1-登場人物紹介とプロローグ
登場人物
■ 柏木 冬馬
・29歳/α/若手政治家
・父は元総理大臣。
・国政に戻るための足掛かりとして、次の地方選に立候補中
・冷静沈着。合理主義で恋愛に無関心
・「番制度は、票を得るためのツール」だと割り切っている
■ 天城 遥
・30歳/Ω/元俳優
・4年前にとあるスキャンダルで芸能界を追われた。
(現在は素性を隠して静かに暮らしている)
・番を持たずに生きてきた孤独なΩ
・冬馬とは「初対面」ということになっているが……
――――実はかつて、一夜を共にした相手だった
*
――それは、嘘から始まる「番」だった。
「契約期間は三ヶ月。報酬は提示通りで構わない」
柏木冬馬の声は機械のように無機質だった。
「それ以上、望まないでくれ」
窓の外には、都心の夜景が静かに瞬いていた。
その明かりよりも冷たく見えるαの瞳を、遥は見つめ返す。
「いいよ。そのかわり、条件が一つある」
「条件?」
「絶対に、俺に“触れないこと”」
そう言った遥の声は、どこか震えていた。
それが怒りなのか、恐れなのか――冬馬には分からなかった。
偽りの番。
期限付きの関係。
けれどそれは、決してただの嘘では終わらなかった。