縛られるもの
設備関係は家業でも行っていたので私達もリフォーム作業に入り、家はどんどん形になって行きます。
正直に言えば私はまた事務所での生活に戻りたかったのだけれど、やはり許して貰えなかったので自室になる部屋に少し注文を付けました。
実はこの自宅の設計図では、私の居場所が無さそうだったからです。
父と設計士とで考えたこの家〜と思ったのですが、後々聴いた話では設計士の提示を父が無条件に承認したものでしたが〜は、私から見てもおかしい物でした。
この事で設計士が私の事を我儘だと陰口を叩いていたそうですが、譲歩出来ない事柄はその時にしっかり片付けておかなくては後で呪縛の如く付き纏い後悔するだけです。
それからも幾つかのトラブルを経ながら自宅のリフォームは完了し、今度は仮住まいからの引っ越しです。
日用品はよく使う場所に、その他の物は押入れ等に箱のまま詰め込んで、とりあえず暮らせる様にしなくてはなりません。
勿論チャコとゆきも一緒に暮らす訳ですが、心配なのは頻繁に住まいが変わっても大丈夫なのかという事でした。
「犬は人に付き、猫は家に付く」という言葉も有りますし、仮住まいは楽しんでいましたがすっかり様変わりしたこの自宅にも同様に馴染んでくれるのかは判りません。
まずはチャコを元居た部屋に戻してみます。
以前とはまるで違う内装になっていましたが、確認している感じであちこちの臭いをクンクン嗅ぐとすぐに落ち着いた様子です。
「自分の居場所に再び戻って来た」、そんな感じがこちらにも伝わって来ます。
ゆきは私と同じ新設した二階での生活なので、全く新しい部屋となります。
どうかなぁ?と思いつつ室内に放すと「なにこれ?なにこれ?」と言わんばかりに臭いを嗅ぎながら辺りをうろうろし始めました。
チャコ以上にあちこち連れ回されているゆきは環境への適応力が高かったのかも知れません。そして人や家がどうこうというよりも「人間は変なところに拘ってしまいがち」という事なのかも知れません。
部屋の中を自由に歩き回るゆき!これまでずっと繋ぎっぱなしだったリードは外されたままです。
以前の家ではちょっとした隙に外へ飛び出してしまう危険が高く、やろうと思えばチャコの居る部屋へも入れたでしょう。
それを未然に防ぐ為のリードでしたが、ここではもう要りません。
これでゆきは我が家に来て初めてリードでの呪縛が解かれ、猫らしく家の中を自由に走り回ったり遊ぶ事が出来る様になりました。
それにしても人に付くとか家に付くというのは、人間が勝手にそうイメージしたというだけなのかも知れませんね。




