第21話
2034.5.5
エルスタイン王国 中西部
森林部
02:00 現地時間
草木も眠る丑三つ時。哀れなことに眠ることすらできない男達が森林地帯の中を歩いていた。その歩みは大きな疲労を感じさせるほど覚束ないもので、それだけでただ事ではないことが伝わってくる。
「ちくしょう……ちくしょう……」
「なんでこんなことに……」
男達は誰かに、というわけでもなく呟く。その姿は幽鬼のようで、生気すら抜け落ちているように見える。
だが、彼らは歩みを止めない。何かに追われるかのように歩き続ける。
いや、実際に彼らは追われているのだ。
空気を叩くような音が聞こえ始める。
「ひぃ……! や、奴等だ……!」
「隠れろ! 伏せろ!」
「神よ……!」
慌ててその場に伏せたり、茂みの中に隠れたりする彼ら……バルツェル兵達。その姿は出征前の勇壮さからは想像もつかないほどに弱ったものであった。
彼らの表情も勇猛果敢な兵士のものではなく、追い立てられる獲物を思わせる恐怖と不安に彩られたものである。
彼らは恐れていた。この空気を叩く音の発生源を。空のハンターを。
「き、来やがった……!」
木々の葉の合間から巨大なプロペラを上に向けて回して飛ぶ奇妙な航空機が見えていた。バルツェル兵達には知る由もないが、これは自衛隊のUH-2JA 火力支援ヘリである。
暗闇の中、月明かりのおかげでUH-2JAの姿が朧気な影としてバルツェル兵達にも見える。だが、その視覚情報こそがバルツェル兵達により大きな恐怖を与えていた。影しか見えない死神。バルツェル兵達にはUH-2JAがそういったもののように感じられていた。
そして、バルツェル兵達が考えているよりもUH-2JAの目は良い。
上空を飛ぶUH-2JAがホバリングに移行。そして、バルツェル兵達がいる辺りに12.7㎜重機関銃とロケットポッドの洗礼を浴びせかけた。
突如として響き渡る銃声と爆発音。森の一角が燃え上がり、爆発と共にバルツェル兵が吹き飛ばされる。12.7㎜弾の嵐が伏せていたバルツェル兵達を容赦なく撃ち抜く。
「ぎゃああああ!?」
「な、なんで!? なんで!?」
「逃げ、ぐはぁ!?」
彼らが隠れたり伏せたりしたところで無駄であった。彼らは結局は人間であり、人間である以上、その身には体温がある。そして、その体温はUH-2JAが備える赤外線センサーが見事にキャッチした。
容赦のない攻撃でそこにいた小隊規模のバルツェル兵達……武器を捨てて逃げてきた者も多くいるので歩兵小隊とは言いがたい彼らは、僅かな間に殲滅された。生き残った者は数名程度であり、そんな彼らも重傷がほとんど。動けるのはほんの2、3名という有り様であった。
そんなことが森の至るところで行われ、バルツェル共和国軍侵攻軍……もはや軍の体裁すらも保てていない烏合の衆は徐々に数を減らしていった。航空自衛隊の戦闘機による爆撃も続行されており、バルツェル兵達は戦闘機の轟音とヘリのローター音、そして攻撃による爆発音に怯え、精神を磨り減らしながら退路を進んでいく。
自衛隊による攻撃は森を出た後の山地でも行われ、ろくに抵抗もできずに血だまりに伏すバルツェル兵の数だけが増えていく。
やがて山を越えた時には生き残りは4万人を切っていた。追撃だけで、さらに約15000人が死亡した計算になる。正確には途中で力尽きた負傷者もその数の中に入る……というより、過半数はそれなのだが、それでも恐ろしい数である。軍というのは今も昔も逃げている時が最も脆弱なのだ。
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2034.5.7
エルスタイン王国 西部
ウェルディス市 旧前線司令部 作戦室
08:44 現地時間
自衛隊に制圧されたバルツェル共和国軍前線司令部の土地と建物はそのまま自衛隊が使用していた。ウェルディス市の司令部近辺の市街地の掌握は既に済んでおり、捕虜は放棄されたウェルディス市の役所に放り込んでいる。
既に第1空挺団は第1ヘリコプター団の輸送ヘリや『オスプレイ』などを用いてウェルディス市に送り込まれて展開しており、エルスタイン王国における作戦は最終段階に移行しつつあった。
「ふむ……作戦は順調に進んでいますな」
「そのようです。ようやく我々の出番が来たのですし、思う存分暴れさせてもらいますよ」
第1特装団の団長である米倉宏 一等陸佐と第1空挺団副団長の末松辰巳 一等陸佐はそんな会話を作戦室で交わしていた。
第1特装団と第1空挺団という自衛隊最精鋭部隊の内の二つがこのウェルディス市に展開しているというのは、日本で俗に言うミリオタからすれば興奮するような状況である。
「我々には特科部隊はないので、そちらの空挺特科部隊には期待していますよ」
「もちろんです。我々の精強さを見せつけて差し上げます」
米倉 一佐に末松 一佐は力強く頷いた。第1空挺団は東シナ戦争後に規模を拡大し、4個普通科大隊と1個空挺特科大隊を擁する部隊になっていた。定員も多少だが増えている。ウェルディス市に降下したのは戦闘員がほとんどだが、それでも人数は約1800名にもなる。第1ヘリコプター団が保有する多数の輸送ヘリと『オスプレイ』で効率よく運んだからこそ、今の時点で既に戦闘態勢を整えているわけだ。
「空自のドローンからの情報では、敵はある程度散らばりながらもこのウェルディス市に近づいてきており、既に多くは山地を抜けてきています。最も近いのは25km先にまで迫っているようですな」
「よくもまぁ、2日間と少しの時間でここまで歩いてこれたものです」
「森を抜け、山を抜け……まぁ、森というには小さいですし、山と言っても丘みたいなものですからな。しかし、それでもかなりの人数が脱落し、野垂れ死んだ者も多いようです。推定で1万人を越えるとか」
「……追い込んだ我々が言うのもおかしな話ですが、哀れですな」
米倉 一佐に与えられた情報を聞き、末松 一佐は溜め息を吐くかのようにそう言った。
「敵の残存は約4万人。我々の数と比べると圧倒的です。まぁ、装備の多くを放棄しているので、数以外は脅威ではありませんが」
「それをここ、ウェルディス市の東の平野で撃滅するわけですね」
「はい。連中はまだウェルディス市の前線司令部が健在だと思い込んでおります。追撃に向かってきている外征団の連中と敵を挟撃することになります」
先行派遣部隊の2個外征団は現在、西進してきている。自動車化された彼らなら、ボロボロのバルツェル共和国軍よりも素早く森林部と山地を突破できる。一応、道路はあるのだ。追いつくのは容易であろう。
なお、敗残兵と化したバルツェル共和国軍は、上から狙われるのを避けるために道路を行くのは徹底的に避けていたようだ。まぁ、無駄な努力であったが。
「我々のすべきことは敵をウェルディス市の市街地に入れないように、最悪でも郊外で止めることです。あとは追いついてきた外征団が後ろから美味しくいただいていくことでしょう」
「ボロボロとはいえ4万。厳しい戦いになるでしょうな」
「ええ。ですから我々が選ばれた。なんとしてでもこの任務を遂行せねばなりません」
彼らは強い意思を持ってこの任務に臨んでいた。困難な任務に抜擢されたという誇りと、失敗できないという使命感。それが彼らの……第1特装団と第1空挺団の士気に繋がっている。
あの過酷な訓練はこの時のために。それが彼らの一致する思いであった。
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バルツェル共和国軍侵攻軍の残存である4万人のバルツェル兵は自衛隊の航空部隊に追われながらも森林と山地を突破し、どうにか平野部まで足を踏み入れていた。
この時、バルツェル兵は広範囲にバラバラに分散しており、連携も何もあったものではない状態であった。一応、ある程度小隊・中隊ごとには纏まっているが、完全に軍としての機能は失っていた。
怪我人は次々と倒れていき、それを気にかける余裕もバルツェル兵達にはなかった。
平野部に出てからも自衛隊航空部隊による攻撃は続いていた。頻度はかなり減ったものの、時折、戦闘機が飛来して爆弾を落としていくのだ。平野なので隠れるところもなく、狙われたら最後、為す術なく消し飛ぶしかない。不幸中の幸いか、部隊がバラバラになっているので被害はある程度抑えられてはいた。もちろん、狙ってやっていたわけではないが。
UH-2JA 火力支援ヘリの攻撃は既になかった。というのも、彼らは進軍する外征団の周囲を警戒・偵察していたのだ。可能性としては低いが、待ち伏せ攻撃を行おうとしているバルツェル部隊もあるかもしれないという危惧からであった。
逃げる4万人のバルツェル兵達は絶望感に包まれながらも、小さな希望を持っていた。味方の勢力圏まで逃げればさすがに敵も追ってこないだろうという希望だ。
実際は、残念ながら旧アーカイム皇国領のバルサ空軍基地が自衛隊戦闘機部隊による空爆を受けており、バルツェル共和国の勢力圏だからといって安全であるわけではない。しかし、彼らはそんな希望にすがる他なかったのだ。
「あと少し……ウェルディス市を越えればエルスタイン王国を抜ける」
バルツェル兵の一人が呟いた言葉。確かにウェルディス市は大規模な都市の割には西の国境に近い。とはいえ、人の足で国境を越えるのはかなり厳しいが。
それに食料も尽きかけており、一度ウェルディス市で略奪などで食料を得る必要があった。そのため、彼らはまず、一心不乱にウェルディス市に向かっていた。少なくともウェルディス市には敵はいないはずだ。バルツェル兵達は皆そう考えていた。
バルツェル兵達は順調にウェルディス市に近づいていく。自分達の何割が野垂れ死ぬかは分からないが、それでも少なくない数が生きて戻れるかもしれない。そんな思いを各人が胸に抱きかけていた時のことだった。
突如として、空気を切るような音が辺りに響き渡る。この音に似た音はバルツェル兵達も知っていた。こんなところで聞きたくもない音である。
「砲撃だーっ!」
誰かの叫び声。それが響くのが後か先か。一度に複数の箇所で爆発が起き、その音が辺りに響き渡った。
恐ろしいことにその砲撃は正確に過ぎた。初弾で全ての砲弾が効力を発揮していた。着弾地点にいたバルツェル兵は吹き飛び、身体が千切れ、絶命するか重傷を負って動けなくなるかの二択を強いられた。無論、その選択肢を選択するのはバルツェル兵自身ではなく運であるが。
「いったいどこからだ!?」
「くそ! 隠れる場所すらないぞ!」
「ウェルディス市はもう目の前なのに……!」
バルツェル兵達は自分達がどこから砲撃されているのか分かっていなかった。彼らは自分達の敵……自衛隊の恐ろしさに関して、一部しか知らない。彼らは敵の正面戦闘力の恐ろしさだけをノルマーク平野で心に刻み込まれた。だが、自衛隊を始めとする前世界の先進的な軍事組織の真の恐ろしさは、その機動力と展開力にある。
先回りして包囲する。必要な場所に必要な火力を必要な量、投射する。敵の指揮系統を麻痺させる。敵を分断し、各個撃破する。
正面戦闘も強いが、それ以上に高度な戦術を用いた作戦立案とそれを実行する高い能力。それが現代の軍事組織に求められるものだ。
バルツェル共和国軍侵攻軍は自分達が目指しているウェルディス市から砲撃を受けていた。砲撃を行っているのは第1空挺団隷下の空挺特科大隊である。彼らが装備する120㎜迫撃砲。射程10kmを超える、この強力な迫撃砲がバルツェル兵達を殺戮しているのだ。
隠れる場所すらない平野に留まるほどバルツェル兵達も間抜けではない。彼らは全力でウェルディス市に向かっていった。
バルツェル兵達は混乱の中、未だにウェルディス市から砲撃を受けているとは考えてもいなかった。そもそもウェルディス市に敵がいることすら想定していない。彼らはこの攻撃を追撃してきた敵部隊による攻撃だと勘違いしていたのだ。
まぁ、確かに二つの外征団の特科部隊は砲撃位置に着きつつあったが、まだ砲撃は行っていなかった。一方、装輪装甲車などに搭乗した普通科部隊や戦車部隊は徐々に迫ってきており、バルツェル兵達はそれにも気づいていなかった。もうあと30分もすれば、背中から撃たれることになる。
「おい、もしかして、ウェルディス市の方向から撃たれているのか!?」
砲撃を受け、次々と死体を量産されながらもウェルディス市に向かっている内にバルツェル兵の中にも、ウェルディス市に敵がいることに気づく者も現れだす。それもそうだろう。先ほどまでは混乱が生じて分かっていなかったが、ウェルディス市の方向から砲声が聞こえているのだから。
「回り込まれているだと!?」
「そんな……ふざけんなよ!」
絶望的な状況。しかし、それでも彼らは進むしかなかった。何故なら、後ろから恐ろしき追撃部隊が追ってきたからだ。外征団が誇る10式戦車甲型と24式装輪装甲車、そして普通科部隊を主として構成された追撃部隊だ。
さらに外征団の特科部隊も砲撃に参加し始め、鉄の嵐はさらに勢いを増す。いや、増すどころか数倍以上になったと言えるだろう。空挺特科大隊と外征団の特科部隊では規模と装備が違うのだ。
そして、ウェルディス市の外縁にどうにか近づけたバルツェル兵達に襲いかかる第1特装団と第1空挺団。
第1空挺団の隊員の正確無比な射撃によって次々と射殺され、反撃もできずに先頭を進んでいたバルツェル兵の中隊は全滅。
さらに、浮き足立ったバルツェル兵先頭集団の側面から機動力を持って、黒い外装を纏った異形の兵士達が蹂躙していく。彼ら特装科隊員の装備する20式小銃丙型の7.62㎜強装弾は、生身の人間の四肢に当たれば、そこから先が千切れ飛ぶほどの火力を秘めている。たとえ隠れていても多少の遮蔽物なら、それごとバルツェル兵を撃ち抜いてしまうのだ。
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「……こりゃあ酷いですね、小隊長」
「ああ。まさか武器すら捨ててる奴がいるとは。それもかなり多いときた」
戦闘中ではあったが、特装科部隊の小隊長である永瀬 三尉……和人とその部下である小谷 二士……純也は、こんな会話を交わしていた。もちろん、手を止めているわけではない。
敵部隊は既に外縁の市街地(もっとも、建物が疎らにしか存在せず、多くは農地だが)に達しており、簡易陣地を設置した空挺団と交戦している。簡易陣地は簡単なバリケードのようなものや土嚢などで遮蔽物を作っただけのものだが、オートセントリー機銃なども設置されており、相手が歩兵のみであるならば強固な陣地である。そこで足止めされている敵部隊を特装科部隊が横合いから攻撃している。
このようにして敵に出血を強いながら足止めし、敵の後ろから追いかけている2個外征団が敵を磨り潰し、そのまま合流するのが理想とする作戦だ。
しかしながら、相手の惨状を見ると自衛隊側は少々敵を過大評価していたのかもしれないという思いになりそうだった。
敵はかなりの強行軍でここまで至っており、その疲弊は深刻なレベルにまで達している。そんな中、道中で少しでも身を軽くしようと、捨てられるものは捨てており、武器すらも捨てた兵士が数多くいた。
その結果、抵抗もできないままに攻撃を受けて死体を積み重ねていくというバルツェル共和国軍の醜態がこの場に晒されているのだ。武器を持つ者は反撃するが、それでもすぐに射殺される。味方の死体から武器を拾って戦う者も多いが、すぐに前の持ち主と同じ運命を辿っていく。
「……いい気分はしないな」
和人はポツリと呟いた。
敵は降伏していない。いや、正確にはできていないというのが現実をよく表した表現だ。個人で降伏しようとする者はいる。だが、そんな兵士の真横にいる兵士は平然と撃ってくるのだ。つまり、敵の意思統一ができていないということ。さすがにその状態で降伏を認めることはできない。
しかしながら、いつまでも戦うわけにもいかない。皆殺しをしたいわけではないのだ。
「和人、無事か?」
「鉄平か」
別の小隊の小隊長であり、和人の友人でもある結城 三尉……鉄平が和人の側にまで来ていた。
「そっちの担当していた敵部隊は?」
「十数名残して、あとは全滅。残った奴らは降伏した。最初は中隊規模だったのにな……」
「……敵部隊は隊長がとっくに死んでるんだな」
「そうみたいだな。んで、指揮権の後継ぎができてないと……」
「……致命的だな。実戦を想定した訓練を積んでいないのか、敵は?」
和人がそう思わざるを得ないほどに敵の動きはお粗末なものであった。何らかの理由で指揮官が指揮を取れなくなる事態は簡単に想像できる。何故、それに備えていないのか。それが不思議でならなかった。
もっとも、その答えは簡単である。敵部隊は一応、部隊として纏まってはいるものの、それは正式な部隊ではないからだ。つまり、別々の部隊の生き残りが勝手に集まって集団を作っただけであり、そこにシステム化された指揮系統などなかったわけである。全員、自分が生き残ることが最優先であり、そこまで気を回せていなかったのだ。
まぁ、一部はきちんと統制が取れており、そのおかげか降伏することに成功した幸運なバルツェル共和国軍部隊もいるにはいるが。
「……ああ、こっちも終わったな」
鉄平の率いる小隊が加わったからか、想定していたよりも早く担当していた敵部隊は壊滅した。結局、鉄平の小隊が担当していた敵部隊と同じように、わずか十数名を残して他は戦死か重傷という状態であった。
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近づく前に砲撃で大きく削られ、後ろからは戦車を含んだ強力な軍勢に追いかけ回され、仮にウェルディス市の外縁まで辿り着いても自衛隊の精鋭部隊が素早く撃ち殺す。
装備の多くを放棄し、空から襲撃を受けながらも森を抜け山を越え、ボロボロになりながらやっとの思いで辿り着いた先での地獄。さすがにバルツェル兵達も長い時間耐えられるわけではなかった。
やがて、バルツェル兵達は自衛隊に対して次々と降伏を申し出てきた。白い布を振り、攻撃されないことを祈る兵士達が次々と現れたのだ。白い布を用意できない者達は、白い布を振っている兵士の近くに立って、両手を上げるなどして降伏の意を示す。負傷者の中には、自分の血のついた包帯を振り回している者すらいた。
それが瞬く間に広がり、やがて生き残った全バルツェル兵が降伏した。降伏ができた理由は、戦意を持つバルツェル兵が死ぬか戦意喪失したからであった。纏まって降伏の意思を見せてくれれば降伏の受け入れはできるのだが、さすがに戦闘中に個々人で降伏の意思を見せられても対応できかねる。
この『ノルマーク平野の蹂躙』で死んだバルツェル兵の数は4万人近くとも言われており、8個師団が消滅した。さらに1個航空団の事実上の壊滅と、主力艦隊を含む派遣艦隊の壊滅。
この被害はバルツェル共和国軍にとって無視し得ない大損害であり、そしてそれは本国で大きな混乱をもたらすのだった。




