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ねこは続くよ~白猫ゆきくん  作者: さむらい
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猫の耳に念仏?

我が家は長男家では無いので代々からの仏壇はありませんでしたが、それでも祖父母の写真を飾って食べ物飲み物をお供えする位の事はしていました。

今、仏間には兄の仏壇が置かれています。

ここに花を飾り毎日お供えをしては線香を炊いて、そして出先で何か兄が好きだった物を見つければ買って帰ってまたお供えして…。

新しく作った墓にも毎週末通っていたでしょうか?一年経つのを区切りに盆暮れ等ごく当たり前な頻度のお参りにしましたが、この頃は本当に会話しに行くかの様にしていました。

家族を失ってポッカリと空いた心の穴はそうそう埋まるものではありません。これは言わないだけで多くの人が抱えている想いなんですね。


時が経つのは早いもので気が付けばお盆が間近、あと数日もするとお坊さんが法要に来てくれます。

当然ながら我が家では初めての事なので、仏具屋さんで教えて貰って祭壇などの支度を始めました。

しかしこの支度、正直に言えばかなり面倒臭い。

だいたい幼い頃に祖父の家で見た法要には祭壇なんて無かったのに…そういえばその時に何故かお経が可笑しくてクスクス笑って家から締め出された覚えが(なんて罰当たりな…)。


不満を言っても何も始まらないので、とりあえず買い出しから。いざ商店街に出てみれば、あちこちでお盆用品のセットが売られていました。

買いながら「便利な世の中だなぁ」等と思いつつ帰宅し、仏壇の前面に装飾します。

そして提灯や祭壇の支度をしようと箱を取り出していると足元に白い影…ゆきです。

「来ちゃったかぁ〜まぁ仕方無い、気を付けて作業しよう。」


祭壇は所謂段飾りで、棚板の左右に枠状の木をはめ込んで裏に申し訳程度の補強板を留めて完成する、とても簡単な物でした。

ゆきは組み立て途中の祭壇に興味津々で、辺りをウロウロしては木の臭いをクンクン嗅いだり足元に来ては無言で何かを訴えるので、こちらとしてはとても邪魔です。

それでも何とか祭壇を完成させて仏壇の前に置くと、それを見たゆきは何かを覚った様な顔をしてスルスルッと祭壇の下に潜り込んで行きました。

「とりあえず大人しくしてくれれば良いか。」

祭壇横に提灯の用意をして脇からそっと覗くと、ゆきは満足そうに箱座りしていました。

どうやら祭壇の下がとても気に入ったらしい。


幸運にも?提灯には全く興味を示さなかったゆき、もしその気になればあんな紙と木で出来ている物などひとたまりもありません。

その他、祭壇周りには猫に害のある物は無さそうで特に手を出したりはしませんでしたが、お盆に付き物のあの茄子や胡瓜はちよっぴり気になるらしい?…頼むから食べたりしないでよ。


いよいよ法要が始まり、我が家は順路の関係から一番最初になりました。

お坊さんが朝一番に来てくれて、眠い目を擦りながら迎えるとすぐ読経が始まります。

元々そう広くはない仏間に祭壇まであるので、私は隅っこの階段に腰掛けて見ていました。

すると二階の方からトンットンットンッ…ゆきの足音?

全く耳の聴こえないゆきですが、その代わりに目や鼻は敏感らしく近くで何かが動いた時の床の振動も感じている様でした。

すぐ近くまでやって来てうにゃあと一声鳴いたのは、まるで「皆で何してるの?」と言っている様でもあり。


私はゆきを抱えて、再び読経を聴きます。意外と大人しくしているゆきは…もしかして猫の耳に念仏?いや、そもそも聴こえませんか。

それでも万が一ゆきを離してしまって何かの拍子に外へ飛び出してしまったり、お坊さんに噛み付いてしまったら本当に取り返しがつきません。

「噛まないまでも、袈裟にゆきの白い毛が沢山着いたら目立つだろうなぁ…こりゃ大迷惑だな。」

法要の最中だというのにそんな事ばかり考えていたら、供養という物が全く解らなくなってしまいました。

やっぱりこれは、故人よりか残された家族の為の物なんでしょうね。

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