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朽ちた城7

 どうしてそんな事を言えるのか俺には分からなかった。何の論拠も無くただそう信じている。その大きな両眼は未来しか映していないように輝いている。


 それはとても眩しくて暖かい。何となく彼女は俺の未来まで照らし出しているそんな気がした。


「――つ」


 俺は思わず吹き出していた。幼い少女の自信ありげな言葉に。いや、自分自身が何だか馬鹿らしくそして小さく思えてかもしれない。


 当然少女は意味も分からず首を傾げていたが、俺は彼女の頭を軽く叩くと少女の赤かった頬にさらに濃い朱が混じった。


「だからね。だからさ。風雅――一緒に居ていい?」


 断れない。と思った。俺の下らない恐怖と思考でこの子供を荒野に無下に追い出すことはできなかった。以前ならいざ知らず俺はもう自由に動けるのだから。


 大丈夫だ。何とかなる。――怖いことなどなにも無い。子供だって前を見れるのだ。大人が見れなくてどうする。仮にも俺は『仙』だ。人ですらなく長い時を生きていると言うのに。


 ごくりと喉を鳴らして、そう言い聞かせながら俺は表情に残っていた不安を打ち消し微笑んで見せた。


「そうだな。凛がどこかで落ち着きたいと思うまで一緒に居て見ようか?」


 一瞬だけ凛は何を驚いたのだろう。目を見開いた。しかしすぐ嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして笑う。心底嬉しそうに。幸せそうに。その顔にあるのは信頼しかない。何一つ疑ってはないようだ。俺のこともこの先の未来のことも。


 なんとなく幼く小さな少女に敗北した気分になって俺は苦笑を浮かべた。

 差し出した手に凛の温かく小さな手が置かれる。


「行こうか?」


 護ろうと思った。彼女と同じ時は歩むことはできないけれど。彼女が俺を必要としなくなるまで。子の幼い手を。まっすぐな双眸――未来を護ろうと思った。


 俺は一度瞑目して目を開くと凛の笑顔が飛び込んでくる。明るい――太陽のような笑顔。


「――うんっ!」


 元気よく踏み出す凛の一歩。俺は引きずられるように踏み出してからゆっくりと振り返る。


 かつてあった世界。美しい建物も愛おしい人々もそこにはいない。だけど見えたような気がした。


 豪華な彫り物が施された美しい宮殿の中で青年が笑っている。繊細な刺繍が施された滑らかな絹の衣服をまとった厳つい青年――項弦は軽く手を振ってそこから消えた。


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