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山村5

 その為に知りうる限り派手な術を選んだ。その為に俺自身が戦わないことを選んだ。


 少女と今別れる事を選んだ。――あとは手の尽くす限りこの村を護ることだ。彼女を護ることだ。


 多少この村は国の干渉が強まるかもしれないが。


「え?」


 彼女は大きく目を丸める。何を言っているのか全く見当が付かない様子だった。


 そういえば彼女は俺が『仙』だと言う事を知らない。なぜ俺があそこにいたのかさえも。それはわざわざ言う事でもないと考えていたから。


「先生。どういう――」


 これから訪れる不安にその双眸が揺れ、緊張で声がかすれていた。今にも零れそうな涙。それに手を伸ばしかけたが引いた。


「交渉の道具にはなる。この村の人間すべてと引き換えにしても俺自体は魅力的なはずだろうから。――凛。俺は今からこの村を降り、一番近い『由』の街に行く。もし、その時が来たらそう言え――俺を売るんだ。この村とはただ暇つぶしに来ただけであの男と何の関係も無い――そう言うんだ。護りの対価に大金をくれてやった――と。」


 今度は何年閉じ込められるだろうか。もしかしたら永遠なのかもしれない。空さえも見ることができないかもしれない。何もない。誰もいない。


 凛も――。


 ざわり心に何かうごめくものを感じて俺はそれに蓋をした。それはきっと見てはいけないものだ。


「凛」


 暫く重苦しい沈黙が続いた。しかしながらようやく凛が呻く様に口を開いた。ぐっと何か喉の奥に含んだような喋り方。


「――そんな事、できると?」


 低い、低い声だった。恨み事の様に。声が震えている。


「してもらわないとすべて消える――凛がそれでもと言うならいいけど」


 言わないことぐらい分かっている。それは酷く嫌な質問だろう。凛は言い返せもすることが出来なくて形の良い唇を噛むと肩を震わせた。


「大丈夫さ。俺も悪いようにはならないし、みんな救われる。この村も」


 俺は手を伸ばすと凛の細い華奢な身体を抱き留めた。きっとこれが最後だ。何もかも。


 ドクン。ドクン。と心臓の音が規則的に波打っていた。二つ重なり合う様に。


「……風雅。私も連れて行って」


 耳元で凛が呟く様に言う。だが俺はそれに答えることはできなかった。



 その日の夜遅く、俺は村を後にした。

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