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転校初日ー2

「君はもしかしたら、朱亀家にまだ力があると勘違いし、取り入ろうとしているのかもしれないが無駄なことだ。今現在、この日本で魔社会の頂点にあるのは万寿寺家なのだよ、君もそれをわかっての態度だと思っていたのだがね…」


俺はそれが事実なのか、周りの反応を見てみたが、生徒はなんとも言えない顔をどこかしらに背けている。転校生がタメ口で話しかけただけで、あんな反応をとる人間たちが今現状を見て見ぬふりということは、マンジュウの言っていることは事実なのだろう。



「そうなんだ」


俺の言葉にマンジュウとマヌケだけでなく、前の席にいるコロまでがピクリと体を動かした。



「ありがたいけど饅頭業界に就職する気はないんで、大丈夫、気にしないでいいよ」


そう言って俺は登校中に買ってきていた読みかけのジャンプに手を伸ばす。もはやマンジュウの顔は本物の饅頭のように膨れ上がっていた。


「そうかい…じゃあともに泥船にのるがいいさ…」


マンジュウとマヌケはそのままコロの席に立ち止まった。


「で、朱亀さん、今はどうなってるんだい」


コロも本を読みふけっているまま、マンジュウの話を無視しているようだった。


「いったいいつになったら、オーモン様の子孫は見つけられるんです?」


なるほど…俺の存在がないせいで、こいつが調子に乗っていられるのか…


「君の親の代から命じられている指令が一向に進む気配がない、もしそれさえ達成できれば、もう少し張り合いが出てくるんですがね」


コロに反応する様子はなかった。


「もう他の国では可能性を見つけているんでしょう?この国だけですよ、最後に残ってしまったのは」


賢皇候補は俺以外に数名いると聞いた。

ミケの説明によると、予言書に書かれている子孫の生まれはアメリカ、イギリス、中国、エジプト、そして日本が挙げられているとのことだった。

そしてこの日本の俺が見つかったことによって、候補が出そろったという。

といっても日本に生まれると書かれた予言書はほかに比べると曖昧な部分が多く、あまり信じられてはいなかったらしい


「もたもたしていると約束の日がやってきますよ…まあ、僕もこの国で見つかるとは思っていませんけどねえ」


とマンジュウが笑い、マヌケも乗っかるように大声で笑い始めた。それでもコロは何も言わずに、何かの本から目を離さない


「そんなことでは先代の朱亀様に顔向けできませんよ」


そこでコロは初めて、マンジュウの顔を見た。


「こんなに何もしない朱亀様を見たのは初めてだとお父上もおっしゃっていました…もう少しがんばらないといけませんよねえ」



コロが俺を見つけた時の表情は、今の無感情な彼女からは想像できないほどに嬉しそうだった。

きっと、長い間探し続けていたのだろう、マンジュウや、それに似たような奴らの叱責に耐えながら、俺のことを探してくれていたのだろう


「おい」


「はい?」


そこで俺はつい口出ししてしまった


「マンジュウさんよ、そいつの存在が出てくれば、お前のその口も少しはふさがるのかい」


「なんだと?」


「ダメ…」


コロが俺のほうを向く、これからいうセリフになんとなく気が付いたのだろう。


「もしコロが可能性を見つけていてそれでも何も言っていないのだとしたら、って言ってんだよ」


それでもマンジュウは俺の言おうとしていることに気が付かないようだった。

クラスの人間がこちらを向いているのを感じる。


「俺がそうだって言ってんだよ」


「な…」


マンジュウが俺とコロの顔を相互に見る。クラス中がざわめいているのがわかる。俺もまさか転校初日でばらすことになるとは…思わなかったな…フン…


「そ、そうなんですか?」


今までの上から目線を覆すかのように、マンジュウの顔つきと声色が変わった。反比例するようにコロの顔つきも険しくなっている。

ふん…と鼻を鳴らしマンジュウの顔の前にせりたつ


「だからもう黙っておけ、俺の機嫌を損ねるな」


完全に立場が逆転し、席に座ろうかと思ったその時だった。


「なら、その証拠を見せてくれませんか?」


口調は緩やかになったが、目の色はまだ俺のことを疑っている。

反射的に、


「いいだろう」


と答えたのはいいが、ただ、そのとき俺の脳裏にあることがよぎった。

証拠…?


「それでは、あなたはどのようなことができるのです?」


どんなことができるか…


「オーモン様は、ベーシック魔術のすべてを自在に操ることができたといわれています。

あなたも?」


…嫌なことを思い出してしまった…


「…いや、そういうのではない…」


再びマンジュウの顔色に灯がともる


「では、何ができるというので?」


「俺の魔法はそういうのではない…」


「見せてくれませんか?」


「見せる…」


「ええ、失礼ですが、あなた様がその可能性を持つものだというなら、見せていただきたい、その証となるような力を」




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