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京都丹後弁。だっちゃ恋愛物語。  作者: 刹那による京都城主(藤安)
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2

 

 高校生活というものは、だいたい初日で方向性が決まるらしい。


 僕――はるとは、その初日で悟った。

(……俺の高校生活、絶対おかしい)

 峰山高校・一年一組。

 新品の制服。新品の上靴。新品の緊張。

 教室に入ると、すでに数人が集まっていた。

「なあなあ、あの人見た?」

「やばくない? 二年の先輩らしいっちゃ」

「イケメンすぎん?」

「そうだっちゃ」

 ひそひそ声の視線の先――

 窓際の席に、見覚えのありすぎる人物がいた。

 短髪。

 男子用制服。

 脚組んで、スマホいじってる。

(……深雪先輩!?)

 目が合った瞬間、にやっと笑われた。

「や、同級生」

「な、なんでいるんですか!?」

 思わず大声を出して、教室中の視線が突き刺さる。

「転入」

「軽く言わないでください!」

「事情があってね」

 深雪――いや、今日も男子制服の深雪は、けろっとしていた。

「体調の関係で、学年一個下げた。だから今日から同級生だっちゃ」

「そんなの、聞いてないっちゃ!」

「言ってないっちゃ!」

 くすっと笑われて、心臓に悪い。

 その瞬間、担任が入ってきた。

「えー、一年一組担任の山本です。あと、転入生を紹介します」

 ざわつく教室。


「……深雪。よろしく」

 低めの声で、完全に“イケメン枠”の自己紹介。

「キャー!」

「まじか!」

「名前までかっこいい!」

(やめて! それ俺が知ってる深雪先輩だから!)

 席は――

「鈴木の隣、空いてる席そこな」

 僕の隣。

(神様、ほんまやめて。ださきゃあにやめて)

「よろしく、はると」

 耳元で囁かれて、即死しかけた。

 休み時間。

「なあ鈴木、隣のイケメンと知り合い?」

「どっちが彼氏?」

「付き合ってる?」

「ち、違います!!」

 否定すればするほど、疑われる不思議。

 一方、深雪は余裕しゃくしゃくで。

「恋人じゃないよ。まだ」

「まだ!?」

「含み持たせるなよ!」とクラスから総ツッコミ。

 昼休み。

 購買帰りに、深雪がふらっと壁にもたれた。

「……先輩?」

「ちょっとだけ、休憩」

 顔色が少し悪い。

「大丈夫ですか」

「大丈夫だっちゃ。授業は平気だっちゃ」

 そう言いながら、こっそり薬を飲む。

 それを見て、胸がきゅっとした。

「無理、しないでください」

「心配してくれるの?」

「当たり前です!」

 深雪は一瞬きょとんとしてから、柔らかく笑った。

「じゃあさ」

「はい」

「私が倒れそうになったら、受け止めて」

「……それ、心臓に悪いです」

「私の心臓が悪いんだけど」

ぷっ。つい二人して笑ってしまった。


 放課後。

「鈴木と深雪、一緒に帰ろうぜ!」

 クラスメイトに囲まれて、なぜ?かもうカップル扱い。

「え、付き合ってないの?」

「絶対嘘だろ」

「夫婦感ありすぎ」

「ないです!!」

 帰り道。

 二人並んで歩く。

「ねえ、はると」

「はい」

「私さ、病気のこと、クラスのみんなには言わないつもり」

「……」

「特別扱いされるの、好きじゃない」

 少し真剣な横顔。

「でも」

 こちらを見る。

「はるとには、知っててほしいっちゃ」

 心臓が跳ねた。

「……はい」

「だから」

 一歩、距離が縮まる。

「私が男子に見えても、倒れても、薬飲んでも」

「はい」

「ちゃんと好きでいてほしいっちゃ」

 夕焼けの中で、顔が熱くなる。

「……それ、告白ですか」

「どう思う?」

「ずるいです」

 深雪は笑った。

「高校生活、面白くなりそうだっちゃね」

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