二人の判断を見ようと思ってたけどちゃんと一体で帰ってきてくれてよかった」
「といいますと?」
「魔力の問題だよ。ほら、自分で探ってごらん?」
「魔力……な、なんですの!?」
?どうしたのだろう?と思い、自分の体の中で、ライトニングを使うときに刺激されてる部分を、なんとなくで、感じてみる。ぽっかりと、穴が、開いたような・・・・・。
「キャロは、多分すこーし、動きが鈍ったくらいかな?アリスは魔力が少ないから、空っぽに近いんじゃない?」
「……正解です。何でですの!?普段魔力を使う際にはそこまで」
「はい、こんなに、その、減ったって実感は、ありませんでした」
ほぼ丸一日、ライトニングの練習をしたときでさえ、こんなに減らなかった。
「魔法で魔力を使うのって実はね?発揮するときと当たった時の二回のタイミングがあるのさ」
「えっと、なんで、ですか?出したら、出しただけじゃないんですか?」
「さっき、魔物の素材は魔力を強化しやすいっていったじゃない?あれって、魔物は、魔力を吸収するんだ、それで、魔法は、発動している間は、主人と見えない線でつながってる。だから、こと、魔物との戦闘では、魔力は、どんどん減る。まぁ、回復には少し休めばいいんだけれど」
だから、魔物への攻撃。
遠距離で弓を撃っただけのアリスちゃんの魔力もごっそり減っていた。
ということですか。
「ほら。はやく、ご飯食べちゃいな。食べたら少し休憩して、今日はもう一体倒したら、終わりだね。油断せずに、一体だけ。ね?」
「「わかりました!」」