チートマジいらねえ。でも、
気ままに更新していきます。
突然ですが、実は俺、異世界から転生してきたんですよ。
何言ってんのお前? というあなた。話が進まなくなるので自制して下さい。
俺は村人の子供Aとして生まれてきました。
他の方達は前世の記憶を活かしてハーレム作っちゃうぜ!
とか意気込むみたいですが、ぶっちゃけ俺は、そんな事して何になるんだよ。どうせ、口論の末、ブスリ! といくんだよ。背中から羽が生えて天に登るんじゃなくて、背中から包丁が生えて地獄に落ちるんだよ。
と、枯れているというより根暗的な思考が働いたので、普通に大人しく暮らす事にしました。
しかし、ある時、重大な事実に気付きました。
そう!
自分、チート能力持ってました。
どうやら回復魔法が使えるようです。しかも、俺が怪我をする度に毎回発動する自動式。三秒程で完治します。傷も残りません。便利じゃん。と思うでしょ? 違うんです。
まず、俺は村人の子供なので、畑を耕します。鍬を持ってえっちらほっちらと耕していきます。鍬を振ってると普通なら自然に皮膚が厚くなっていきますが、俺のお手ては相変わらず、あら綺麗! ずっとその状態です。時々、皮膚が裂けます。治ります。裂けます。治ります。くそ痛いです。いやマジで。マメが出来ないから潰れたりしませんが、皮膚がゴツくならないので、鍬を持つ度に激痛を味わいます。
そして、他の人に、あれ? お前もう治ったの! 毎度聞かれて不審がられます。正直鬱陶しいです。
結論。
不便です。
チートがこれだけウザいとは夢にも思いませんでした。ええ、ほんと。
普通に生きていこうと誓った俺の意思を嘲笑っているかのようでムカつきます。
マジでチートいらんわあ。神様、もっとヒャッハー! 出来る能力にしてくれよ。
そう、思っていた時期も俺にはありました。
そう、あの時までは。
一緒に遊んでいた親友が、魔物に襲われました。魔物は大人達が退治しましたが、親友が重傷で命の危機でした。
親友は、両親が死んで村で孤立していた俺に気軽に接してくれた、ただ一人の唯一無二の理解者です。直ぐに医者を呼びましたが、間に合いそうにありません。俺は無我夢中で息も絶え絶えな親友の手を握ると、ある現象が起きました。
親友の傷がみるみる内に治っていったのです。
三秒とはいきませんが、時間をかけてゆっくりと傷が閉じていきました。そして、一分程で親友の体は元通りになりました。親友は意識を失っていましたが、命に別状はありません。
結果的に親友の命は助かりました。
神様ありがとう。この能力をくれて。
けれど、周りの人達の顔には安堵の表情や笑みはありませんでした。
皆、俺を見て様々な表情をしていたのてす。
恐怖や警戒、不安等、得体の知らない化け物を見る目。それは、魔物を見る目よりも恐ろしく、険しい物でした。
親友の命と自分の世間体。そんなもの天秤にかけるまでもありません。他人からなんと思われようが構いませんでした。
だけど、目覚めた親友から、村人達と同じ目を向けられる事だけは耐えられそうにありませんでした。
俺は親友が目覚める前に村を出ました。
あれは十二歳の時です。