他にもっとあっただろう-4
「まあ、近いうちにそのあたりは詳しく検証させてもらうと思う。だからあんまり考えないようにしなさい」
ミケは俺の顔色を察したのか、慰めるように微笑んだ。
「もう一つは?」
「なぜ俺が賢皇の子孫だと?」
「賢皇『さま』」
「…賢皇さまの子孫だとわかった?」
ふう、と一息ついて、俺の目を見つめる。
「ちなみに言っておくと、坂上君にはその『可能性』があるかもしれないっていうこと。確定ではないのよね」
なに?そうだったのか?
「そんな状態で俺は命を狙われたのか…」
「どんな小さな可能性だとしても、潰さないといけない、頼らないといけないというほどまでに今、魔社会は切羽詰まった状況なの」
その話にも幾分か興味をそそられたが、恐らく今まで以上に長い話になるんだろうと察し、今気になることだけをつづけた。
「それに、子孫というなら俺の親はどうなる?」
「親?」
なぜかミケはそこで言葉に詰まった。
「あ、なるほどね、そうよね。子孫といっても、血のつながりがある関係ではないの。魔力を受け継ぐという事象は単なる血統で説明できるものではないのね」
ふむ…
「父母のどちらかが魔法を使えれば、その子供が使える可能性は90パーセント以上。ただ、それは本物の血統ね。私たちの今探している人物は、賢皇さまの魔力を受け継いだ存在、それこそが魔法使いの子孫と呼ばれているの」
「子孫になるのか?それは」
「まあちょっと変な言い方かもね。でも魔社会ではそれで通っちゃってるのよ。生まれ変わりとはまた違うという認識だし」
何か納得のいかない言い回しだが、言葉通り血統の意味での子孫というならば、俺の親もその血筋を継いでいるということであり、俺にとってはその方が信じられない話なので、無理やり脳の中に詰め込むことにした
「で、コロちゃんの家系は魔社会でも名門でね。ちょっと特殊な眼を持つお家なの」
「特殊な眼?」
「うん、人を見てどんな魔法を使えるのかがわかるのよ。そんなことどんな魔法使いにもできないんだけどね」
手で円を作りそこから俺の方を覗く。その仕草がとても可愛らしい。
「あまり詳しくはわからないけど、その魔法使いが火を操るのなら赤色の魔力をまとっていて、水なら青色という風に魔法使いの得意魔術について色で識別できるらしいわ」
「ふん…それで俺が特別な存在だとわかり、話しかけてきたってわけか」
「うん、でもそれだけじゃ本当に賢皇さまの魔力かどうかわからない」
「だから可能性…」
そこで俺は賢皇の話を思い出す。
「だが賢皇さまが全ての属性を使えるという魔力を持っていて、血筋が関係ないというなら、どんな色をしていたとしても子孫の可能性はあるということだろう」
「凄いなー、坂上君、本当にその可能性高いかもね」
俺は右側の口角を再度、これでもかというくらい上げる。
「坂上君の言った通りね、でも魔社会にはいくつか有名な予言書があって、そのどれもが子孫についてはこう言及しているの。『その存在があるとするならば、誰もがわかるもので在り得るだろう」と」
「つまり普通の人間とは違うというわけか…ククク…」
笑いが止まらない、それではほぼ確実に俺がその存在、救世主と呼べるものなのだろう。
「そして今その候補は君で五人目よ」
「えっ」
そうなの?
「追々君も出会うことがあるかもね」
まあいい、ライバルというやつも、いないと面白くないからな。
「じゃあ最後に一つ、俺は何色の魔力を身に着けていたんだ?」
「ええと…なんて言ってたっけな…」
紫がいい、黒や白でもいいな、いや、虹色?ベターに金か銀というところか…
「タマムシイロ」
「え?」
「タマムシイロだって」
「タマムシ?」
「ほら、あの骨とう品の表現とかで使われる色よ、私もあんまり想像つかないけど、凄そうじゃない」
「あ、ああ、玉虫色ね…」
他にもっとあっただろう…