第15話
普段はスマホで書いているのですが、機種変して使い勝手がけっこう変わってしまったので、おかしなところがないか心配です……。
2034.5.4
バルツェル共和国 リディーリア
軍令部 会議室
11:04 現地時間
バルツェル共和国の本土。バルツェル共和国の政治中枢機能を持つ首都リディーリア市にある軍令部。ここはバルツェル共和国軍の頭脳とも言える場所だ。その会議室では、オルフィス国防大臣の他、リゲル情報少将、エルダミフ陸軍総司令官、ルードック海軍総司令官、ジャミル空軍総司令官といったバルツェル共和国軍の重鎮達が会議を行っていた。
とはいえ、会議とは言っても現時点での戦果報告会のようなものである。そこまで緊張感のある会議でもなかった。彼らが持ち合わせている現状の戦況情報は概ね事前の想定通りだったからだ。
バルツェル共和国陸軍、空軍は敵を正面から撃破して前進中。海軍は未だに接敵せず。それがバルツェル共和国軍軍令部が認識している範囲の戦況である。
「エルスタイン王国軍は事前の想定よりも強固な防衛線を築いており、我が陸軍に大きな被害が発生しました。戦況に大きな影響はない範囲ではありますが、蛮族ごときにしてやられた侵攻軍指揮官には厳罰を科すこととします」
エルダミフ陸軍総司令官はあまりよろしい顔色とは言えなかった。その理由は彼の報告の中にある。
エルスタイン王国軍の主力と衝突したバルツェル共和国軍。技術・練度・戦術の全てでバルツェル共和国軍が凌駕していると考えられており、勝利は確実なものと見られていた。
そして実際、勝利することはできた。しかし、ここで問題が発生する。バルツェル共和国軍は事前の想定を遥かに超える被害を受けたのだ。
死傷者数4400名。さらにその内の死者数は2000名近くにまで達していた。エルダミフ陸軍総司令官がこの被害報告を受けた時、思わず報告を上げた士官に聞き返したほどに驚愕に値する被害だった。
これほどまでの被害を受けた理由は敵砲兵の排除が不完全であったことだ。それがエルダミフ陸軍総司令官には腹立たしかった。
「確かに侵攻軍指揮官の責任も重いでしょう。ですが、今回はそれよりも空軍の責任が重いと言わざるを得ません。空軍の偵察と砲撃陣地への空爆の不徹底が今回の事態を引き起こしたのだと陸軍では認識しております」
エルダミフ陸軍総司令官はそう結論づけた。本来、砲撃陣地の無力化は空軍の任務であったはずなのだ。敵の砲撃陣地が生き残っており、それによって被害を受けたのだから、責任は空軍が負うべきだとエルダミフ陸軍総司令官、ひいては陸軍全体がそう考えていた。
だが、当然ここで空軍からの反論が入る。
「そもそも航空偵察は効果が限定的になりがちだということは知られているはずです。敵の偽装は蛮族ながらも巧妙だったと言わざるを得ません。偵察部隊を一切出さなかった陸軍にも非はあるかと」
「貴様……! 敵防衛線のさらに後方だぞ? どうやって偵察しろと言うのかね!?」
「小規模な偵察部隊なら迂回して偵察することは可能だったはずだ! その前にそもそも、どうして丘陵地帯や森林地帯の突破にあれほど時間がかかったのか説明してほしいところだ! たかが蛮族の妨害に遭ったくらいで遅れすぎやしないかね!? あの時間がなければ、敵も防衛線をあそこまで固める余裕はなかったはずだが!?」
「敵が道を寸断したりするからだ! 我々陸軍は地の上に立っておるのだ! 道がなければ行動に支障が出るのは当然だろう! ハエのように飛び回る貴様ら空軍とは違うのだよ!」
見苦しい責任の押しつけあい。しかしながら、お互いに面子がある以上、引けぬ争いなのである。面子というのは、一般人が思っている以上に組織にとっては重要なものである。
「もう良い! 仲間内での争いはそこまでだ!」
ある意味では伝統行事であるこの光景に嫌気が差しているのか、オルフィス国防大臣はそう怒鳴って場を鎮める。エルダミフ陸軍総司令官もジャミル空軍総司令官も、とりあえずは引っ込む。まだ睨み合っているが。
「海軍はどうかね?」
「海軍は大陸南部海域に進入を開始しましたが、未だ敵艦隊との交戦の報告はありません。敵は怖じ気づいているのか、港から出て我々と戦おうという気概はないようです」
「よろしい……。確かに我々は想定を超える事態に遭遇している。だが、偉大なる祖国の力があれば必ず打破し得ると私は信じている。各軍の奮闘を私は期待している」
オルフィス国防大臣がそこまで言ったところで会議室のドアが荒々しく開けられた。
「何事だ!? 会議中だぞ!?」
リゲル情報少将が会議室に乱入してきた無礼者にそう怒鳴る。
「申し訳ございません! ですが、緊急事態です!」
入ってきたのは軍令部の士官だ。所属は情報局。
「……何が起こったのかね? 手短に報告を済ませたまえ。我々も暇ではないのだからな」
オルフィス国防大臣の横柄な態度。しかし、それは報告の内容を聞いてすぐさま崩れ去った。
「ぜ、前線の空軍部隊が壊滅的打撃を受けました! 敵航空部隊の攻撃によって、バルサ空軍基地は壊滅。第3航空団所属の戦闘機部隊は全滅いたしました! 現在、陸軍の補給線や通信中継所などが敵の空爆を受けており、兵站と指揮能力に深刻な悪影響を及ぼす恐れが大きいとのこと!」
「何だと!?」
オルフィス国防大臣の表情は一変。真っ青のようだが、真っ赤ともとれる絶妙な顔色となった。怒りと焦りが混ざりあった複雑怪奇な顔である。
「空軍は何をしておったのだ!? 蛮族どもに出し抜かれおって!」
エルダミフ陸軍総司令官は憤慨する。一方のジャミル空軍総司令官は狼狽していた。
「そ、そんなバカな……! 蛮族の旧式機ごときに我が精強なる空軍が負けるはずがない! 何かの間違いだろう!?」
「……お言葉ですが、司令官閣下。前線の混乱具合から察するに事実であろうと推察いたします。さらに未確認情報ではありますが……攻撃してきているのはジェット戦闘機であるとの報告も……」
「なに……!?」
その報告に会議室全体がざわめく。劣等文明が持つはずがないジェット戦闘機が前線でバルツェル共和国軍を攻撃してきている。その事実に愕然とするしかない。こんなことは信じられないが、実際に大きな損害を出している以上、信じざるを得ない。
そんな中、リゲル情報少将は他の者に輪をかけて愕然としていた。
(まさか……あの報告は本当だったというのか……!?)
情報局ではとある1つの報告が上がってきたことがある。敵国やその戦力の情報について、一部、我々の認識が甘すぎるという内容の報告だ。上がりはしてきたものの、ほとんどバカにされてまともに議論すらされなかった報告。
(報告者は確か……ヨハネス・クーホルンだったか)
ヨハネス・クーホルン情報少佐。情報局の部署の内、対外情報部植民地課に所属する情報士官だ。植民地課にはいくらかの諜報グループが存在するのだが、その内の1つのトップである。
彼は情報少佐まで上り詰めているが、これ以上の出世は危ぶまれている。というのも、彼の上げる報告は上層部に受けが悪い。慎重論に過ぎるという評価や臆病者という評価まで彼は受けているが、それでもそのスタイルを変えることはない。それが出世が危ぶまれている理由だ。
(報告内容は……)
今回の報告内容も慎重論に過ぎると上層部に判断されていた。ヨハネス・クーホルン情報少佐の諜報グループはバルツェル人のエージェントの他、現地民を金で雇って使っている。
彼の諜報グループではとある国の情報の集まりが極端に悪いことを問題視していた。その国の名は日本国。彼の国について分かったことは、少なくともエルスタイン王国よりも技術力が高く、工業力があること。それと経済力も高いという報告もあった。
しかしながら、実際にどれだけの軍事力や技術力を保有しているのか、具体的な情報がほとんど出てこなかったのだ。というよりも、現地民自体が日本のことをよく知らなかった。占領したエルスタイン王国西部では日本のことを憎んでいる者も多かったが、肝心の具体的な情報についてはほとんど知らなかった。
ただ、現地に流通していた日本製品を見る機会はあったそうで、バルツェル人のエージェントがそれについて報告を上げてきた。曰く、下手をすれば我が国よりも技術力は上かもしれない、と。
そういったことを馬鹿正直に報告してきたクーホルン情報少佐。上層部は誰も彼の報告など信用しなかった。かくいうリゲル情報少将もその口だ。
バルツェル共和国を超える技術を保有する国家であるのなら、その国はもっと大々的に動けるはずなのだ。それをしないということは、そういうことなのだろう。それがリゲル情報少将の中での結論だった。
平時なら積極的に劣等国を武力で支配下に置くことをしない国家もあるかもしれないが、異世界転移という危機的状況下で自らその選択肢を捨てることはリゲル情報少将には信じられなかった。
(……一度、彼に実際に会って話を聞いた方が良いのかもしれん)
リゲル情報少将はこの期においてもなお、クーホルン情報少佐を蔑ろにするほど愚かでもなかった。彼とて無能ではないのだ。さりとて有能でもないと日本では評価されるのだろうが。まぁ、保守的な……それも悪い意味で保守的なバルツェル共和国軍上層部の中ではマシな方である。
この報告を聞いて皆、混乱していたが、オルフィス国防大臣はもはや呆然としていた。彼には一度、これが予期されるようなことがあった。
以前の議会でのこと。軍事計画の概要を議会で説明した際、リーリア・レイリス議員に口を挟まれたのだ。あの時は面子を潰されたのもあって、怒り心頭になって彼女の意見などほとんど考慮しなかったが、今となっては彼女の意見は重要参考案件であったことが分かる。
(あの小娘……何を知っておるのだ……!?)
この日、軍令部は大騒ぎとなった。まさかの事態に大混乱を引き起こしたのだ。……もっとも、この時点ではまだ良かったのかもしれない。後日の軍令部では連日、お通夜のような雰囲気が続いていたことを考えれば……。
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同日
エルスタイン王国南部海域 海中
『ルーベンス』艦橋
13:07 現地時間
「おかしいな……」
バルツェル共和国海軍所属の潜水艦『ルーベンス』の艦長はこの現状を怪しむ。
「何が……でありますか?」
艦長の考えていることが読み取れないのか、副官がそう訊ねた。
「我々が軍用船舶はおろか、民間船舶にすら遭遇しないことだ」
「……確かにおかしいですな。そろそろ1つや2つは遭遇していないとおかしいはず……」
副官は艦長の考えを知り、そして同意した。バルツェル共和国海軍潜水艦部隊の任務は大陸南部海域における通商破壊である。しかしながら、未だに船との遭遇が皆無なのである。
「他の艦も同じなのでしょうか?」
「分からん。だが、雲行きが怪しくなってきたのは事実だな」
彼らには、現在空軍が壊滅的打撃を受けていることや陸軍の後方支援部隊が攻撃を受けていることなど知らされていない。それを知れば今自分が置かれている状況にさらなる危機感を募らせるはずだろうが……今は警戒するに留まっている。
まぁ、これでも警戒するだけ優秀だろう。バルツェル共和国軍はこの世界に来てからは全体的に相手を見下す傾向にある。実際、自分達よりも劣る装備や練度である相手ばかりだった。その傾向が徐々に強まっているのも仕方のないことかもしれない。
だが、潜水艦乗りは警戒心が強い。ほとんど音を頼りに動かねばならず、視覚を使えるのは潜望鏡のみという環境下では否応にも警戒心は強くなる。
そんな時だった。
微かに鳴り響く、何かを打つような音。
そして、ソナー要員が悲鳴じみた声を上げる。
「こ、後方よりソナー音!!」
「言われなくとも分かっている!」
艦長はそう言って頭を働かせる。友軍の潜水艦と遭遇することは、今の作戦上有り得ない。艦ごとに担当海域を決めて、そこで通商破壊活動を行っているのだから。交代もなくはないのだが、それは何らかの緊急事態や戦争が長引いてしまったりしてしまった場合のみの話だ。そもそも、その前に定期的に行っている通信でその旨の指令が下るはずだ。
となれば、ソナーを打ってきた相手は敵だ。
「急速潜行!」
「き、急速潜行!」
艦長の命令を慌てて復唱する副官。バラストタンクに注水して、潜水艦『ルーベンス』は深度を下げていく。
だが、再びソナー音が響く。今度はより大きく。
「ソナー音確認! 近づいてくる!? 速いぞ!?」
また響く。さらに大きく。
「またソナー音! 追ってきてる!?」
ソナー要員の悲鳴。それを尻目にまた響く。もっともっと大きく。
「こ、これは……魚雷の推進音……なのか?」
「魚雷だと!? 魚雷がアクティブソナーを打っているのか!?」
「そ、そうとしか思えません!」
「そんなバカな……!」
そして響くソナー音。もうすぐ側だ。魚雷の推進音すら聞こえてくるような気がした。
そして爆発音。艦内の灯りが非常灯の真っ赤な光に変わる。あらゆるところから海水が侵入してくる。艦の機関音が途絶える。
「ああ、くそ……! ここまでか……!」
それが艦長の最期の言葉となった。沈降していく潜水艦『ルーベンス』は海水をその身に抱き入れながら、乗員を溺死させていく。そして、最後にはグシャリという擬音語が似合うほどに水圧で潰れてしまう。
潜水艦『ルーベンス』の圧潰音という名の悲鳴。それを尻目に先程まで『ルーベンス』がいた場所を横切る別の潜水艦。『ルーベンス』よりも遥かに静かに動くその潜水艦は、まるで深海の死神のように大陸南部海域を航行するのだった。
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同日
エルスタイン王国南部海域 海上
『しょうほう』 艦橋
13:09 現地時間
「司令、第1潜水隊群から報告。『そうりゅう』が敵潜水艦を撃沈しました」
「了解。……これで3隻目か。付近の潜水艦はこれで最後か」
部下の報告にそう呟く第1護衛隊群司令官の井上 海将補。
「そうですな。まだ、この先の海域にもいるかもしれないので油断はできませんが」
そう言うのは幕僚の白瀬 一佐。
「しかし……『そうりゅう』か。随分と長い間、扱き使われとるな」
苦笑混じりに言う井上 海将補。
そうりゅう型潜水艦のネームシップである『そうりゅう』の就役は2009年。実に25年間も使われている。
まぁ、諸外国では特別不思議な艦齢ではないが、日本では異なる。日本は毎年1隻を建造することと定数の関係上、諸外国では考えられないほどに1隻の潜水艦の運用期間は短い。それに非常に高い練度も合わさって、海上自衛隊の潜水艦部隊は世界最高峰の能力を持つと言われてきたのだ。そんな国が何故25年間も潜水艦を運用しているのか。
それは、海上自衛隊の規模拡大によるところが大きい。海上自衛隊は段階的に潜水艦定数を増やしてきたのだ。16隻から22隻。さらに22隻から26隻と。
さらに攻撃型原子力潜水艦の保有も海上自衛隊は目指しており、まだ就役こそしていないものの、2隻は既に進水していたりする。この原子力潜水艦のせいでも通常型潜水艦の取得が遅れているため、『そうりゅう』の退役はまだ先である。……それよりも、未だに残っている おやしお型潜水艦を退役させるのが先であろう。
ここでも急速な規模拡大による歪みが海上自衛隊には存在していた。戦力不足や予算不足に比べると贅沢な悩みではあるのだろうが。
閑話休題。
「歴戦の潜水艦ですね。東シナ戦争の時も大活躍しましたし」
『そうりゅう』は日本国民の間では英雄的潜水艦である。東シナ戦争時に、誘き寄せた人民海軍の空母を撃沈したのは『そうりゅう』なのだ。
「今回も活躍してくれている。……記念艦としての余生も見込めるな」
「そうかもしれませんね」
1隻の潜水艦としてはなかなかの功績を残している。十分有り得る未来だ。まぁ、他所の国には見せられない箇所を全て撤去してから、になるだろうが。
「同じ潜水艦繋がりですが……原潜の方はいつ頃就役となるのでしょうか」
「ああ、『やまと』と『むさし』か」
海上自衛隊が取得を目指している攻撃型原子力潜水艦。ネームシップは『やまと』。かつての世界最大クラスの戦艦の名前を取っている。それほどまでにこの原潜に対する自衛隊の意気込みは強いと言わざるを得ない。
この『やまと』は日本にとっては挑戦的なものである。防衛には通常型潜水艦で十分な中で、原子力潜水艦を保有する。それもこの潜水艦は敵地攻撃能力を持つためにトマホークミサイルを搭載している。つまり外征能力の強化に他ならない。
とはいえ、新型イージス艦や ながと型多任務護衛艦にもトマホークミサイルを搭載しているし、あたご型もトマホークミサイル運用能力を獲得済みだ。しょうほう型航空母艦も取得していることから敵地攻撃能力では今さらな気もする。
だが、挑戦的と評する理由は他にもある。それは、この やまと型原子力潜水艦が日本初の原子力の軍事利用の例ということだ。世界唯一の被爆国にして、福島原発の事故も経験している。国防の強化には賛成多数の世論でも、原子力の軍事利用には反対する者も多い。
それでも政府や防衛省は強行した。これは原子力潜水艦を保有するという事実だけが重要なのではなく、原子力の軍事利用の前例を作るということも重要だったのだ。
政府や防衛省はこの先を見据えている。……核兵器の保有という未来を。自国で自国を守りきるためには核兵器が必要というのは軍事に精通する者なら常識だ。
これまで日本はアメリカに防衛を依存してきた。そんな中、アメリカは日本に防衛の自立を促してきたのだ。さすがに核の傘には入れてくれていたが、だからといって安心できたものではない。
さらに異世界転移によって、その核の傘すら消え去った。核兵器を保有する勢力は未だに確認されていないが、この先もいないとは限らない。それ故、異世界転移してからしばらくして、防衛省は原潜用の原子炉を隠れ蓑にして極秘裏に核兵器の研究を進めていたりする。
と、まぁ、そのような理由があって、自衛隊上層部にとってはこの原子力潜水艦はなんとしても取得しておきたい兵器であった。
「『やまと』の就役は今年の夏、『むさし』は秋になるという噂は聞いたことがあるが……」
「相変わらず、司令は耳が早いですね」
「まぁ、この階級になるといろんなところから'噂話'が聞こえてくるのでな」
肩を竦める井上 海将補。そこに報告が入る。
「司令、『レコン2』がバルツェル共和国海軍らしき艦隊を捕捉しました。方位267、距離418、艦影24、艦種は特定中です」
『しょうほう』所属のJRQ-1 無人偵察機が敵艦隊を発見したという報告だ。
「よし、ようやく見つけたか」
ニヤリと井上 海将補は笑みを浮かべる。獲物を見つけた時の猛獣のような笑みだった。
(こういうところが近寄りがたいんだけどな……)
側に立つ白瀬 一佐は井上 海将補の笑みを見てそう思う。井上 海将補本人はフレンドリーなつもりだろうが、こういうところで失敗している。
「せっかくこのような遠いところまでお越し頂いたんだ、盛大に歓迎しようじゃないか」
「……我々も連中と同じくらい遠いところから来てますがね」
井上 海将補の威勢の良い言葉に、白瀬 一佐は何とも言えない表情で微妙なツッコミを入れていた。
その一方で、海上自衛隊に殺意を向けられているバルツェル共和国艦隊。彼らは自分達に迫る脅威を未だに認識していなかった。
さてさて、潜水艦定数の増加やら原潜やら、いろいろとやらかしてますが、予算は大丈夫なのだろうか……。一応、GDP増加と防衛費GDP比1.8%という設定ですので……。想定的には12兆いかないくらいかな……。