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交錯世界の日章旗  作者: 名も無き突撃兵
第一章
27/46

第27話

少し遅れました。申し訳ないです。

全て大学の期末テストとモンハンワールド発売が悪いんです……(笑)

今回も少し走り気味に話を進めました。できれば、今年度中に戦争を終わらせたいですねー。

 2034.5.29

 旧アーカイム皇国領 東部国境

 ルーカン平原

 10:30 現地時間





 旧アーカイム皇国領の東の国境線。その中でも比較的南方に位置する辺り。隣国エルスタイン王国との間には山脈があるが、そのほとんどはエルスタイン王国領内にあり、旧アーカイム皇国領の東の国境は、山脈を前にした平原地帯であった。この地はルーカン平原と名づけられている。

 昔より、そこは農地として利用されており、昔はエルスタイン王国の西部貴族達が狙っていた。東部貴族や王族はそれを押さえていたために大規模な戦争にはならなかったが、それでもアーカイム皇国は隣国の脅威というのをひしひしと感じていた。

 もっとも、近代においては西のベールニア連邦の躍進が目覚ましく、アーカイム皇国はそちらの方に注力していたが。


 しかし、それも転移前の話。今のこの地の主はバルツェル共和国であり、この地はバルツェル共和国の最前線である。そして、バルツェル共和国は現在、戦争状態にあった。故に、この地が戦場になるのも自明の理なのである。






「目標、前方の敵戦車群! 撃て!」


 バルツェル共和国陸軍は現在、西進してくる陸上自衛隊部隊と交戦状態にあった。国境線を守るバルツェル共和国陸軍は総兵力10万人。当初はこの倍を予定されていたのだが、海上自衛隊所属の潜水艦隊の妨害の影響で成し得なかった。

 一方の陸上自衛隊。こちらの兵力は約6万人。バルツェル共和国陸軍よりも数は少なく、さらに攻める側である。数字の上では劣勢は避けられないと思われそうなものだが、実際は違った。


「ダメだ……効いてない!」


 バルツェル共和国陸軍の対戦車砲兵が戦慄の声を上げる。


 バルツェル共和国陸軍は進撃してくる自衛隊部隊に対し、防衛作戦を実施していた。塹壕などの大規模な防衛線を形成して前線に戦力を集中させることは強力な機甲兵力を持つ可能性の高い自衛隊相手には向かないと考え、要所に部隊を集中配置し、後退しながら防衛戦闘を行っている。そして、遅滞戦闘を行いながら、機動力のある機甲部隊が迂回して側面から叩くのだ。いわゆる機動防御という防勢戦術である。


 しかし、バルツェル共和国陸軍の戦術は既に破綻していると言っても過言ではなかった。


「敵の反撃が来ます!」


「退避しろ! 退避!」


 その悲鳴じみた声に続いて響く爆発音。対戦車砲部隊は為す術なく榴弾で八つ裂きにされて沈黙する。


「敵航空機、接近! 空爆です!」


「伏せろ!」


 地面を捲り上げるほどの爆発が連鎖的に起きる。着弾地点付近にいたバルツェル共和国軍の歩兵中隊は瞬く間に壊滅する。


「くそ! もうこんなところまで!? 展開速度が早すぎる!?」


 バルツェル兵はすぐ近くまで迫ってきた敵戦車と敵装甲車、そして敵兵を見てそう喚く。火力で押され、指揮系統を寸断され、補給も乏しく、機動力で圧倒される。それが遅滞戦闘を行うはずのバルツェル兵達の実情だった。


 何ということはない。バルツェル共和国陸軍の防勢戦術の破綻の第一の理由だ。遅滞戦闘で敵の前進を一時的に止め、迂回した機動部隊によって側面から奇襲するはずだったのだが、彼らは進撃する自衛隊部隊に対して、‘そもそも遅滞戦闘自体ができていない’のだ。どこもかしこもあっさりと火力と機動力に押し潰され、防衛線は食い荒らされている。




 そして、破綻の第二の理由。それは迂回している機動部隊にあった。


「あれ……遅滞戦闘をしている味方は大丈夫なのでしょうか?」


 バルツェル共和国陸軍の1個連隊相当の機甲部隊と2個連隊相当の自動車化歩兵部隊は、敵部隊を大きく迂回して側面につこうとしていた。ルーカン平原北部には林や森が存在し、その中に身を隠すように行動していた。一応、整備された道は存在しており、部隊は2列縦隊となって動いている。

 だが、大きく迂回していても、味方部隊がいるであろう位置で嫌になるほど爆発音が響くのが聞こえ、各地から黒煙が幾筋も立ち上っているのが見えていた。


「信じるしかないだろう。高等文明人が蛮族ごときに負けるはずがない」


 一人のバルツェル共和国軍の下士官は不安を押し殺すように、部下に向かってそう応えた。

 彼とて分かっているのだ。あそこにいる味方が無事でいるはずがないと。それでも、遅滞戦闘だけなら何とかなるだろうと考えていた。

 実際は遅滞戦闘にもなっておらず、ただ蹂躙されているだけだが。


「他の機動部隊も上手く迂回できてるな……」


 迂回する部隊は彼らだけではなかった。いくつかに別れて行動しており、総勢1万人規模の部隊が迂回行動をしていることになる。

 今のところ、敵に見つかった様子はない。機動部隊の面々は、この作戦の成功を確信した。


 その時だった。


「おい……なんだよ、この音……?」


 空気を連続で叩くような奇妙な音が響き渡り、徐々に大きくなっていく。こんな音はバルツェル兵の誰もが聞いたことがなかった。それ故、反応が遅れてしまった。


 木々の間から光る何かが飛んできて、『ガーディ8』戦車を改良した対空車両『アンティアー8』に突き刺さる。一瞬の内に装甲が穿たれ、弾薬が誘爆して破片が飛び散り、近くのトラックを襲いかかる。運転手はもろに破片を浴びて死亡、タイヤはパンクして立ち往生することになる。

 だが、事態はそんなトラックのことに頓着できる状況ではなかった。


「奇襲だ!」


「くそ! バレてやがった!」


 そう。これがバルツェル共和国陸軍の作戦の破綻の第二の理由。迂回する部隊の存在は、完全に自衛隊側に露見していたのだ。


 上空に現れるのは攻撃的なフォルムをした回転翼の機体。AH-64E『アパッチ・ガーディアン』攻撃ヘリである。1機や2機ではなく、1個飛行隊規模(8機)も飛んでいた。

 30㎜チェーンガン、ロケット弾、対戦車ミサイルで次々と戦車、装甲車、歩兵などを仕留めていく姿は、まさしく空のハンターであった。


「無理だ! 勝てっこない!」


「ちくしょう! 逃げろ!」


 バルツェル兵達の多くは応戦することを諦める。有力な対空火力を保有していないバルツェル歩兵では対抗しようがなかった。そもそも、この機動部隊には少数の対空車両しか配備されておらず、それらは優先的に排除されてしまい、この部隊の対空火力はほぼ皆無の状態に陥っていた。


 道から外れて木々の中に逃げ込むバルツェル兵達だったが、それだけではAH-64E攻撃ヘリの赤外線センサーによって容易く捉えられてしまう。とはいえ、優先目標が装甲兵力であるため、それらは後回しになってしまうのだが。


 攻撃ヘリによる攻撃以外にも、特科部隊の砲撃と航空攻撃がバルツェル共和国陸軍部隊に襲来する。その火力は嵐のようであり、部隊の作戦能力が失われるのにそれほどの時間はかからなかった。


 さらにUH-1JやUH-2J、UH-60Jなどといった輸送ヘリが普通科部隊を伴って飛来し、組織的抵抗力を失ったところに普通科部隊を降ろし、制圧していく。バルツェル共和国陸軍部隊は次々と降伏するか、個々で抵抗しては壊滅し、自分達よりも数の少ない自衛隊部隊に対して、あっさりと敗北を喫することになった。




 このように、バルツェル共和国陸軍の防勢戦術は完全に破綻していた。全方面で陸上自衛隊の火力と機動力に翻弄され、航空自衛隊や海上自衛隊の航空機に指揮系統、レーダー施設、通信網を破壊されている。

 もはや、旧アーカイム皇国領の防衛は不可能と言っても過言ではなかった。あまりにも絶望的な戦況に、戦闘前は「ニホン人を皆殺しにしてやる」と息巻いていた好戦的な一部のバルツェル将兵達も、今や顔を真っ青にして震えているか、既に骸になっているかのどちらかになっているような状況に陥っていくのだった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「うーむ、思ったよりもすんなりと突破できるものだな……」


 エルスタイン王国領内にある、とある自衛隊駐屯地。その中の前線指揮所にて、此度の陸上自衛隊部隊の総指揮官を任された南武一樹(なんぶ いつき)陸将はそんなことをポツリと呟いた。

 前回のエルスタイン王国内での戦闘では第1外征団長が総指揮官を務めていたが、今回は別に派遣された彼が行っている。6個師団規模にも及ぶ陸上自衛隊部隊の総指揮を、自分のところの師団の指揮も並行しながら行うよりは別の人間にやらせた方がいいという判断の下、総指揮官が変えられている。

 また、指揮所も変わった。ウェルディス市は解放され、エルスタイン王国軍が治安維持をしており、自衛隊が常駐する必要はなくなった。その近郊に自衛隊の仮設駐屯地を築き、そこに前線指揮所を設立したのだ。


 さて、先ほどの南武 陸将の発言であるが、彼はどちらかというと悲観的な見方をするタイプの人間であった。それ故、バルツェル共和国陸軍の実力を実態よりも幾ばくか上に想定していたらしい。


 とはいえ、現在の戦況を見れば、彼の気持ちも分からなくもない。先のエルスタイン王国内での戦闘に比べ、こちらの頭数が大きく増えたとはいえ、依然として敵の数の方が多く、さらには攻守が逆転してこちらが攻める立場。一般論で言えば、攻める側は不利になりがちだ。

 にも関わらず、バルツェル共和国陸軍の防衛線は至るところで食い破られている。

 現在、第1外征団、第2外征団、第7師団といったとりわけ強力な部隊が敵前線を突破し、彼らの食い残しを後続の他の師団が平らげるといった状態だ。敵は機動防御を実施しようとしたものの、航空優勢を得た自衛隊はステルス無人偵察機を飛ばしていて、その動きは完全に捉えていた。その結果、空爆と攻撃ヘリによる強襲、特科部隊の砲撃の後にヘリボーン強襲で迂回部隊は壊滅の憂き目に遭っている。


 自衛隊の作戦行動は予定通りに、否、予定よりも早く進行していた。油断しないように気をつけつつも、南武 陸将は苦笑を禁じ得なかった。彼の心境を例えるのなら、必死に対策していた科目のテストが物凄く簡単だった時の学生のようなものだろうか。


 しかし、彼は気を抜いた姿をこの場で見せるわけにはいかなかった。無論、部下達が周りにいるというのもある。しかし、現在はそれ以外にも‘観客’がこの場にいるのだ。


 その‘観客’の方をちらりと見る南武 陸将。そこには、自衛官に状況説明を受けながら、ポカンとした表情で作戦推移を眺めている各国の観戦武官達の姿があった。リーデボルグ共和国、エルスタイン王国、リテア連邦、そしてアーカイム解放戦線からそれぞれ派遣された数名の観戦武官達だ。


 今回、各国とアーカイム解放戦線から観戦武官の派遣の許可要請が外務省を通じて政府、防衛省に届いていた。

 各国及びアーカイム解放戦線側からすれば、事実上の宗主国とも言える日本の軍事的実力を測ることができ、さらに自分達が目指すべき軍事組織の姿を学ぶことができるのだ。観戦武官の派遣を望むのは当然であった。

 一方の日本としても、観戦武官の受け入れはメリットがあった。それは、自衛隊の実力を見せつけることによって日本の各国に対する影響力を軍事分野からさらに強めていくことと、日本製兵器のデモンストレーションである。


 そんな事情もあって、観戦武官の派遣はスムーズに行われた。利害が一致している故、当然ではあるが。




 さて、そんな国を代表して来た観戦武官達であったが、彼らは一様に呆然とした表情を浮かべている。


 何故か。


 それは、根本的に自分達の戦闘とは異なっていることと、自国の軍と比較して圧倒的なまでに強力だと思われたバルツェル共和国軍が自衛隊の攻撃によって為す術なく敗走しているからである。


 それを見て、南武 陸将は肩を竦めた。自衛隊からしたら、多少なりと上手く事が推移している程度の状況であるが、彼らからしたらそれでは済まないのだろう。


 それはさておき、南武 陸将はとあることに頭を悩まされていた。


(もし敵が都市部に籠ったら……面倒なことになる)


 南武 陸将が、というよりも自衛隊が直面している問題はそれであった。現在、自衛隊は圧倒的優勢の下、作戦を遂行している。しかし、それは非戦闘員のいない戦場において戦闘しているからである。

 自衛隊からして、最も嫌なバルツェル共和国軍の行動は都市部に籠ること。これをされると、非戦闘員を巻き込んだ泥沼の戦いに発展するだろう。いちいち敵か民間人かを識別し、民間人なら保護しなければならない。一方、バルツェル共和国軍は植民地人の生き死になど気にせず自衛隊を攻撃してくるだろう。

 こうなってしまえば、技術的優位による優勢も崩れてしまう。民間人も巻き添えの無差別攻撃を許可すればその限りではないだろうが、国内外からの批判は免れないし、戦後のことを考えると悪影響は計り知れない。


(可及的速やかに敵主力を包囲殲滅し、敵司令部を強襲して敵軍の中枢を破壊し、都市戦闘を極力避けて民間人の被害を減らす。……上手くいけばいいが)


 南武 陸将としては、この作戦が上手くいくとは思えなかった。かなり楽観的な作戦である。先の戦闘では、これとほぼ同様の作戦が実行され、自衛隊側の奇襲効果もあってか、成功した。しかし、今回は敵軍も警戒しているはずだし、実際に航空偵察の結果、敵の大部隊がアーカイメル近郊の敵司令部周辺に展開していることが確認できている。考え方を変えれば、先の戦闘による恐怖が敵に遊兵を作らせているとも取れるが、今はそれが裏目に出ている。

 実際、自衛隊上層部……それも、前線部隊だけでなく本土の防衛省の方でも、この作戦は途中で破綻し、かなりの確率で都市戦闘が起きると考えていた。

 そして、防衛省上層部では最悪の場合、ある程度の民間人の犠牲は許容する考えに固まりつつあった。もし、その民間人が日本人であれば絶対に認められなかったが、あくまでもアーカイム皇国人である。自衛隊員を不必要に死傷させるリスクを負うことと、今までほとんど交流すらなかった国の民の命。それらを天秤にかけたわけだ。

 まぁ、それでも民間人に被害がないに越したことはないが。


 観戦武官達は自衛隊の圧倒的な強さに愕然としていたが、実際のところ、自衛隊にそれほど余裕があるわけでもないのだ。戦闘では負ける要素などないが、それだけである。


(観戦武官達もいることだし、あまり無様は見せられないが……)


 そんな南武 陸将の悩み事は、次の瞬間に解決することになる。


「敵軍の無線を傍受! 内容は『こちらバルツェル共和国陸軍司令部。我、降伏す。全バルツェル将兵は戦闘を中止せよ』です! また、敵司令官の名で降伏する旨の通達が来ています!」


「……なに?」


 司令部の通信員の言葉に、南武 陸将は思わず耳を疑った。簡単に降伏することはないと思われていたバルツェル共和国軍があっさり降伏したのである。どうやって降伏させるか悩んでいた身としては、目下の悩み事が消化されて嬉しいことこの上ないが、こんな都合の良いことが起きると、むしろ裏がないか疑いたくなる。


「……敵軍の動きは?」


「敵の多くの部隊が戦闘を停止しつつあるとのこと。戦闘を継続する部隊も多少あるそうですが……」


「……なら、降伏する意思のある敵部隊は捕虜とし、戦闘継続の意思のある敵部隊に対しては攻撃を継続させろ」


 釈然としない気分になりながらも、南武 陸将はそう命じた。

 観戦武官達は何が起こっているのかも分からず、頭にクエスチョンマークを出しているだけであった。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 自衛隊にバルツェル共和国軍が降伏を通達する少し前。

 アーカイメル近郊のバルツェル共和国陸軍司令部の上層部の雰囲気はお通夜に等しいものであった。


「……やはりこうなってしまったか」


 旧アーカイム皇国領を防衛するバルツェル共和国陸軍の司令官であるグリム・ロンダース大将は溜め息混じりにそう呟いた。

 報告される内容は全方面での全面敗退である。拮抗するどころか、善戦の報告すらもない。あっちの部隊が全滅した、こっちの部隊が勝手に降伏した、そんな報告がほとんどである。

 敵に打撃を与えた旨の報告は一切なく、入るのは全方面からの救援要請である。それに応えようにも、向かわせられる戦力などない。強いて言えば司令部の防衛に割かれている部隊であるが、それを使うことはできない。先の自衛隊との戦闘において、自衛隊は主力部隊を飛び越えて司令部を強襲したのだ。司令部の防衛部隊がいなくなれば、嬉々として敵は司令部を潰しに来るだろう。


「……やはりヤツの言うとおりだったか」


 ロンダース大将は自らの友人の言葉を思い出した。


『この戦争、どう足掻いても勝てはしない。我々が考えるべきなのは、如何に祖国のダメージを小さくして終戦させられるか、その一点のみだ』


 この状況を見る限り、彼の言葉は正しかったようだ。そして、続いて彼が言っていたことを思い出す。


『私は祖国が戦争を終結させるように働きかけるつもりだ。反逆者として裁かれかねないやり方だがな。そして、前線で戦う君には、君の下で戦う将兵達の命を助けてやって欲しい。彼らはこれから先のバルツェル共和国に必要な存在だ』


 それを言っていた時の友の目は、自らを犠牲にするのも厭わないような、決意に満ちたものであった。彼なら本気でやるだろう。


「……ならば、私は私のやるべきことをしよう」


 ロンダース大将はそう呟くと、皆の方に向いて口を開いた。


「諸君、我々はもうやれるだけのことはやった。これ以上できることはない。……誠に遺憾ではあるが……私は敵軍に降伏しようと思う」


 それを言った時、ロンダース大将は盛大に反対意見が飛んでくることを覚悟していた。だが、実際はそうはならなかった。


「……遺憾ですが、そうせざるを得ないかと」


「私も同意見ですな」


 予想外にも、何名かの高級将校が同意してきたのだ。


「ふざけるな! 降伏だと!?」


 無論、降伏など受け入れられないと主張する者もいる。しかし、全体的には降伏派の方が多い印象であった。


 結局、降伏派に諭され、敗北の責任はロンダース大将が全て負うという前提の下に渋々と抗戦派も降伏を受け入れた。


「……ヤツめ、私以外にもシンパがいたのか」


 ロンダース大将は苦笑した。どうにも、自分の友人は思った以上に用意周到だったらしい。もしくは、日本に勝てないと理解しているバルツェル共和国軍将兵が増えてきている証なのかもしれない。


「さて、ヤツも上手くやってくれることを祈ろうか」


 ロンダース大将は友人……リゲル情報少将が上手く工作してくれることを心から祈った。彼が失敗すれば、祖国は壊滅的な被害を負うのは必至なのだから。


 こうして、自衛隊にとってもバルツェル共和国陸軍にとっても、アーカイム皇国の民にとっても幸いなことに、泥沼の市街戦は起こらずにあっさりと戦闘は終結に向かっていくことになる。


 しかし、ここまでの一連の戦闘による死傷者は多数に上る。あくまでも不幸中の幸いでしかないのは誰の目にも明らかだ。


 バルツェル共和国軍の死傷者は、先の戦闘も含めて12万人以上にまで達し、死者だけでも6万人以上にまで膨れ上がっていた。失った装備も多数であり、2つの航空団と2つの主力艦隊、20個近い師団までも失っている。


 一方の自衛隊側も死傷者408名、内死者73名という結果に終わった。バルツェル共和国軍の死傷者・死者数が膨大であるが故に少なく感じるが、それでも現代日本にとっては無視し得ない損害だ。現代国家というのは、戦争の死傷者には敏感なのだから。あるいは、近代の国家が鈍感すぎただけなのかもしれないが。









もう次の章やその前に挟む間章の構想は進めているので、早くバルツェル戦を終えてしまいたいです(笑)

なんだかんだ2年くらい、これやってますからねー。今思うと、更新速度の遅さが致命的ですね(苦笑)

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