やっぱ、チートいらんがな
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修正しました。
俺です。俺ですよ。俺俺。
すいません。
前世でのありきたりな詐欺みたいになってしまいましたね。けど、この世界では実に画期的な新手の詐欺なんでしょうね。これで、一攫千金狙えそうです。まあ、電話なんて無いんですけどね。
俺が村から出て四年が過ぎました。
その間、俺色々ありました。ええ、ありましたとも。村がぬるげーなだけでしたね。
あ、たかが四年と思ってるそこのあなた。人生なめてますよ。自分もなめてましたから。異世界、マジぱねえっす。山あり、谷ありで一年一年が実に濃厚でした。気持ち悪くて吐きそうです。
四年を過ごして、俺は一つの結論に達しました。もう、ある種の悟りですね。
それは、
やっぱ、チートいらねえわ。
だってこの能力のせいでかなりの苦労をしましたから。
そう、何を隠そう、実は俺、
見た目性別不明になりました。
はあ? 何ほざいてんの? 頭大丈夫? と思ってるそこのあなた。大丈夫です。とち狂ってません。至って正常ですから俺。
戸惑っているだろうあなたに詳しく説明すると、俺が持つチート、回復魔法はどうやら、再生能力というか、自然治癒能力を極端に底上げする能力のようで、あまり使うと体に良くないようなんです。つまり、副作用があります。
最初の年は、気付かなかったんですけど、三年目にして、如実に体に異常が現れてきました。どうやら、回復魔法の使いすぎにより、ホルモンバランスが狂ってしまったようです。
結果的に俺の外見が中性的になってきました。もう、女性物の服を着れば、誰も俺が男なんて分からないでしょう。かろうじて、男物の服を着れば、男と断定されはしますが。現在は落ち着いてきているので、さすがに、性転換はしないと思いますが、不安でしようがありません。マジ、最悪です。
おい、神様、もし会ったら、握り潰した後に引き千切るからな。
えっ、何を? それ言わせます?
因みに女神様だった場合は、ウフフフフフフ!
そういえば、最近、道を歩いていると、複数の視線を感じます。やけにねっとりしてるんですよね、これが。
ハーレム作る気さらさら無いけど、違うハーレム出来そうな今日この頃です。
そんなこんなで、俺は半年前からある街の喫茶店で働いて、日々、細々と暮らしています。
今日も俺は忙しくも無く、暇でも無く働いています。
マスターのガリバーさんはとても優しい方です。鍛え上げられた筋肉は逞しく黒光りし、いつもパッツンパッツンの服を着てカウンターに立ってコーヒーを淹れています。彼のコーヒーは一品で、いつも固定のファンがいらして、マスターの燃え上がるような輝く上腕二頭筋を肴に安らかな一時を過ごしています。
因みに俺はコーヒーが嫌いなんで飲んだ事はありません。だって苦いんだもん。
マスターはいつも、「俺の事はガリと呼べ!」と声高らかに言ってくるのですが、無理です。どう見てもゴリです。
でも、その事を口にしてはいけない。口にしたら最後、イヤアアアアアア! になるので、怖くて絶対しません。前に一人のお客さんが、言ってモザイクがかかる場面になりましたから。
ゴリ、じゃねえや、マスターは俺が仕事で困っている時、いつも丁寧に優しい手つきで手取り足取り教えてくれます。失敗した時も柔らかな手つきで手取り足取り教えてくれます。ん? 俺何か変な事言いました? 気のせいですよ。
いつも通り、働いていた今日。ある団体さんが入店してきました。
男一人。女三人のお客さん達。全員、美形です。リア充か。ハーレムか。勿論、羨ましくありません。
他の店員が注文を聞いて彼らの所に料理なり、飲み物なりを届けるだけなのですが、ちょっとした事態になりました。
この団体さんがうるさいんです。
この喫茶店は小さいから周りのお客さんに迷惑になる事がわからんのか。ここは薔薇色の青春を謳歌する場所じゃねえんだよ。マスターの筋肉を見に来る所なんだよ。
神様、マジでこのチートいらん。リア充共をリアルで爆発させられるような能力にしてくれりゃあ良かったのによ。ざけんな。
ですが過去は変えられないので、しょうがなく甘んじるとしましょう。
だが、しかし! 俺にはチートを使わなくてもリア充共を黙らせる方法があるのです。
そして、他の店員から俺にバトンタッチ。つまり出番というわけです。
俺は皿を盆の上に乗せると彼らの席の奥に座っているお客さんに換えの皿を渡しに行くふりをして丸テーブルに座る団体さんに近付きます。
狙うはハーレム集団のボス猿であろう男の背後。奴の口を止めれば、こちらの勝利です。
他の常連客の皆様も俺の動向を横目で追います。
そして、
「あっ、手が!」
俺はわざと皿を落としました。
そう、これはこの喫茶店唯一のイベントであり、俺の半年間の修行の成果。
名付けて秘技壁ドンならぬ、皿パリーン。
受けるがいい! リア充共!
皿は地面に落ちていきます。
皿が割れても俺はマスターの優しい指導を受けるだけなので、痛くも痒くもありません。犠牲になるのは皿だけ。さようなら皿。お前の事は忘れない。五分だけね。
そして、皿が地面に落ちる瞬間、
「おっと」
パシッと男が皿を空中でキャッチしました。
な 、 何 だ と ! ?
『何いいいいィィィィィィ!!』
常連客の方々も立ち上がり、驚きの声を上げました。ちょっと、今あんたらが一番うるせんだよ。黙れ。
「君、落としたよ。はいこれ」
男は清々しい笑顔で俺に皿を渡します。
お帰り皿。生きてると信じていたよ。
「すみません。ありがとうございました」
俺は奴に礼を言って内心舌打ちしていました。
落とした皿の角度は受け止めようとしてきた相手の手を弾く絶妙な角度だったはずだ。そして、受け止める事が出来ないように目標の真後ろで落としたのに。なぜだ? 滑りやすくするため、少しばかりの水滴を残し、スピンまでかけた。皿のコンディションは良好だったはずなのに、奴は難なく受け止めた。くそっ、修行が足りなかったか? それとも、奴のスペックが俺を上回っていたのか?
俺がそんな事を頭で考えながら皿を受け取ろうとすると、突然男の手が止まったのです。
故意だとバレた? 馬鹿な。ありえん。出来るだけ自然にしたつもりだ。
どうやら違うようで、男は俺を見てポカーンとしていました。開いた口が震えています。
そして、
「き、君、もしかしてなっちゃん?」
男はそう俺に聞いてきました。それは俺の渾名で、そう呼んでいたのは過去を遡っても一人しかいません。
「お前、カインか?」
そうです。リア充共のボス猿はかつての親友でした。
もう少しで主人公、勇者パーティーに加わります。
後、どうでもいいことを延々と書いてすみません。