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夏休みがはじまってすぐ、宿題会をしに友達の家に行った

作者: 桜葱詩生
掲載日:2026/02/06


小学校四年の夏休み開始直後、友達の家に行って宿題をやろうという話しになった


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これは僕が子供の頃の、かなり前の話しだ それには…少しだけ訳がある そのときはまだ…昭和という時代で、周りに簡単に楽しめるものなんかは転がってない やっとファミコンがあって、PCも未だ8ビットで、スマホもネットなんかもまだない そんなときだった


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夏休み開始直後、僕たちはそれぞれお菓子と宿題と文房具と、あと着替えをもって学校に集まった 学校に集まったのはそれが一番、楽だったからだ みんなで集まって宿題をやろう、と言い出したのは手澤(てざわ)くんだった 手澤くんの家は家族が多くて、そのせいで成長というか、口が上手かった 機転が利いて、いわれたことには必ず、一言加えていいかえす それが面白くてクラスでも人気者だったけど、それが災いして仲間外れにされることも多かった だからどこでもいいので、自分がトップにいれる場所を作らないと気が済まないみたいに、人を連れ回していった リーダータイプだったけど、暴君でもあった


それに賛成したのが森屋くんだ 森屋くんが、泊りがけでやろうぜ、といった張本人だ 森屋くんとは母親同士が友人、というかPTAで仲良くなって、その関係で僕たちは学校で一緒にいることが多かった 一人っ子で手澤くんに負けず劣らずのわがまま 上等な服を違和感なく着こなす ただ、自分の言い分が通らないとぶんむくれて、話してくれなくなる、という困った面があって、それで放っておくとさらにこっちが悪い、と悪口を言いふらす、面倒なクセがあった 最も嫌がれるタイプ 最初はみんな友達になろうと近寄って来るんだけど、そんなところが嫌になって、離れていってしまう それがさらに森屋くんの機嫌を悪くしていく 手澤くんと森屋くんは幼稚園のころからの幼なじみだ


それに巻き込まれていたのが僕 僕はどっちでもいいタイプだった 森屋くんとの縁で一緒にいたけれど、特に親しい友達だった、ということでもなかった その頃の僕にはほかにやることがあって…実際にはこのタイミングまではふたりと一緒に遊んでいただけだった


それになぜか参加してくれたのが志水(しみず)くんだった 志水くんは大人しい性格で、学校では目立たないタイプの子 でも頭が良くて何でも知っている いつもきりっとしていて、慌てたところを見たことがない 仲良くなったきっかけは理科のテストの点数 このときなぜか志水くんは、僕が志水くんと同じように中学受験をする仲間だと思っていたらしい 彼はこの後、五年生のときに違うクラスになってしまうんだけれど、この小学校では数少ない私立に進んだ少年だった


はじめはこの四人で合宿? 宿題会をする予定だった それに手澤くんの隣のクラスの友人が加わることになって、僕たちは五人で集まることになった 夏休みが始まってすぐのまだ七月の午前中 僕たちはみんなして連れ立って合宿所…という名の手澤くんの家へと向かった 手澤くんの家は少しだけ遠くて、大きな道路を挟んだ向こう側にあって、もうそこは隣の市に近い場所の、とても違和感のある所だった


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住宅地の中に大きな竹やぶが残っていた


緑地公園を抜けて、幼稚園を横に見ながら、その道を…進んで曲がって…そんな風にいった先に、こんもりとした森…竹やぶの森があった そこの周りは全て住宅なのに、そこだけ、その住宅区域の一角すべてが竹やぶのまま残されていた その異様さに僕と志水くんは顔を見合わせる 夏の暑い風が竹を揺らして擦れて高い音を鳴らしていた 手澤くんと手澤くんの友人という隣のクラスの子が、何の抵抗もなく、そこへと入っていって、僕たちはやや戸惑いながらそれに続いた


そこに隠れ家があった


竹やぶの真ん中をくり抜いて、アパートが建っていた 入口入ってすぐ左手に二階建ての古い昔ながらという感じで 古いトタンでできた壁は青の色がところどころに残っていて、ほかは赤く錆びついた アパートの向こう側は駐車場になっていて、自動車や軽トラックが一台ずつ、周りの木から落ちた煤のようなくすんだ色の埃みたいなものと葉っぱがくっついたままの状態で止まっていた 入ってすぐなのに手澤くんの姿が見えない どこへ行ったんだろう? と思っていると、こっちー、という声がアパートの向こうから聞こえた ちょうど反対側 アパートの細い方の幅の奥に何台かの自転車が、錆びついてたり、草が絡まっていたりした状態で置かれてあって、ここに停めて、と手澤くんの友人がいった そこへ自転車を止めているとその向こう、駐車場の脇のところに、さらにその向こうへと抜けれる道があることに気がついた 一本だけ、電灯がついた細い電柱が立っている…その電柱以外駐車場を照らすような電灯がどこにもない 電柱の脇、自動車が通っている跡がある道の奥になにか四角いものが立ち並んでいた お墓だった 竹やぶの向こうはお墓で、僕は何とはなしに、お墓が残っているから、ここの竹やぶも残っているんだな、と勝手に思った


駐車場の地面には砂利が敷き詰められていて、そこに鉄パイプで作った車止めがきれいに並んでいた 砂利の間には、雑草がまばらに生えている よくそんなに細かく覚えてるな、とか思うかもしれないけど、それはそうだ これは僕がそんな体験をする一番最初のことだったんだから


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手澤くんの家はこのアパートの全部だった ここを借りているか、持っているらしい ただ、ほかの人には貸していない 家族全員でこのアパートに住んでいて、(あいだ)の壁を取っ払って大きな一つの部屋にした101と102が、一家が一緒に食事をする居間になっていた お邪魔します、といって上がるとすぐにぷん、と線香の匂いがした 茶色いタンスと食器棚が左右に並んでいる間で冷たい麦茶をみんなして飲む その隣の103がおばあちゃんの部屋 一番奥の104は物置だという 二階の201が手澤くんとお兄ちゃんが一緒に寝る部屋で、202がお姉さんと妹、そしてお母さんが寝る部屋だった お父さんは101で寝ているらしい お兄ちゃんとお姉ちゃんは中学生で部活で出かけていて、帰ってくるのは夕方、それまで気兼ねなく遊べるんだ、と森屋くんと手澤くんと、手澤くんの友人が笑った 宿題はどうした?、と思うだろう そんなのはじめからやる気は僕たちにはなかった


203には服とかそんな細々としたものが置かれている物置…ウィークインクローゼットルームというオシャレな部屋だという その奥、一番端 204が子供部屋だった 僕たちはここで宿題をして、泊まることになっていた 


不用心なことにここの鍵はかかっていなかった ドアを開けると、ここも線香の匂いがした 靴を放り投げて、板の間の狭いキッチンへと上がる その横のドアがトイレ 子供が遊ぶ用だからかガスコンロがなくて、そこにカップラーメンがビニール袋に入って積まれていた キッチンの先の引き戸を開ける おもちゃとテレビとファミコンと、そんなのがそこに置かれていた 部屋は四畳半…だったと思うのだけれど、六畳だったかもしれない、その二間があるだけの狭い部屋 奥の窓には雨戸も網戸もなく、入ってすぐ手澤くんがそこを開ける 風が通り抜ける 部屋の右手に扉を取り外された、何も入っていない押し入れがあって、そこの奥の色が嫌に気味が悪い そこから古い丸いテーブルを出して広げて、ノートと文房具をそれぞれ取り出して、宿題をはじめる でもそんなの最初だけ すぐに手澤くんとその友人が、古い14型のアナログテレビとファミコンの電源を入れ、遊びだした 志水くんだけが宿題にきちんと向き合っている


アパートにはどの部屋にもクーラーがなかった あるのは古い角ばった扇風機だけ それでも竹やぶの中だからなのか、どこからか涼しい風が吹いてくる 僕と志水くんはそれでも宿題をやっていた 教えてもらいながら でもすぐに飽きてきて集中力が無くなって、結局、みんなでファミコンで遊ぶことになった 一番初めに遊んだのはマ〇オだ 全員参加の、一人死ぬ交代で進める 以外にも志水くんが上手くて、でも途中から誰もクリアできない面が出てきて…有名なあの面だ、そこを突破できないうちにお昼になってしまった そうめんだった


午後の暑い時間帯に宿題をできる子供はいない お腹がいっぱいになった僕たちはそのまま昼寝をしてしまい、起きてからはまたファミコンをした 僕と志水くんはそれでも宿題の何ページかを進ませる 周りは竹やぶ 木が生い茂り、その下には枯れ葉や枝が溜まっている 窓が開けっ放しだったから、蚊がいっぱい入ってきて、僕は何か所も喰われてしまった 蚊取り線香を付けもらったのはおやつの時間の直前だった 午後のアニメの再放送がはじまる そんなことをしているうちに夕方になって、お兄ちゃんたちが帰ってきて、挨拶という名の乱入をしてきた 気がつくと辺りは暗くなっていた 奥の電灯にオレンジ色の明かりが点いていた ほんとうにあっという間だった


夜ご飯は奮発しての焼肉だった ただ、手澤くんのお父さんはお酒を呑んでいるだけで手を付けない おばあちゃんは最初、一緒に食べていたけど、そのうち、おなかいっぱいだよ、といって部屋に引き返してしまった お母さんもあまり手を付けないのに、手澤くんと森屋くんと友人とお兄ちゃんが人一倍食べる 妹ちゃんが、もっとお肉が食べたい、とお母さんにいって取ってもらっているのを見て、僕と志水くんは食べる手が止まってしまった 胸になんかつかえて食べれない 遠慮せずに食べろ、というお父さんの言葉が僕には反対に聞こえた それは志水くんも同じだったらしい ふたりして先に部屋に帰るとき、食べた気にならなかったね、と志水くんはそっといった


お風呂にそれぞれ入って、布団を広げ敷いて、僕たちは今夜は寝ないでファミコンをするんだ、と意気込んだ やり始めたのはファ〇スタ トーナメント表を作って、誰が一番かを競う だけどそれも最初だけ 森屋くんと手澤くんが自分が負けそうになるとリセットボタンを押して、なしにするということをしはじめてからは、あとはどうでもよくなってしまった いくつかほかのゲームを遊ぶ でもそれも長続きしなかった 志水くんとそういったゲームをしたのはそれが最初で最後だった


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最初に静かになったのは森屋くんだった コントローラーを握ったままうつらうつら、胡坐をかいて首を前後させる 夜はまだそんなに更けていない 手澤くんとその友人がそれを受け継いで遊んでいたけれど、僕たちが参加しないのが気に入らないのか、飽きたー、といって、冷たい廊下のあるキッチンで寝転んだ そのまま腹を何回か掻いたかと思うと静かになった そっと玄関の鍵を確かめて、かける 僕と志水くんでテーブルやテレビの台を脇へと退かしていく テレビを消すと、虫の鳴く音が大きかったことに気づいた 風が通り抜けて心地いい でも、窓は絶対に閉めて寝なさいよ、とおばあちゃんにいわれていたのを思い出して、窓を閉める 少しだけ蒸し暑い 自分でも気がつかなかったけど、疲れていたんだろう 僕はすぐに眠ってしまった


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どれくらい寝ていたのかわからない 蒸し暑さに目を覚ました 部屋には時計がない 何時かわからないけど、窓から薄明かりが入ってきていて、部屋がぼんやりと浮かび上がっていた 蚊取り線香の匂いがする 誰かがいびきをかいている ちょっとだけのその暑さと息苦しさに僕は迷わず、思わず窓を開けた


冷たい風が入ってくる 心地いい…というよりも寝冷えをしそうなほど冷たい そうして窓を開けているとその向こうの灯りが目についた 駐車場にあるひとつだけの電灯 オレンジ色に光る電灯の周りを…何か大きなものがゆらゆらと飛んでいる 行っては帰って、周りを上下に飛び回る


何だろう? 不思議に思ってよく目を凝らす 僕の住む地域には、大きな薄い緑色をした蛾が生息している 手のひらほどのサイズにまでなる蛾で、色味がすごくきれい でもそんなに数は多くなくて、見ることもまれだった 森にカブトムシを取りに行くとき、ひと夏に一回、あるかないかというぐらい、貴重な虫だった 最初はそれが飛んでいるのかな? と思った


その虫の後をなにか黒い…白い糸のようなものがついて飛んでいる 良く見えない 窓際に近寄ってよく見ようとしたとき、嫌な感じがした いわゆる、ゾッとした、という感覚だ


オレンジ色の電灯の前を、大きなものが飛んでいる 上下に揺れながら、なにか糸のようなものをまとわりつかせて それがいきなり、こっちを向いた そう、完全にこっちに気づいた、みたいに 上下に揺れながら、左右に不規則に身体を揺らしながら近づいてくる 大きさが間違っていたことにそのとき気づいた なんだろう? そう思ったと同時に金縛りにあった 息ができずらくなり、体が動かない 押さえつけられる 何かが圧し掛かってくる 肩を押さえつけられている感覚がものすごく怖い なにより息ができないのが辛い そしてそれが近づいてくるのが怖かった


蛾なんかじゃなかった 白い毛を後ろへとなびかせたバレーボールぐらいの大きさのもの それがこっちへと近づいてきた 気づいた 生首だ


薄い髪の毛を振り乱しながら、白い顔の生首が近づいてくる 思わず目をつぶる ところが目をつぶると息が全くできなくなる 苦しくなって薄眼を開けると、息がかろうじてできた 胸が押し付けられて苦しい あえぐように息をする


帰れ 帰れ 帰れ いなくなれ いなくなれ いなくなれ


そう考えれば考えるほど、息ができない それが怖い 涙が出てきて、気がつくと、生首が窓のすぐそこまで来ていた


老婆? 老人だ しわの多い白い顔に首の半分から下がない 目があった よく聞く空洞じゃなかった ただその目は何も考えてないような、なんの感情もないような、嫌な目だった 冷や汗が体中から溢れて、冷たい ともかく怖い それなのに目を閉じれない 閉じると息ができなくなって苦しい 開けるとできる なんなんだよ、これ ふわふわふわふら、左右に行き来して、こっちを見て、ときどき、こっちに来ようとする


窓が開いている 入って来ようとする



入って来るな 入って来るな 入って来るな



そう考えるしかなかった 首が窓の外でうろうろする なぜか入って来なかった


するとそいつは急に笑った


歯を見せて笑う 異様に白い歯が並ぶ 違う 笑っているんじゃない


口惜しい たぶんそれは、恨めしい、という顔だ 怒っているのとも、悲しんでいるのとも、残念がっているのとも違う 訳の分からない表情


そんな顔をしてこっちを見た



そこで気を失った 気を失ったタイミングが本当にそこだったか分からない ただ、覚えているのはそこまでだった


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頬っぺたや二の腕、足の先のかゆみで目が覚めた 薄明りの中、見慣れない部屋に混乱して焦る そうだ、ここは手澤くん家だ、と思い出して、夜の嫌な顔を思い出してしまった 体が異様に冷たくて動けなくて、だるかった


窓を見る 開けっ放しのままだった そこから蚊が入ってきて周りを飛んでいる 蚊取り線香はもう切れていた


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後はもうだめだった なにをやってもテンションが上がらない とにかくここから一刻も早く逃げ出したかった僕は、朝ご飯を食べ終わる同時に、帰る、と友達に告げた 手澤くんも森屋くんももう宿題とかなにかはどうでもよくなっていて、引き留められることはなかった 志水くんだけが僕に同意して、一緒に帰ることになった


学校まで会話はなかった 学校に着くと、じゃあまた学校でね、と志水くんがいった 志水くんの家はそのまままっすぐ進んだ先 僕は大通りを駅の方へと曲がる またね、と返事をした


夏休みの間 手澤くんとも森屋くんとも、志水くんとも遊ばなかった 会わなかった


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学校は、八月の最初の一日と、終わり夏休み前10日ぐらいになると登校日がある 八月の最初の日、登校すると、僕は手澤くんと森屋くんから無視されるようになっていた クラスからも気の毒そうな気配がする ああ、先に帰ったことを根に持ったんだな、と勝手に思って、面倒だったから特に気にも止めなかった


雲行きが変わったのは、夏休みが終わる前の登校日だった


クラスメイト、全員がよそよそしい なんだか面倒なことになったけど、特に問題視もしていなかった それよりも聞きたいことができていて、僕は手澤くんと森屋くんに話しかけた



手澤くんの家ってどうなったの?



あの後、田舎に帰ったりなんやりしてから、僕はもう一度、あのアパートへと行っていた 道順を間違えることなく、潰れて廃墟になっていた幼稚園を抜けて、竹やぶへと向かう そこはきちんとそこにあった


でも、そこにアパートがなかった まるでかなり昔にそうなっていたような駐車場が広がる それ以外のもの…奥の電柱と電灯、お墓もそのままだった 竹やぶの形も周りの住宅も同じにようにそこにあった アパートだけがなかった 建っていたところには雑草がまばらに生えていて、奥の自転車を止めたところの伸びて絡んでいた雑草は跡形もなかった


訳がわからない


そう聞くとふたりは呆れたようにいい放った



お前、宿題会するっていったのに来なかったじゃん 学校でずっと待ってたのによ すっとばして謝りにも来ねーとか…わかってんのかよ、おい



そういってふたりは僕の肩を突き飛ばして去っていった


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二学期が始まってもクラスの雰囲気は元のままだった 僕が何もしてないのが気に入らないのか、森屋くんがあることないことを周りに告げ口する 志水くんに話しかけるタイミングもなにもなくて、僕は隣のクラスの、手澤くんの友人だといった子に訳を聞きに行くことにした 隣のクラスには仲のいい友達がいて、そいつにその子を呼び出してもらう でも、それはできなかった



うちのクラスにそんな奴いないよ



クラス名簿を見せてもらってもそんな名前の奴はいなかった


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さて、これは夏の世の~なんちゃら、とか思うかもしれないけど、まったくそんなことではない このあと、僕は運よく志水くんと同じ班になって、実験とか何かをするようになる 女子たちの総スカンを食った手澤くんと森屋くんの方がそのころにはクラスで浮いた存在になっていた


僕はそのことを話した すると志水くんは笑って、こういった



あの子はさ、手澤くんの、隣の市の学校の友達だったんだよ だからこの学校にはいないんだ、クラスがお隣でもね あのアパートもその友達の家で、手澤くんの家でもなんでもないよ あのふたりはきみを引っかけるためにそんなことをいったんだよ



どうやら僕はなにか勘違いをしていたようで、志水くんに今までのことをいうと、そう指摘してくれた 志水くんはアパートのことは知らなかったようだった 夏休みの間は、ずっと塾に行っていたらしい もっと遊んでもよかったのかもしれない 小学校で友達と一緒にあんなふうに遊んだのはあれだけだった、とこのあと、再会したときにそういわれた


暴露話をしてくれた志水くんは、その後、少しだけ真顔になって、そっとこう続けた



でもあれ、気持ち悪かったね もう二度と、あんなの見たくもないよ




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さて、話しはこれだけでは終わらない…これからなんですけれども…正月にやっていた それだ


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この後、五年生のときのクラス替えで僕たちは全員、バラバラになった 新しいクラスで、四年のときに縒浸をしてくれた、仲の良かった隣のクラスの友達と僕は同じクラスになる



こいつがまあ…霊媒体質だった 小さいころから何度も金縛りにあっていて、事あるごとに体調を崩す 霊感がある? でもはっきりとそんなものは見えない ただ、憑りつかれる、だけ そうこいつ、憑りつかれやすかった



僕たちの学校では、五年生のとき林間学校が、六年生のとき修学旅行があった 五年のときの林間学校は課外学習という名のキャンプで、一泊二日、泊まりに出かける キャンプといっても泊まるのはバンガロー そこで一緒の班になったクラスメイトが夜になにをするか? そう枕投げ、コイバナ…男子同士でもするのだ、そして怖い話だ


僕は何気なく、この話しをした 最後の志水くんが面白いし怖いだろう?、そう思って


ところがその夜、班の、僕以外の全員が金縛りにあった 頭の上を何が飛び回って苦しかった、と翌朝、全員に責められた はて?


友達はその後、バスの中で酔って盛大に吐いた 帰ってから三日三晩、金縛りにあった なぜかすごく怒られた



そんな話し話すんじゃねえ



でも六年生のときには修学旅行がある このときは男子全員が大部屋で一緒に寝た 前にこの話を聞いたクラスメイトがもう一度話してくれ、というリクエストに応えて僕はこの話しをした 憑りつかれやすいその友達が布団にくるまって枕を耳に押し付けて逃げた 効果はなかった


クラスメイトのほとんどが金縛りにあった 聞かなかったはずの友人さえ、その日の夜、金縛った 大部屋の上を何かが飛び回って、息ができない 全員がうめき声を上げて、助けを求めても、誰も助けてくれなった、と文句をいわれた


どちらのときも僕は何ともなかった



この後…いくつかの学校を卒業した後のことだ バイト先の店長という人が、同じように金縛りによく合う人だといった 霊感が強くて、ちょくちょく、嫌なものを見る なら話して進ぜよう



お前、金縛りにあったじゃねーか へんな話、聞かせるなよ



怒られた 数日間、体調が悪くて、結局病院にいっても治らず、お祓いに行くといって一緒にいかされた



もちろん、そのときも僕は何ともなかった



その後、霊感があるという人に会うたびに僕はこの話をした 確認作業だ ほとんどの人が何ともなかった 10分の一ぐらいの人が金縛りにあっただけだ そこでどうして小学校のときにあれが入ってこなかったのかが判明した 本当に霊感がある人は違う



蚊取り線香だ



蚊を取るためのものであっても線香は線香だ あのぐるぐる巻いた火をつける奴 あれが部屋に充満していたから入ってこれなかった 効果があるんだよ、とその人はいった マットとか電気式のとか、プッシュする奴はだめ、どうしてかわからないけれど、火がついて煙が出る奴をしているとよってこない 外でそういうところへ行くときはそれに火をつけて持っていくといいよ と笑った あとファブ〇ーズ 塩を部屋の隅に盛るのもやめた方がいいよ それをするぐらいならファ〇リーズを部屋中に巻いておくといい そうも教えてくれた


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この話しをするのは…実際には十数年ぶりだ コロナの前からもう確かめる必要がなかったから…していない そういうモノはいろんな人に自分のことをいわれて、嬉しくてそこに現れるから、何人にも話しているうちに満足して勝手に成仏しちゃうよ と、その霊感があるという人にはいわれた ただ、その人とはもう連絡がつかない スマホが壊れて連絡先が分からなくなったからだ あと、結婚して子供が生まれた後、霊感が無くなったみたいだよ、と知り合いという人から聞いた


だからこの話しをいましても大丈夫だと思う なんていったって、ほ〇怖にも…少し古いが、あなた〇知らない世界にも採用もなにもされたなかった話しなんだから


すこし前、そこに竹やぶが残っているのかどうか、見に行った…僕は諸ある事情から実家に帰ることになっていた 緑地公園も潰れた幼稚園もそのままだった…いや、この幼稚園を先に何とかしろよ、とはそのとき、ツッコんだ その先…そこにもう竹やぶはなかった きれいな住宅が建ち並ぶ その奥に、横に少しだけ残された竹やぶとやや増えた気がするお墓だけがそこにあった


もう出ることはない そうたぶん大丈夫だ


※T&Dでクビのことが出てきたのはこれのためです

※詳しくはそっちもお読みください

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