魔王と少年。
木漏れ日が差し込み一面に広がるタンポポに反射する。
そのタンポポの周囲には妖精達が飛び交う。
俺が住む森は妖精や精霊たちが沢山住んでいる。
俺達は人間とは関わらずひっそりココで暮らす事を選んだ。
これも一つの共存の形だと思う。
そんないつもと変わらない昼下がりに俺達は出会った。
小さな影がよろけながら花畑の方へやってきた。
何処かから動物でもやって来たんだろう。
俺はそんな気持ちでその影に近づいた。
ところが予想を反してそこに居たのは俺の膝丈にも及ばない小さな少年だった。
見ているのが辛くなるくらいふらついた足取りにココまでどんな苦労をして来たのか想像もつかない。
ここは大人でも人里から歩いて1日2日で来れるような距離ではない。
それをこんな子供が一人で来たって言うのか?
見ていられなかったのか精霊の一人が水を差し出す。
子供はそれを嬉しそうに受け取ると大事そうに両手で受け取って飲み始めた。
途端に元気になる。
そりゃあそうか、精霊が差し出した水は体の疲れを癒すもの。
水の精霊である彼女だけがだけが取り扱える霊水だ。
「どうしてここに来た?」
一瞬首を傾げた後少年は満天の笑顔で笑う。
「ぼくレナス!」
元気いっぱいに答える少年。
だが、会話が成立していない。
米神を押さえる俺にマルナは俺の肩を叩いた。
「レナスお父さんとお母さんはどこに居るの?」
優しく問いかけるマルナにレナスは俯いてしまった。
今にも泣き出しそうに肩が震えている。
「……いない……」
俺とマルナは思わず顔を合わせる。
森の入り口まで送り届けてやる事も出来るがどうしたもんか……
「だったらここに居るか?」
自分の口から滑り出した言葉が信じられなかった。
だが俺の言葉にレナスはパッと顔をあげると笑顔で頷いた。
「良いの?」
マルナの言葉に俺は頷いた。
人間とは関わらない……それが俺達のルールだった。
一瞬だけ不安そうな顔を浮かべたマルナだが笑うレナスの顔を見て彼女も笑顔になった。
レナスはこの森に笑顔を運んできたんだ。
この森にも何冊か本がある。
道に迷った人間が置いていった物で多くはレナスに読み聞かせられるような内容ではなかった。
ただし一冊だけ絵本がある。
緑色の服をきた少年が妖精をつれ飛び回る……子供向けの話だ。
俺はレナスを膝の上に乗せ読んでやる。
クリクリっとしたレナスの目が物語りの展開合わせて震えたり輝いたりする。
俺はその様子を少し笑いを堪えながら見ていた。
子供を育てた事など一度も無いが父になるとはこういう気持ちなのだろうか?
「レナスは本が気に入ったのね」
マルナが屈みレナスと視線を合わせながら笑う。
するとレナスも嬉しそうに大きく頷いた。
「うんっ!」
そんなレナスにマルナは目を細めながら頭を撫でてやる。
「でも今日は本はそれ位にしてご飯を食べましょうね」
なんか親子みたいだな……
俺がポツリと洩らすとマルナは不思議そうな顔で俺をみる。
「ウォズとレナスだって十分親子ですよ」
俺はそうかと短く返した。
少しだけ頬が緩んだようがするのはきっと気のせいだ。
「さぁウォズもご飯にしましょう」
木の実や野菜が机の上に並ぶ。
俺がレナスを拾ってから彼女は俺の住処に通うようになった。
家族のようだと思う。
精霊に魔物に人間、全員種族も違うけれどこういう家族が認められても良いんじゃないだろうか?
いや、良いよな。
この幸せが永遠に続けば良いと、ただ願うばかりだ。




