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異世界文明

遅れました!2話目書けました。

見てくれて本当にありがとうございます!

今回は早速主人公の異世界探索始まっていきます!

読んでくれる皆さん大好きです!

澄み切った風が頬をなで、草原の香りが鼻腔をくすぐる。

どこまでも広がる緑の海。その先には、手を伸ばしても届きそうにないほど広がる青い空。


私は膝をつき、草に触れる。柔らかく湿り気を帯びた感触は、どうしようもなく現実的だった。


「ここは……どこだ?」


誰もいない。人工物の気配もない。広大な自然に囲まれているはずなのに、胸に残るのは不安ではなく奇妙な高揚感だった。


「冷静になれ……まずは状況を整理する」


私は目を閉じ、呼吸を整える。転移の直前に会議室で感じた、あの激しい衝撃が思い出される。


心臓が鳴る音が、いつもより大きく聞こえた。


「転移……なのか?」


その言葉を口にした瞬間、脳裏にふと浮かぶのは、かつて友人だった小説家の顔だ。

彼は酒の席で熱っぽく語っていた――「異世界への転移」なんていう、夢物語のような話を。


あの時の自分が口にした言葉を思い出す。

「そんな非現実、あるはずがないだろう」


思わず苦笑が漏れた。

だが、今――目の前に広がるこの景色をどう説明すればいい?


私は立ち上がり、目の前の景色をもう一度見渡した。どこまでも続く草原――その先に広がる無限の可能性を前に、心臓が少しだけ高鳴るのを感じた。


「本当に……起こるものだったとはな」


友人が聞いたら、きっと呆れた顔をするだろう。


「だが、これが現実だとするなら……私はどこまで行ける?」


未知の土地を歩き出すその瞬間、私の中には確かな興奮があった。

かつてディシピーヌの中で感じていた抑圧感はここにはない。私を縛るものが何もない場所で――。


風が吹き抜ける。草の感触を確かめながら、私は最初の一歩を踏み出した。



どれだけ歩いたのだろうか。

陽は傾きかけ、草原を照らす光の角度が変わっていく。それでも、どこまでも続く景色に変化は見られない。


「……こんなにも広いのか」


私は立ち止まり、額の汗を手でぬぐった。普段の生活では考えられないほど歩いている。

軍事や会議に追われる日々の中で、こんな単純な体力すら失っていたのか――と、思わず苦笑が漏れる。


足は重く、喉は渇いている。草原の美しさを感じる余裕も次第に薄れていった。


「どこまで行っても、同じ景色だな」


独り言を呟きながら空を見上げた。ディシピーヌでの喧騒や会議室の空気を思い出し、少しだけ懐かしく思う。


「……戻るべきなのか?」


そう思った時、視界の端に何かが見えた。


地平線の向こう、揺れる草の向こうに一本の影が横切る。まっすぐに伸びる線――道だ。


私は思わず足を止めた。


「道……」


胸の中に小さな希望が湧き上がる。

文明がある――人が存在し、私のこの状況を解き明かしてくれる可能性がある。


だが、それと同時に別の感情が押し寄せた。

未知の文明。それが友好的かどうかもわからない。下手に接触すれば、余計な火種を生むかもしれない――。


「この道が、どこに続いているかもわからない」


私は立ち止まり、風に揺れる草原を見渡した。これまでの指導者としての経験が、リスクを冷静に分析し始める。


「だが……ここで止まるわけにもいかない」


どれほどの危険が潜んでいようと、進まなければ答えには辿り着けない。

私は再び歩みを進める。軽くこぶしを握り締め、胸の中に残る希望と不安を両手で抱えるようにして――。



道を歩き続けていると、風の音の中にかすかなリズムが混じり始めた。

規則的な音――蹄の音だろうか?


「……馬?」


音が次第に近づいてくる。それと同時に、視界の先にいくつかの影が揺れ動くのが見えた。人影だ。


「慎重に..」


私は足元の草に目をやり、少し離れた茂みへと身を隠す。冷静に呼吸を整えながら、その集団の様子を観察した。


草の間から見えるのは、馬に乗った数人の人影。そしてその後ろには、一台の馬車が連なっている。馬車を囲むように歩く人々は軽装だが、その目つきには鋭さがあった。


「商人……ではないな」


馬車を囲むように歩く男たちの軽装。表向きは何も怪しいところはないが、彼らの目つきには鋭さがあった。


ふと、馬車の荷台の布が揺れ、中から何かが垂れ下がった。


「……なんだ?」


目を凝らした瞬間、それが何かに気づく――人間の手だ。


心臓が一瞬止まるような感覚がした。だが、すぐに冷静さを取り戻し、状況を観察する。

一人の男が素早く荷台に近づき、布を掴んで中身を隠す。動きに迷いはなく、それが何を意味するのかは想像に難くない。


「これが……現実なのか」


私は草の中で息を潜め続けた。集団は何事もなかったかのように、来た道を引き返していった。


やがて音が完全に遠ざかり、静寂が戻る。私は茂みから身を起こした。


「……恐ろしいな」


だが、それ以上に――胸の奥に湧き上がるのは、興奮だった。


「未知の世界だ。本当に異世界なんだ」


恐ろしい光景のはずなのに、その中で新たな知識を得たという感覚が、私を震わせる。

「見たことのない文化……新しい価値観……!」

自分でもわかる。この世界は危険で満ちている。だが、その危険の中には、未知を切り開く喜びが確かに存在していた。



やがて道が開けたとき、視界の先にそれは現れた。


防壁に囲まれた都市。堅牢な石壁が高くそびえ、その奥には煙が立ち上る。人の手が作り出した痕跡が、そこにあった。


「文明...!」


その言葉を口にした瞬間、胸の奥に抑えきれない興奮が湧き上がった。

「この世界には、確かに人がいる。国がある!」


だが、それと同時に背筋を冷たい感覚が走る。ここは異世界だという事が疑問から確信に変わっていくのがわかった。こんな大きな都市が存在するなど見た事も聞いた事もない。

「どんな人間が住んでいるのか……敵か味方かもわからない」


文明があるという希望。そして、その中に潜むかもしれない危険。

その二つが、私の中でせめぎ合っている。


「まあでもこんな機会、経験したくてもできるものじゃないな」


私は軽く笑い、足を踏み出した。



防壁に近づくにつれ、道の両脇に畑が広がり始め、所々に小さな木造の家が点在している。

「農村か」

静かな風景の中にも、どこか張り詰めた空気が感じられる。


働く人々がこちらに気づくと、手を止め、じっと視線を向けてきた。その警戒心の強さが、肌で伝わってくる。


「……慎重に行くべきだな」


私は両手を広げて武器がないことを示し、落ち着いた歩調で一人の男性に近づいた。


「こんにちは!道に迷ってしまいまして、少しお話を伺いたいのですが……」


男性は鍬を肩に担ぎ、鋭い目つきでこちらを見据えた。

「道に迷った?こんな場所に来る奴はそう簡単にいないはずだが……どこから来た?」


私は一瞬だけ考え、落ち着いた声で答えた。

「私はシェルディといいます。旅の途中で道を失い、この土地に辿り着いた者です。どうかご助力をお願いできませんか...?」


この名前を使うのは、親からの教えを守るためだった。「名前はその人間の本質であり、軽々しく他人に教えてはならない」――そう教えられて育った私は、偽名を使うことで自分を守る術を心得ていた。


「シェルディ……妙な名前だな」

男性は眉をひそめたが、少しだけ肩の力が抜けたように見えた。


その時、少し離れた場所から女性の声が響いた。

「どうしたの、アンドレイ?」


振り向くと、中年の女性がこちらを見ていた。男性――アンドレイがマリアと呼ぶその女性に短く状況を説明すると、彼女は私をじっと見つめた後、口元に微笑を浮かべた。


「まぁまぁ、旅人なら仕方ないわね。お腹空いてるだろうしうちに来てご飯でも食べさせてあげたら?」


アンドレイはまだ疑いの目を向けていたが、ため息をついて鍬を地面に突き刺した。

「……まぁいい。とりあえず話を聞こう。ついて来い」



彼等の家に入ると、目の前に広がったのは素朴だが整然とした空間だった。

木の香りが漂う室内には、乾燥させた野菜や調理器具が吊るされ、整頓された棚が並んでいる。


「まずはこれを飲みなさい」

女性が差し出してくれたのは、大きなコップに入った冷たい水だった。透明な液体の中には、いくつもの氷が浮かんでいる。


「ありがとう……いただきます」


私は一気に飲み干した。乾いた喉を潤す冷たさが体中に広がり、思わず息をついた。

「……美味しい。こんなに冷たい水が飲めるとは……。」


女性は微笑んだ。

「ここでは井戸水を冷やしておくのが普通なのよ。大したものじゃないけど、旅人にはありがたいでしょう?」


「はい!本当に感謝します」


「さぁ、座ってちょうだい。今ちょうどスープとモチポリを用意してたところだから。」


「恐縮です。感謝してもしきれません...」


鍋の中から香ばしい匂いが立ち上る。テーブルにはもちもちとした芋餅「モチポリ」と呼ばれるもの、その隣には肉と香草を炒めたような料理が並んでいた。


「これは……?」


「肉を香草と一緒に火で炙ったものさ。外はカリッと、中はジューシーだ。モチポリによく合うだろう?」


私はスプーンを手に取り、一口スープを飲んだ。果物から取られたという出汁が、甘さと旨味の絶妙なバランスを生み出している。


「これは...素晴らしい」


その感想に、女性が満足そうに微笑んだ。


「この村ではみんな一緒に働いてるからね。こうして食事も分け合うのよ」


「分け合う……?」


その言葉が頭に残る。だが、続けて出された香草の効いた肉料理を口に運ぶと、その味わいにまた言葉を失った。香ばしい風味と噛み応えが、モチポリの柔らかい食感と見事に調和している。


「うまい……」


つい口をついて出た言葉に、男性はふっと笑みを浮かべた。


「だろう?働いて疲れた体には、こういう飯が一番だ」


食事を続けながら、私はこの村のこと、そしてこの世界について質問を始めた。


「もし差し支えなければ、この村について教えていただけますか?……例えば、壁の向こうには何があるのか」


男性の表情が少しだけ厳しくなった。


「お前さん、どこから来た?ここはこの世界に来て間もない国だ。外の人間がここにたどり着くなんて、どう考えてもおかしい」


その声には疑念が含まれていた。だが、それと同時に私の言葉を真剣に受け止めようとする気配も感じられた。


「それでも教えてくれると助かります。この世界でどう動けばいいか、知る必要があるんです!」


男性はスープをすすりながら、少し考えるように視線を落とした。そして口を開く。


「いいだろう。ただし、俺たちが話すことは国のためになることだ。覚えておけ」


彼は一拍置いて続けた。


「ここはベル・カンナーツィア主義国だ」

アンドレイが静かに語り始めた。

「俺たちは国全体で労働や資源を共有している。すべての人間が必要な分を受け取り、誰一人として困窮しないようにしている」


「共有する……」

私はその言葉を反芻した。


「そうだ」

アンドレイの声に力がこもる。

「この国では誰もが働き、互いに支え合う。それがこの国のやり方だ」


女性ーーマリアが優しく続ける。

「評議会が私たちの暮らしを見守ってくれているの。壁の外に住む私たち農民も、作った作物を壁の中に送ることで、都市に住む労働者たちを支えているのよ」


「なるほど」


アンドレイが頷いた。

「壁の中では、超高層の建物が立ち並んでいる。建物のほとんどは家と工場が一体化していて、労働者たちはそこで働きながら暮らしているんだ。中央には評議会があり、俺たちが提供する資源や情報をもとに、この国全体を管理している」


「情報も提供しているのですか?」


「そうだ。ただ、俺たちにとって情報はあくまで国を運営するための手段にすぎない」

アンドレイは肩をすくめる。

「お隣のAIZみたいに、情報そのものを崇めるなんてことはしないさ」


「AIZ……」

その名前を耳にした瞬間、私は興味をそそられた。


「AIZとはどのような国なのですか?」


アンドレイは少し眉をひそめながら答えた。

「奇妙な国だ。奴らにとって情報は命よりも重い。情報を『神聖な存在』とみなし、それを集め、捧げることを目的にしている」


「神聖な……情報」

私はその言葉の異質さに驚きを隠せなかった。


マリアが話を引き継ぐ。

「私たちがこの世界に来た時、最初に接触してきたのがAIZだったの。彼らは独自にこの世界を調査して、いろいろなことを私たちに教えてくれたわ」


「例えば?」


「この土地が元々海だったこととかだな」

アンドレイが口を挟む。

「俺たちが来る前、この場所は広大な海だったそうだ。それをAIZが調べ上げ、俺たちに教えてくれた」


「では、AIZはこの国と同盟関係にあるのですか?」


「いや、そこまでの関係じゃない」

アンドレイは首を振る。

「AIZは情報を提供してくれるが、それはあくまで一方的なものだ。奴らはこの国以外の国とも接触しているらしいが、俺たちはまだどの国とも会ったことがない」


「……なるほど」

私は頷きながら、この世界の広がりを想像する。


「私が通ってきた道も……AIZが?」


「いいえ、おそらくその一本道は我が国の新世界探検団という探検兼外交を担当している部隊が作ったわ」


アンドレイが頷く。

「新世界探検団は今のところ我々唯一の希望なんだ。この世界の地理と世界情勢を把握しようと日々尽力している。AIZの提供してくれる情報もあくまで彼らの視点から見たものだ。我々が直接確認しなければ、信じきれない部分もある」


マリアが補足する。

「とはいえ、未だに私たちが集めた情報は少ないわ。この世界には、定期的に他の世界から国が転移してくるらしいの。これもAIZが調べた情報よ」



その時、外からノックが聞こえた。


「評議会の者だ」

アンドレイが立ち上がり、ドアを開けると、長身で丁寧な身なりの男性が立っていた。


「失礼します。私はザーレと申します」

彼の後ろには数人の兵士が控えている。


「外から来られたシェルディ殿、あなたのような存在は極めて珍しい。調査委員会にて、ぜひお話を伺いたいのです」


彼の態度は礼儀正しいが、その背後に強い意志が隠されているのを感じ取った。


「……わかりました」

私は静かに答えたが、胸中には新たな疑問が膨らんでいた。



そうして農村を後にする準備をしながら、アンドレイとマリアに感謝を述べる。

その時、アンドレイがぽつりと呟いた。


「お前さん、気をつけるんだ。この世界には、まだ俺たちの知らないことが多すぎる」


その言葉が妙に胸に引っかかりながらも、私は村を後にした。


ふと振り返ると、自分が通ってきた道の遠くに、不気味な黒い球体が浮かんでいるのが目に入った。


「……あれは……!」


夢で見た光景が頭をよぎる。球体は静かに消え去り、その場にはただ風の音が残った。

最後まで読んでくれてほんっっっとうにありがとうございました!

皆さんが読んでくれてるという事実だけで幸せ成分全部得れます!

次回もお楽しみに!

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