第8話
「ニホン空軍の脅威について、我々は戦闘機と無人機戦力、早期警戒機・早期警戒管制機について詳しく報告を上げようと考えています」
「……また無人兵器、ね」
無人機戦力と聞いて、リーリアはそう呟いた。どうにもリーリアには、日本が無人兵器の運用を重要視しているように見えて仕方がなかった。
そして、それは事実である。日本において人的資源は最も貴重な資源のひとつだ。そのため、人的資源の消耗を可能な限り防ぎ、より少ない人的資源で強力な戦力を維持するために試行錯誤を続けている。
無人戦闘車両やセントリーガンの配備、護衛艦の省力化、多数の無人機の配備など、様々な点で努力は見られる。
日本政府や自衛隊上層部の理想は、日本人が死なない戦争によって日本を守ることだ。そのための努力は今も続けられている。それが兵器の高性能化、省力化、無人化なのだ。
「まず、ニホン軍の戦闘機です。この中にはニホン海軍の戦闘機も含みます」
自衛隊の戦闘機はバルツェル共和国軍にとってのトラウマだ。空軍にとってはもちろんのこと、陸軍や海軍も自衛隊の戦闘機によって再起不能なクラスの打撃を受けたのだから、トラウマになるのも仕方のないことだ。
「最初に紹介しますのは、このF-15J『イーグル』戦闘機です」
渡された資料に目を通すと、その名の通り、鷹のような力強さを見せつける戦闘機が目に映った。
「このF-15J戦闘機は、先の大戦において我が軍の航空戦力を撃滅し、航空爆撃によって前線のみならず、後方の兵坦線にまで壊滅的な打撃を与えた機体です。我が軍の中では、安直ながらも『悪魔』の異名をつけて恐れられています」
「実際、悪魔的な戦闘力を見せつけてきたのだから、安直だろうと的を射ているだろうさ」
兵士達がつけた渾名にクーホルン少佐はそんな感想を述べた。
「この機体はニホン軍の中では最も旧式の戦闘機とされていますが、度重なる近代化改修によって未だに一線級の戦闘能力を備えているとニホンでは評価されているそうです。実際、純粋な武装量は頭ひとつ抜けており、最大で12発から16発程度の空対空ミサイルを搭載することも可能だそうです。爆装重量で言えば、我が軍では未だ現役のレシプロ爆撃機に匹敵します」
「……戦闘機が爆撃機並みの爆装重量を誇る、か」
何の冗談だ、と言いたくなる話だった。レシプロ機とジェット機という違いは確かにあるが、だからと言ってここまで違うと言葉も出なくなりそうだ。
そして、これが最も旧式の機体だというのだから恐ろしい。
「さらにF-15J戦闘機は高度なレーダーシステムを備え、百数十km先の敵機も探知し、敵のミサイル攻撃に対しても一定の対抗手段を備えています。また、エンジンも極めて強力で、卓越した飛行性能を誇り、逸話の類いにはなりますが、片翼がもげた状態でも飛行して緊急着陸に成功したという話もあります」
片翼がもげても飛行した話はJ型ではないものの、同じF-15系列の逸話だ。F-15戦闘機の飛行性能を示す話として、しばしば取り上げられる話である。
「我が国では未だに空対空ミサイルは開発段階であり、レーダーを搭載した戦闘機も同様です。F-15J戦闘機を強力なエンジン、レーダーを含む高度な電子装備、多数の空対空ミサイルの搭載といった点だけで見ても、我が軍のクリーガー戦闘機では対抗することは不可能でしょう」
近代化改修されたF-15J戦闘機は、第4.5世代ジェット戦闘機に相当する。たかだか第1世代ジェット戦闘機程度のクリーガータイプの戦闘機では、到底歯が立たないのは明白であった。
「このようにF-15J戦闘機は極めて優れた戦闘機でありますが、ニホン空軍では性能が陳腐化していると見なされており、また飛行寿命も迫っていることから今後、順次退役していく予定です」
「……先の大戦で大々的に使われたのは最後の奉公、というわけか」
「あるいは、仮に失われても痛手とならない機体だった、とも言えますが」
それが本当であれば、日本はバルツェル共和国との戦争になる前から、精密なバルツェル共和国軍の戦力評価を行っていたことになる。でなければ、旧式の戦闘機で事を済まそうなどと考えないはずだ。
つまり、戦前から技術力以外のところでも差はつけられていたのだ。そこに気づいたのはクーホルン少佐だけではない。話を聞いているだけだったリーリアでも気づけたことだ。
バルツェル共和国軍が慢心している間に、日本はどれだけ準備と情報収集を進めていたのかが、こういったところにも垣間見えていた。
「また、F-15J戦闘機よりも新しいですが、同じく近々退役となるのが次のF-2戦闘機です」
次のページには、青色の海上迷彩が施された戦闘機の写真が大きく掲載されていた。
「この機体も先の大戦において、F-15J戦闘機と共に活躍したニホン空軍の戦闘機です。我が軍では、エアインテイクの形状から『鮫の口』と呼ばれ、恐れられています」
どうやらバルツェル共和国軍の将兵は、エアインテイクの形状と位置、そして機体の色合いから鮫を連想したようだ。そんな名前をつけて恐れていたらしい。
「このF-2戦闘機は空対空戦闘能力に優れるだけでなく、対艦攻撃能力にも秀でています。この機体は戦闘機でありながら、空対艦ミサイルを4発搭載した上での長大な戦闘行動半径を誇る、ニホンの独特の国防環境から生まれた特異な機体です。低空での飛行性能に秀でており、レーダー索敵を避けるために敵艦隊に低空飛行にて接近し、その対艦ミサイルを発射することを目的に開発されていると言っても過言ではない機体特性となっています」
F-2戦闘機の対艦ミサイル4発搭載は、前世界でも戦闘機としては特殊だった。その上での戦闘行動半径は同時代の他機種と比べても優秀と言えた。後の改修で高度な対空戦闘能力も付与され、優秀なマルチロールファイターとして日本の空を30年にも渡って守り続けている。
「先ほど紹介しましたニホン海軍の哨戒機も対艦ミサイルを多数装備しての対艦攻撃が脅威でしたが、こちらもやはり数機で艦隊が壊滅しかねない脅威となります。むしろ、こちらは行動半径で哨戒機で劣る一方で、自衛能力や運動性能において大きく哨戒機を上回るので、相手にするにはより厄介な機体であると言えます」
「純粋な戦闘機としての能力も高く、対艦攻撃機としての能力も極めて優れている。……海洋国家の国防に関して言えば、これほど向いている機体もなかなか無いな」
「逆に言えば、海洋国家でなければこのような機体をわざわざ開発する意義も無いと言えますが、それにしても高度な技術力が見られる航空機ではあります」
F-2戦闘機はF-16戦闘機を原型機としているが、ほとんど全てを設計し直している。機体形状において同じ部分が垂直尾翼しかないとすら言われているほどだ。F-2戦闘機において取り入れられた複数の新技術を、F-16戦闘機の後発改良型にフィードバックした部分もあるともされている。F-2戦闘機はF-16戦闘機の日本版焼き直しと言われることもあるが、実態はほとんど別物なのである。
「再度申し上げますが、これらはニホン軍において退役予定の旧式機であります。次に紹介する機体から、ニホン軍の主力機であると言えます」
先の大戦においてバルツェル共和国軍を圧倒したこの2機種の戦闘機が旧式機。これはバルツェル共和国軍上層部にとって、極めて屈辱的な事実だろう。旧式機を主力として大戦に挑んでいたということは、日本側はバルツェル共和国側の戦力の見積りを全力出動するほどではないと考え、そして実際に圧倒せしめた、ということなのだから。
日本側の実情としては、別にそこまでバルツェル共和国のことを軽く見ていたわけではないが、だからと言って本気での戦争ではなかった。日本経済に深刻な影響を出さないように配慮した範囲で自衛隊が努力した戦争だった、というだけだ。
日本とて余裕綽々で戦っていたつもりはない。それが何の慰めにもならないのは明らかだが。
それはともかく、軍事部門室長が自衛隊の主力機について紹介を行う。
「ニホン軍の現行主力機は、F-35A/B/C『ライトニングⅡ』戦闘機と、F-3A/B戦闘機と呼ばれています。いずれもレーダーに映りにくい特性を持つことから、ニホンではステルス戦闘機と称されています。これらは先の大戦において少数が投入され、我が軍ではこれらがレーダーに反応しない正体不明の敵機であったことから、『不可視』や『魔術師』と呼ばれ、恐れられていました」
2034年現在の自衛隊において、数的主力となっていたのはステルス戦闘機であった。今残っているF-15J戦闘機やF-2戦闘機も、そう遠くない内にF-3A戦闘機に置き換えられる予定である。
バルツェル共和国軍は、これらのステルス戦闘機の他に、同じくステルス性能を持つ無人戦闘機のJFQ-2無人戦闘機も含め、『インビジブル』や『ウィザード』と呼んでいる。
バルツェル共和国軍は、ステルス機による攻撃を受けた際にレーダー上では何の反応もなかったことからそう名付けたが、これらの機種にまとめて名付けている。というのも、当初は同一機種による攻撃と勘違いしていたからだ。実際には別機種だったことが分かっても、これらの異名はそのまま使われていることも多い。
「まずF-35戦闘機についてですが、こちらはさらに3種類の機種に分類され、空軍機仕様のA型、イズモ級航空母艦に搭載できる短距離離陸・垂直着陸を可能とする特殊仕様のB型、ショウホウ級航空母艦に搭載する海軍機仕様のC型が存在します」
自衛隊はF-4EJとF-15J preMSIPの後継機としてF-35Aを、いずも型の艦載機兼離島防空用としてF-35Bを、東シナ戦争後に導入した しょうほう型の艦載機としてF-35Cをそれぞれ配備し、アメリカ以外で唯一のF-35戦闘機の3種類全種を配備した軍事組織となった。
「このF-35戦闘機は、様々なミッションをこなせる汎用性と最先端の戦闘システムによる高い戦闘能力を両立し、さらにレーダーに映りにくいステルス性能を有した戦闘機です。戦闘機、攻撃機、偵察機の役目を一元的に引き受けることができるこの機体は、ニホン軍の高い軍事作戦能力の一端を担っています」
F-35戦闘機は、以前にはJSF(Joint Strike Fighter=統合打撃戦闘機)とも呼ばれていたことがある。その名の通り、あらゆる機種の代替が可能な機体として開発されているのだ。
開発費は高騰を重ねたものの、西側諸国のステルス戦闘機の標準機としての立場を確保することに成功し、多くの国が採用を決めた戦闘機でもある。……アメリカの影響力を良く思わない国々からは、当然のように敬遠されていたが。
「その電子装備や通信能力も従来機と比較して大きく性能向上しており、我々にとってはF-15J戦闘機やF-2戦闘機を超える、極めて危険な敵であるといえます」
軍事部門室長はF-35戦闘機に対する強い警戒感を顕にする。
「後述するF-3戦闘機についても言えることですが、F-35戦闘機の恐るべき点は‘個’としての能力だけでなく、‘群’としての能力です」
軍事部門室長のその言葉にピンと来なかったのだろう。リーリアが首を傾げる。一方のクーホルン少佐は少し険しい表情に変わる。どうやら、彼の方は多少なりと想像がついたようだ。
「F-35戦闘機は、味方戦闘機や味方艦艇から放たれたミサイルの誘導を肩代わりすることが可能で、また複数機の捉えた情報を常に共有し、まるで戦場に展開する複数のF-35戦闘機が1つの巨大な‘個’となったかのように戦います。いえ、F-35戦闘機だけではありません。戦場に展開するデータリンクで繋がれた全てのニホン軍が、1つの‘個’として戦うのです。これは戦闘機だけに収まる話ではありません。陸海空、そして宇宙や後方支援がリアルタイムに一体となり、効率的かつ機動的に敵を叩く……これがニホン軍の真に恐るべき点です」
F-35戦闘機に関する話が、いつの間にか自衛隊全体に言及する話へと切り替わっていく。だが、軍事部門室長の指摘は決して間違っていない。それこそが現代戦の真髄であり、目指すべきところなのだ。
「話を戻しますが、F-35戦闘機は巨大な戦闘システムの端末としての機能に真の価値を置いた機体と言えましょう。そして、その延長線上にF-3戦闘機が存在します」
軍事部門室長はF-3戦闘機に言及する。
「F-3戦闘機には空軍仕様のF-3A、航空母艦による運用を想定した海軍仕様のF-3Bが存在します。いずれも対空能力に重きを置きつつも、対艦および対地能力にも優れた多用途戦闘機です。強力な2基のエンジンから叩き出される推力は超音速での巡航を可能とし、ニホン軍が誇る凶悪な超音速空対艦ミサイルを4発も搭載できます。これはF-2戦闘機にも成し得なかったことです」
F-3戦闘機は双発のステルス制空戦闘機だ。F-35戦闘機と同様に同時交戦能力を備え、カウンターステルス能力、無人機管制能力すらも兼ね備えている。
この機体はF-15JとF-2の双方を代替することになっており、制空戦闘能力を重視しつつもF-2並みの、いやそれ以上の対艦攻撃能力を誇る。
F-3戦闘機はウェポンベイ内に2発、翼下のハードポイントに2発の計4発の空対艦ミサイルを搭載することができる。しかも、F-2戦闘機では2発までしか搭載できなかった超音速空対艦ミサイルASM-3をも4発搭載できるのだ。そういった意味で、F-2戦闘機の後継機としても導入されているのである。
「超音速空対艦ミサイルは実際どれほど強力なの?」
リーリアは超音速空対艦ミサイルについて説明を求める。
「このミサイルは、海面スレスレの低空をマッハ3以上の速度で駆け抜け、射程距離も数百kmに及ぶ強力なミサイルです。水平線からこのミサイルが顔を出したとき、狙われた艦がミサイルに対応できる時間はわずか数十秒とも言われています。助かるには、探知から撃墜までを数十秒以内に行わなければなりません」
超音速空対艦ミサイルASM-3は、シースキミング……つまり、海面を這うように飛びつつもマッハ3以上の超音速飛行を行える強力なミサイルだ。戦闘機に乗せられる大きさでシースキミング能力を持ち、さらにその空気の濃い低空で超音速を発揮できる空対艦ミサイルを開発できたのは、まさしく日本の技術力の賜物と言えるだろう。
ASM-3は周辺国の対空ミサイルの長射程化に対応し、当初は射程150km以上とされていたものを大きく伸長させ、大型化・重量増加と引き換えに数百kmもの射程を手に入れた。この世界では類を見ないほどに強力なミサイルだ。改良後でも戦闘機に搭載可能なサイズに収まっている。
「……これは今のバルツェル共和国海軍で可能なことですか?」
半ば答えが分かりつつも、リーリアはクーホルン少佐に尋ねる。クーホルン少佐は肩を竦めて首を左右に振った。
「無理ですね。そもそもニホン軍が我が軍の艦隊を撃滅するならば、超音速空対艦ミサイルなどという代物を使うまでもありません。通常の亜音速ミサイルでも我が軍は迎撃できずに被弾することでしょう。実際、先の大戦で我が軍の艦隊を壊滅させたのは亜音速ミサイルであり、そしてそれを撃墜できた例はありません」
そもそもバルツェル共和国海軍にはミサイルを迎撃できる装備もシステムも配備されていない。迫り来るミサイルに対して、艦砲による対空射撃を行うか、手動式の対空銃座で迎撃を行うしかないのだ。たとえ亜音速ミサイルでも迎撃はほぼ不可能であると言える。
そもそもASM-3は航空母艦や艦隊防空艦などの高脅威度・高価値の目標に対して発射するものだ。今のところ、自衛隊から見て高脅威度に思える艦はバルツェル共和国海軍には無かった。
「話を続けます。F-3戦闘機はF-35戦闘機と同様にデータリンクで繋がった味方と‘群’となって戦います。その中でも特徴的なのが無人機管制能力です」
日本の軍事を語る上で外せないのが無人機。リーリアは無人という言葉をこの日、何度も聞かされている。
「F-3戦闘機は、多数の無人戦闘機を随えて1個の戦闘ユニットを形成します。無人戦闘機は人体には耐えられないような驚異的な運動性能を発揮し、また仮に撃墜されても人的被害は避けられ、有人機よりもコスト面でも有利とされています。失っても痛手ではない機体を多数展開し、それを管制する能力を有するこの戦闘機は、これまでの戦闘機とは隔絶した戦闘能力を誇ります」
この構想にはさすがのクーホルン少佐も驚いた。無人機を多数引き連れ、1機の有人機と失われても痛くない多数の無人機で構成された戦闘単位を形成する。
だが、多数の無人機を活用する手段としては有用であると納得もできる。無人機がどれほどの自律的行動ができるかは不明だが、それでもそれを指揮し、命令するのは人間であるのだから。
「我が軍がF-3戦闘機と対峙するとき、死を恐れない多数の無人戦闘機と、それらを手足のように扱うF-3戦闘機本体を相手にすることになります。そして、いずれもレーダーに映らず、逆にこちらは遥か先から捕捉され、超長射程のミサイルによって視界外から攻撃されます。控え目に申し上げても、もはや戦闘云々の前に、こちらが一方的に‘処理’されるだけです」
軍事部門室長は、自国の空軍が航空自衛隊のF-3戦闘機及び無人戦闘機に挑んだ場合、戦闘にすらならないと断じた。ただ、‘処理’されるだけだと。もはや同じ土俵にすら立っていないのだ。それはF-3戦闘機に限ったことではないのだろうが。
「そして、次にその無人機戦力についてです。ニホン空軍の保有する無人機の中で、最も活躍しているのがRQ-4『グローバルホーク』無人偵察機、JRQ-1無人偵察機、JFQ-2無人戦闘機の3機種となります」
軍事部門室長は航空自衛隊の無人機戦力の代表としてRQ-4『グローバルホーク』、JRQ-1、JFQ-2を挙げた。『グローバルホーク』はアメリカから輸入した機種で、残り2機種は日本が東シナ戦争後に配備した機種だ。
「まずRQ-4『グローバルホーク』についてです。これはニホンが前世界の同盟国から輸入した機体で、無人機の中でも大型の部類です」
資料の写真を見ると、のっぺりとした不気味な機体が写っていた。主翼は高アスペクト比の横長で細い翼となっており、クーホルン少佐はこの機体が高高度を長時間巡航する機体だと見抜いた。
「この機体は高い高度で巡航し、長時間の偵察・監視任務を行う機体です。この機体には高性能レーダー、高解像度の光学センサー、赤外線センサーなど、偵察に必要な高度な電子機器を多数積んでおり、その偵察能力は我が軍の1個偵察飛行隊をも凌駕する恐れがあります」
「この機体に武装はあるのか?」
「いえ、この機体は純粋な偵察機であり、武装は積めません。この機体は友軍の航空優勢下で運用することを前提としています。……まぁ、ニホン空軍の制空能力は目を見張るものがありますので、あれほどの力を持った空軍だからこそ使える装備ですね」
軍事部門室長はそう述べた。実際、航空自衛隊の制空能力は、この世界では頭1つどころか飛び抜けて高い。この世界において航空自衛隊による航空優勢を打破できる存在など、少なくともこの場にいる人間には想像もつかなかった。
「次に、JRQ-1無人偵察機です。こちらも偵察機ですが、先ほどの『グローバルホーク』とは運用方法が異なります」
JRQ-1無人偵察機の写真を見ると、やはりこちらものっぺりとしていたが、どこかF-35やF-3のような印象も受ける機体だった。
「この機体は敵地へ飛び込み、比較的低空から情報収集を行う機体です。そのため、ステルス性能や一定の自衛力も備えています」
JRQ-1無人偵察機は亜音速で巡航するジェット無人偵察機で、進入拒否された空域での作戦行動を想定しているため、ステルス性能も考慮されている。また、場合によっては自衛用のAAM-5短射程空対空ミサイルや、対地攻撃用に空対地ミサイルや爆弾なども搭載できる。
「JRQ-1無人偵察機は同時交戦能力を有しており、味方が発射したミサイルの誘導代行や、この機体が捉えた情報から砲の照準補正やミサイルのロックオンなどが、発射側から直接相手が確認できずとも行えるそうです。そして、『グローバルホーク』よりも小型であるため航空母艦での運用も可能で、ニホン海軍も艦載機として運用しています」
JRQ-1無人偵察機はRQ-4『グローバルホーク』無人偵察機どころか、有人戦闘機よりも小型となっており、空母での運用も考慮されている。そのため、しょうほう型には定数として4機ほど搭載されており、次世代の原子力空母にも搭載される予定だ。
「また、『グローバルホーク』よりも画期的とされているのは、人工知能の搭載による自律行動能力を有する点です。それまでの無人機は遠隔操作により、人が機体をコントロールするのが一般的でしたが、JRQ-1無人偵察機はある程度の自律行動が可能で、少なくとも機体操縦に関しては人工知能が行うようです」
「人工知能……ですって?」
その言葉は、あまりにも現実離れした言葉だとリーリアには感じられた。バルツェル共和国にも人工知能という概念はある。だが、それはSF小説などに登場する架空の技術であり、現実に存在するわけではない。……そのはずだった。
「ニホンは人工知能と呼ばれる、学習によって最適な行動を自律的に選択できる意思決定システムを実用化しています。民間にも普及しているそうですよ」
それを述べる軍事部門室長は諦めたような笑みを浮かべていた。バルツェル共和国にとってはSFそのものだった技術が民間にすら普及している。その事実はかなり重く受け止めるべきだ。
バルツェル共和国はSF小説に登場する国家と対峙してしまったようなものだ。如何に無謀だったかがよく分かる。
「話を戻しますが、JRQ-1無人偵察機はある程度の自律行動が行えるため、運用するのに必要な人員は少数で済むメリットがあります。……ニホン軍が無人機戦力の充実を図るのは、少ない人員で大きな戦力を保有するためと思われます」
日本は人口減少社会だ。出生率の改善や移民流入(選択的ではあるが)によって、当初予想されていたよりも緩やかな減少に留まっているものの、21世紀後半までは減少が続くと見られている。そのため、限りある人的資源の使い道を日本は考えさせられることになった。
そんな事情もあって、自衛隊も省人数化が進んでいる。……とはいえ、戦力規模の拡大によって兵力自体は拡大しているが。東シナ戦争後は世界経済が混乱し、日本経済にも多少の影響があったために自衛官の求人倍率が上がり、いくらか募集人数を増やしても十分対応可能だったのだ。
「次に、JFQ-2無人戦闘機をご紹介します。これは先ほどまでの無人機とは異なり、戦闘用の無人機です」
JFQ-2無人戦闘機の写真を見る。F-3戦闘機を小型化したような見た目をしており、遠目にはF-3戦闘機と見分けがつかないかもしれないとリーリアには思えた。
「JFQ-2無人戦闘機はF-3戦闘機の僚機となるべく開発された無人機です。そのため、F-3戦闘機と巡航速度を会わせる必要があり、無人機としては珍しく超音速での巡航を可能としています。運動性能はF-3戦闘機以上であり、恐らく有人機でドッグファイト……近接航空戦闘を挑んで勝てる相手ではありません」
有人戦闘機は基本的に9Gまでの加速度がかかる旋回が可能とされているが、JFQ-2無人戦闘機はそれを超える高G旋回が可能だ。人体への負担を考えることなく、マシンマキシマム的な考え方で設計されているのだ。
「搭載可能兵装はF-3戦闘機と共通しています。ペイロード自体はF-3戦闘機と比較して低下しているものの、その戦闘能力はF-3戦闘機に匹敵、あるいは上回る恐れもあります」
JFQ-2無人戦闘機がF-3戦闘機に酷似しているのは見た目だけではない。運用思想がF-3戦闘機に随伴するというものであるため、その武装もF-3戦闘機と同様の任務を行えるものとなっている。言うまでもなく、ステルス性能も高い。機体自体が有人機よりもやや小さいことを考えれば、F-3戦闘機以上のステルス性能を発揮するとも考えられる。
「JFQ-2無人戦闘機にも人工知能が搭載されているのですが、こちらの人工知能は状況を自動で判断して、優先攻撃対象を選択し、自機を指揮する有人機のパイロットに様々な行動提案を行います。パイロットから許可が下れば、JFQ-2無人戦闘機の人工知能は与えられた裁量の範囲内で最良の結果を得ようと作戦行動を開始します。そこに一切の感情も迷いもなく、ひたすら効率的に目標達成を目指す……まさしく、冷徹で従順な機械の兵士と言えるでしょう」
魂なき無人機械による自律的判断による殺戮。日本はこの段階にまで達している。リーリアも、そしてクーホルン少佐も奇妙な不気味さを覚えた。
これは果たして「人による戦争なのか?」という疑問だ。日本がこのまま軍事力の無人化に邁進すれば、やがて戦場に人が立つことはなくなり、魂無き無人の殺戮機械が敵兵を効率的に‘殺処分’する。日本人はそれについて、安全な後方地域で機械から行動許可申請と報告を受け、それに応じるのみ。そんな未来が見えた。
その未来に対し、どうしても不安を感じてしまうのだ。祖国を思って日本に立ち向かう未来ある若者達が、ただ殺すためだけに量産された殺戮機械達に無為に殺される光景が思い浮かんでしまう。そんな戦争の有り様に、どうしても違和感が拭えない。
「皆さんの気持ちも分かります。ですが、技術の進展につれて戦争の有り様が変わることはよくあることです。我々の火砲を用いた戦争も、中世以前の騎士達からすれば邪道に見えることでしょう」
「なるほど。つまり、我々はその内、ライフル銃で武装した兵士に対し、槍で突撃する未開の国の兵士となってしまうかもしれないわけか」
「あるいは、もう既にその段階かもしれませんが」
クーホルン少佐の喩えに軍事部門室長はそう返す。既に日本とは様々な分野で差をつけられている。中にはネットワーク戦闘など、バルツェル共和国では着想すらされていない概念すらもあちらにはある。
そう。ともすれば、いまや偉大なるこの祖国は大砲や銃を知らない未開の蛮族のようなものなのかもしれない。少なくとも、半年前の戦争は、そのようなレベルの醜態だった。軍上層部や政府は絶対に認めないだろうが。
「ニホン軍はこの他にも様々な無人機を運用しています。同じニホン空軍では、戦闘機に搭載されて空中発射される小型無人機もありますし、ニホン陸軍では小型の無人戦闘ビークルも運用されています。ニホン海軍でも、掃海や潜水艦探知・対潜水艦攻撃のための無人潜水艇なども採用されています」
「ますます、我々が想像する最悪の未来が現実味を帯びてきたな」
クーホルン少佐はそう言って眉を潜めた。想像以上に無人機戦力の運用が進んでいたのだ。これはそう遠くない内にも、リーリアやクーホルン少佐が想像した未来がやって来るのかもしれない。
「さらに悪い知らせがありますが、現在ニホン軍は新型の無人戦闘機を開発中です。次のページを見てください」
ページを捲ると、JRQ-1無人偵察機やJFQ-2無人戦闘機よりも、さらに一回り小さく感じられる機体の写真が掲載されていた。
「これはニホンの軍事誌でも比較的最近になって取り上げられている記事です。この機体はXJQ-3と呼ばれています。制式採用されれば、JFQ-3、あるいはJMQ-3の型式が与えられると推測されています」
「この機体は何か特別な特徴があるのか?」
クーホルン少佐が尋ねると、軍事部門室長は神妙な面持ちで頷いた。
「この機体の最大の特徴は、その運用方法です」
「運用方法? これまでの無人機も相当特殊な運用だったと思うけど……」
リーリアがそう言う。実際、無人機を扱ったことのないバルツェル共和国からすれば、無人機など特殊性の塊だろう。
「その無人機の中でも特殊なのです。……この機体はコンテナに積まれ、どのような場所からでもコンテナから射出でき、予め設定された条件に基づいて自動で破壊目標を判断して攻撃を行います。作戦遂行後は、可能であれば味方勢力圏へ帰還しますが、不可能であった場合は自爆します。場合によっては敵に体当たりをした上で自爆するとも言われています。……これがどれだけ恐ろしい兵器かご理解いただけますね?」
クーホルン少佐はもちろんのこと、リーリアにもそれはよく分かった。
極端な例で言おう。これがバルツェル共和国首都リディーリアに持ち込まれ、大統領府を含む重要施設を攻撃対象に設定されていたら、バルツェル共和国全体が麻痺することになりかねない。
「元々この機体は、機体搭載コンテナを分散配置しておき、仮に敵の先制攻撃によって味方航空基地の基地機能が失われても、直ちの反撃が可能になるように開発されている代物です。ですが、その戦術的・戦略的汎用性は極めて高く、様々な作戦に投入可能だと思われます」
これが実戦配備されれば、バルツェル共和国軍は自衛隊と戦うとき、全てのコンテナを疑わねばならなくなる。一々確認作業を取っている間に発進され、大いに暴れられてしまうことが容易に想像できる。
「この機体の性能自体は、ニホン軍戦闘機としては控え目となっていますが、今の我々にとっては十分以上の高性能機となっています。予想スペックに関しては記載の通りです」
XJQ-3無人戦闘機は、最高速度M1.1、戦闘行動半径は1000km(帰還を考えないのであれば、その倍以上)、最大4発の対空ミサイルまたは1000kgまでの航空爆弾を4箇所の半埋め込め式ハードポイントに搭載できる。
コンテナから発進するときは使い捨てのロケットブースターを点火して加速し、そこからは搭載するジェットエンジンで飛行する。
ロケットブースター込みの機体本体の価格は約7.5億円となっている。だが、量産効果次第では約5億円まで価格が低下することも考えられるようだ。民生部品の積極的利用も価格低下に貢献している。
アメリカが開発した同系統機体と比較すると割高だが、後発機のため細かい部分でブラッシュアップされている。同じ無人戦闘機のJFQ-2無人戦闘機は性能を追い求めたため、量産効果を加味しても約50億円のコストがかかっている。それに比べれば、極めて安価な無人戦闘機と言えよう。
「……コストパフォーマンスと即応性、展開性を重視した機体にすら、我が軍の最新鋭機が性能で劣るとはな」
クーホルン少佐がそう呟いた。XJQ-3無人戦闘機はバルツェル共和国軍のクリーガーMk.Ⅰbの性能を超えていた。無人であるが故の運動性能の高さも加味すれば、その差はもっと大きくなるだろう。
「それだけ、我が方とニホンの間には技術的なギャップがあるということです、少佐」
改めて日本との差を思い知らされる。そして、日本がいたという世界はこんな兵器が跋扈する時代だったというわけだ。この日本ですら有数の大国であれど、世界一の超大国ではなかったというのが驚きだ。
クーホルン少佐は日本がいた世界がどれほどまでに混沌とした世界だったのか、という恐れすら抱き始めていた。……まぁ、地球が混沌としていたのは事実である。日本が転移する時代には、中東でドローンを主力としたドローン戦争も起きようとしていた。
「次に早期警戒機、早期警戒管制機についてご紹介しようと思います」
「聞き慣れない名前だな」
クーホルン少佐がそう呟く。
「そうでしょうね。ですが、発想自体はこれまでと違って我々にも理解できるものですよ」
軍事部門室長がそう言って苦笑する。本来ならばこの早期警戒機や早期警戒管制機も驚嘆すべき戦力なのだろうが、戦闘機や無人機のインパクトが強すぎて、相対的にあまり印象は強くない。彼自身がそう思っていた。
「まず、ニホン軍戦闘機には当たり前のように強力なレーダーが備えられています。ですが、やはり比較的小型……まぁ、我々の戦闘機よりも大きいのですが、そんな機体に載せられるレーダーは出力に限りがあります」
「まぁ、当然だろうな」
「ですが、だからと言って地上配備レーダーは水平線以下の目標を探知できず、低空での死角も多くなります」
地上配備レーダーや艦載レーダーが低空目標の探知を苦手とするのはそのためだ。
「ですので、ニホン軍は大型レーダーを航空機の背中に無理矢理載せた機体を配備しました。それが次のページの写真に写る機体です」
次のページを捲ると、大きな円盤を背中に背負った中型機・大型機の写真が掲載されていた。
「中型機の方はE-2D/E『アドバンスド・ホークアイ』早期警戒機、大型機の方はE-767早期警戒管制機です」
「これはまた……奇妙な形状だな」
「ですが、発想は理解できます。我が軍も戦闘機に先駆けて、レーダーを搭載した大型偵察機を配備していますので。まぁ、評判はよろしくありませんが」
バルツェル共和国空軍が配備するレーダー搭載型偵察機は故障頻度が高く、レーダーの信頼性も低いとあって評判は悪い。
「これらは、大型レーダーによって遠方から早期に敵を探知し、陸海空の味方部隊に対して情報共有を行い、戦況分析や多数の航空部隊の管制を行うことを目的としています。また、そのレーダー性能を活かして、友軍部隊のミサイル誘導を代行する機能も付与されています」
地球では先進国の空軍において、この早期警戒管制機は無視し得ない重要な存在であった。この支援があれば、戦闘効率が目に見えて向上するのである。その一方で極めて高価な兵器でもあり、保有できる国家は限られている。
「早期警戒機と早期警戒管制機に明確な区分はありませんが、より機能が充実しており、戦況分析能力及び戦域管制能力が高い機体を早期警戒管制機と呼ぶそうです」
「先の戦争においても、敵に常に先手を取られ続け、翻弄されていたのもこれらの機体の支援があってこそか」
「この早期警戒機・早期警戒管制機の支援だけが原因ではありませんが、大きな一因ではあると考えられます」
早期警戒機・早期警戒管制機は言わば前線指揮官であり、軍隊の目でもある。効率的に戦争を進めるには無くてはならない存在だ。
「さて、以上がニホン空軍における高脅威の兵器でしたが、他にも注意を向けるべき存在があります」
「……やはり、ニホンは大陸諸国に戦闘機も売ろうとしているのか?」
「その通りです」
クーホルン少佐の問いに頷く軍事部門室長。
「次のページをご覧ください。これがニホンが大陸諸国に輸出しようとしているFA-8戦闘機です」
そこに写っていたFA-8戦闘機を日本のミリオタが見れば、よりマッシブになったT-4練習機またはT-8練習機と呼ぶだろう。
「この機体はニホン空軍のジェット練習機であるT-8練習機を改修し、軽戦闘機にした機体です」
現在、日本では練習機の更新が行われている。T-4練習機はもう十数機しか残っておらず、残りはT-8練習機だ。ちなみに、T-8練習機は元々改装で軽戦闘機として使用できるように開発されており、そのおかげで短期間での実用化が実現しようとしている。
「公表性能としてましては、最高速度M1.8、巡航速度M0.88、日本製レーダーを搭載し、中射程空対空ミサイルを4発と短射程空対空ミサイルを2発搭載できます。爆装も6ヶ所のハードポイントに計10000ポンド……約4500kgを搭載することが可能とされており、戦闘行動半径は800kmとされています」
「……これでは、今空軍が開発を急がせている新型戦闘機ですら時代遅れの代物と化しそうだな」
「遺憾ながらその通りです。新型戦闘機ですら、このスペックには追いつけないでしょう」
FA-8戦闘機の性能はバルツェル共和国空軍が威信をかけて開発している新型戦闘機の性能を上回っていた。
その新型戦闘機はバルツェル共和国空軍で初のレーダー搭載型超音速ジェット戦闘機だ。最高速度はM1.2とされ、開発中の赤外線誘導方式の空対空ミサイルを4発搭載できる。
ちなみに、バルツェル共和国ではレーダー関連技術の発展が遅れており、レーダー誘導ミサイルも開発中だが、まだ完成には時間がかかると言われている。だが、新型戦闘機は将来的にレーダー誘導ミサイルの搭載することも視野に入れて開発が進められている。
「搭載するミサイルの性能は? まさかニホン軍の正規品と同じということはないだろう?」
クーホルン少佐が尋ねると、軍事部門室長は微妙な表情を浮かべながらも頷いた。
「ええ、確かに幾分かコストダウンと共にスペックダウンは為されています。ですが、それでも性能は圧倒的です」
そう言って軍事部門室長は性能を紹介する。
まず中射程ミサイルのAAM-4M。輸出用にシーカーの性能を落とし、射程も短くしたモデルだ。それでも射程は100km以上、命中精度もかなり高い。アメリカ軍の初期型AIM-120よりもかなり高性能なミサイルと言える。
そして、短射程ミサイルのAAM-5M。こちらも同様のデチューンを施されている。しかしながら、優秀な識別能力を有しており、生半可な妨害手段では誘導を阻害することはできないだろう。
一方のバルツェル共和国軍が開発中の空対空ミサイルは、射程は15km程度とされており、日本でいう短射程ミサイルにすら達しないレベルの射程しかない。誘導性能も日本製と比べればかなり限定的と言わざるを得ない。
「このFA-8戦闘機は現在試作機が完成して性能試験を行っており、早ければ来年春までには性能試験を終え、先行量産機の生産が始まるかもしれません」
FA-8戦闘機は急ピッチで開発が行われている。これは大陸諸国の意向によるものだ。大陸諸国はバルツェル共和国の侵略によって危機感を持ったのか、自国の軍事力強化に意欲的になった。
そのため、大陸諸国は高性能な日本製兵器の調達をかなり急いでいる。せめて質的にはバルツェル共和国軍を超えたいと考えているのだ。バルツェル共和国の侵攻以前はFA-8戦闘機に対して慎重な考えの国もあったが、今では積極的に導入しようと動いている。
そのため、FA-8戦闘機の開発・生産が急がれているのだ。日本の防衛産業界はこれまでにないほどに活況だ。これまでは多くの場合、自衛隊の装備のみを作っていたが、これからは大陸諸国の主力装備も手がけることになるのだ。
「以上がニホン空軍に関する報告です。次に宇宙の軍事利用に関しての報告を行います」
宇宙の軍事利用。そもそも宇宙に手が届いていないバルツェル共和国では比較対象にすらならない分野だ。だからこそ、これまでとは少し異なる意味でも価値のある報告となるだろう。そんな予感を胸に、リーリアとクーホルン少佐は次の報告に臨んだ。
最近の動きを見ると、F-15Jは2040年代まで使われそうな勢いですね(笑)
ちなみにXJQ-3のモデルは、アメリカのXQ-58『ヴァルキリー』です。エスコン7のMQ-99のモデルにもなってますね(笑)




