~第2章~
一気に小学4年生となった彼女はぶっきらぼうな顔をみせる少女のままだった。でも、これまでにない姿をみせるようにもなった。友達をつくったりするようになれば、学校の部活へ積極的に参加するようにも。彼女はその時の気分でバレーボールやバスケットボール、ソフトボールなどに参加した。その運動能力も何かずば抜けていて、部活の顧問は「ずっと来てくれないか?」と必死でスカウトに励むほど。中には施設までやってきて「プロの道もある」と力説してくる者までいた。
だけども施設園長である田中伊佐美は「気分屋さんの子ですから」となだめるばかり。一度彼女が部活に励んでいる姿を見物した事があるが、確かに頑張ってプレーしているものの、彼女の眼は真剣さに欠けていた。暇つぶしでやっているものにしかみえなかったのだ。
朋子の日常というと学校から帰ってくるともっぱら勉強に励んでいるばかり。たまに何の気まぐれか共有フロアのテレビを観に来ることがあるも、2~3分もしないうちに彼女は部屋へ帰ってゆく。変わっているなと言えば、他の児童より明らかに長めな長風呂に入ったりするところ。あと未だに雨の日は雨をただ眺め続けること。水をやたら飲むクセがあるところだ。
彼女が入居した時の異様すぎる変わりようは段々とおさまってきているように感じられた。もちろん変わり者は変わり者だ。
それでも健全と言えば健全な子供にみえて仕方ない。
年頃になって大変なコとなる予感はあった。
思春期や反抗期となればクセのあるコほど荒れやすく周囲を困らせるものだ。施設長の田中は心して臨むつもりでいたが朋子は特に変わる事なんてなかった。
中学生となっても相も変わらず真面目に勉強に励んでいるし、ぶっきらぼうな態度をみせる性格も変わらない。友だちはつくっても学校で話したりするぐらいで満足しているようだし、他のコと違って門限を破る事だってなかった。
次第に田中は彼女がとてもピュアな女の子にみえてきた。
そしてその時は突然やってくる。
夜の22時。朋子はある音楽番組を釘付けになって観ていた。
外は雨が降っている。
こんな時はいつも部屋にこもって窓を眺め続けているのに……
「どうしたの?」
「Mさんが……Mさん……」
「エムさん?」
朋子の瞳からは涙が溢れるように零れていた。
それは外の大雨よりも激しく。強く。
テレビに映っているのはビートルズ。彼らのバラード曲だ。
田中は朋子に近づいた気がした。そっと肩を寄せて。その名曲を一緒に聴く事とした――
∀・)何の曲でしょうね?想像に任せます。次号。