彼
ひっさしぶりに書いてみました!
前回の小説全部終わらせれてなくてごめんなさい、
前回の時知識も想像力も豊富ではなかったので色々ミスや設定に矛盾などがあって続きませんでしたが今回は続かせます!丸2日ほどかけてブレインストーミングしてお話を作りました!
なので応援していただけると本当に励みになります!
ぜひお読みください!!
見渡す限りの緑輝く大草原。
両手を広げても到底収まりきらないほどの広大な空が、どこまでも果てしなく続いている。
なんて美しい場所なのだろうか――そう思った次の瞬間、その幻想的な景色は崩れ去った。
どこからともなく現れた、不気味なほど深い黒い球体。
球体の中から黒い物質が次々と溢れ出し、地面を侵食していく。それに続くように毒々しい色の沼が地表を広がり、闇と毒が世界を覆い尽くしていく。
「これは……一体……?」
呆然と立ち尽くす私の耳に、かすかに聞こえるざわめき。
視線を移すと、そこには人で溢れかえる市場があった。
人々は楽しそうに笑い合い、目には希望の光が宿り、金貨が弾む音が響き渡る。
だが、その平和な光景もまた一瞬で崩れた。
市場の中に現れた、黒い防護具を纏った兵士たち。
彼らが手にした棒を人々に突きつけると、老若男女問わず身体が無理な方向に折れ曲がり、悲鳴が空に響く。
私はその惨状を目の当たりにし、胸が張り裂けそうになった。
「なんてひどい……」
今すぐ止めなくては――そう思い駆け出そうとするが、足が前に進まない。
まるで地面に縛り付けられたかのように、目の前で起こる出来事に手が届かない。
悔しい。悔しくてたまらない。
こんなにも無力な自分に、焦りと怒りが募る。
その時、兵士たちが一斉にこちらを振り向き、棒を私に向けた。
「っ!」
全力で逃げ出そうとするが、すぐに捕まった。
そして、私の身体もあらぬ方向に折れ曲がり――。
「っ……!」
私は息を切らしながら飛び起きた。
視界に入るのは執務室の天井。汗が額を伝い、身体中がピリピリと痺れている。
「またか……」
ここ最近、同じような夢を見るたびに、この感覚が身体に残る。
私は冷たい水で顔を洗い、気を落ち着けると、執務机へ向かった。
そこには秘書が用意してくれた、ミルクたっぷりのティーが湯気を立てている。
「やはりベル県産のお茶は格別だな」
香ばしい苦味の中に隠れた優しい甘みが、口の中に広がる。
ベル県――我が国ディシピーヌ協国の南方に位置する私の故郷であり、赤茶の名産地だ。
このティーを飲む時間だけが、唯一心を癒してくれる。
だが、そんな余韻に浸る間もなく、緊迫した会議の準備に取り掛かる。
陸続きで接するイナミック帝亜國、そして海を挟んで対峙するアラーデュ商群制――。
仮想敵国との軍拡競争が数十年も続き、国民の疲労もピークに達している。
イナミック――彼らは迫害を正義だと信じている。
一度、難民問題の調査のためにイナミック人と話す機会があった。
彼らは口々にこう言うのだ。
「これは私たちの正義なんです」と。
笑顔で――まるで当たり前の事実を語るかのように。
その中には、親切で良識的な人々もいた。だが、それでも迫害を肯定する言葉を止めない。
彼らに悪気がないことが、余計に胸に重くのしかかる。
私はティーを一口飲み、頭の中に渦巻く哀しみを押し流そうとした。しかし、その感情は底知れぬ淀みのように心に留まり続けた。
「……」
コンコン、と控えめなノックの音が響いた。
「どうぞ」
ドアを開けて現れたのは、クハージュ神兵陸団長だった。
「おはよう、クハージュ君。ノックを忘れないのは感心だな」
「おはようございます、大統領。もっとも、ノックをして入る時ほど、悪い知らせを持っているものですが」
「嫌な予感がするな。で、何だ?」
「先日のイナミックの新地中型鼠弾についてですが――」
「……ああ、あの忌々しいものか。効果の実証は取れたのか?」
「情報機関によりますと、破壊力は確かですが、連続使用の信頼性が低いとの報告が上がっています。とはいえ、イナミックはこれを正式配備する可能性が高いと見ています」
「そうか。これまでの技術開発の延長線上とはいえ、手を抜いているわけではないようだな……」
「はい。しかも、新たな動きがあるという情報も――」
「詳しく報告してくれ」
クハージュは一瞬ためらった後、手元の書類を広げながら続けた。
「新地中型鼠弾に加えて、イナミックは一部の部隊を『難民支援』と称して国境付近に集結させています。兵力増強の準備と見るべきかと」
「“難民支援”か。皮肉なものだな」
私は冷笑を浮かべながら椅子に深く座り直した。
「一体どれだけこの間やった事を恨まれているのだろうな...笑...だが、それを理由にした侵略行為は許されない。我々の国境線は維持しなければならないぞ、クハージュ君」
「その点については、現地部隊も既に強化を進めています。ただ、大統領……」
クハージュは少し口ごもった。
「何だ?」
「現地の兵士たちは疲弊しています。軍拡競争の影響が徐々に浸透している。国民も同様です。現場の士気を保つには、何か手を打つ必要があるかと」
「……分かっている。」
私は立ち上がり、窓の外に目を向けた。
「国民も兵士も、この競争にどれほどの代償を払っているか……痛いほど分かっているさ」
「ならば、策を講じましょう」
その声に、クハージュの冷静さと忠誠が滲んでいるのを感じた。
「分かった。この後の会議で全体の対応をまとめよう。……クハージュ君、君の提案も期待している」
「承知しました、大統領。」
クハージュとのやり取りを終え、私はティーカップを置くと立ち上がった。
会議室までは執務室から少し距離がある。ふと窓の外に目をやる。
対空中兵器防衛システムが張り巡らされている空の下に広がるのは、きちんと整備された街並みと工場群。
ディシピーヌ協国――この国の繁栄は、長い歴史の中で築き上げられたものだ。
規律を重んじる国民性と、効率を最優先とする社会制度が、この国を支えている。
規律正しく、無駄のない都市。これがディシピーヌ協国だ。
私はこの国を誇りに思っている。規律を重んじる国民、効率を追求する社会制度――どれもが長い歴史を積み重ねて築き上げた成果だ。
だが、同時にこの国の「完成されつつある姿」が、胸に重くのしかかる。
ここで私が動かすのは、大きな歯車の一部に過ぎない。この国は既に「完成されたシステム」の上で動いているのだ。
国を守る責任も、民を導く使命も理解している――だが心の奥底では思う。
「もしゼロから国を作れるなら、どれほど自由だろうか……」
制約も、前例も、重すぎる過去もない新たな場所で、私の手で一から秩序を築くことができたなら――そんな考えが脳裏をよぎるたびに、自分自身に苦笑する。
「夢物語だな……」
窓の外、工場群から立ち上る煙突の煙をぼんやりと眺めながら、私は思う。
この国は誇りだ。しかし、同時に――この国が、私を縛っている。
足音が会議室に近づくたび、思考を現実に戻していく。
ディシピーヌ協国――ここで私がやるべきことは決まっているのだから。
扉を開けると、会議に出席する部下たちが全員そろっているのが目に入った。
「遅れて申し訳ない。会議を始めるとしよう」
「わかりました大統領。早速先日の貧困層に対する食糧支援の不足につきまして...」
会議が始まり、議題は次第に難民問題へと移った。
資料を読み上げる担当者が静かに話を進める。
「現在、イナミックからの難民流入はさらに増加傾向にあります。受け入れ地域では一部、住民からの反発も出ており――」
「大統領、これ以上の受け入れは危険かと思われます」
高官の一人が私の言葉を待たずに切り出した。
「危険とは、具体的に何を指しているのだ?」
私は書類から目を離し、彼を見据えた。
「彼らの自立支援のための経済的な負担や一部の人々による犯罪行為などが市民の不安を呼び寄せています」
「……なるほど」
私は椅子に背を預けながら静かに考えを巡らせる。そして、淡々とした声で続けた。
「だがそれは私達が彼等を拒否する理由にはなり得ない」
「しかし大統領!我が国の予算はもうこの軍拡競争で余裕がないのですぞ!」
「...君たちは、彼らがどのような人々か、きちんと見ているのか?」
室内が静まり返る。
「イナミックからの難民たちはどうだ?確かに彼らの故郷では迫害が横行している。精神的に追い詰められ、犯罪が当たり前になっている人もいるだろう。だが、迫害が始まる前は彼ら自身は落ち着いた民族性を持ち、勤勉で知られていた。家族を支え、懸命に働き、真面目にこの国で人生を変えて生きようとしている」
私は資料を手元で叩きながら言葉を続けた。
「忘れてはいけない。彼らは、我々ディシピーヌと似ているではないか。規律を重んじ、勤勉さを誇りとし、平穏を求めている。違うのは生まれた場所だけだ」
私の言葉に部下たちは一瞬たじろぐが、やがて何人かが静かに頷き始める。
「それでも、追い返すべきだと言うのか?」
「いえ……それは……」
高官が歯切れ悪く言葉を濁した。
「彼らを排除するのは容易いことだ。だが、そんなことでこの国の何が守れるというのだ?他者を受け入れる寛容さこそが、ディシピーヌ協国の誇りだと私は信じている」
いつもの話――そう思っている者もいるだろう。だが、私は何度でも言う。
「彼らはこの国を蝕む存在ではない。むしろ、この国を豊かにする存在だ。それを理解している者たちが、この会議にもっといてほしいものだな。しかし予算の問題はごもっともだ。早急に代替案を考えよう」
私は軽くため息をつくと、次の資料に目を落とした。
しかし突然、建物全体が揺れ始めた。
警報が鳴り響き、部下たちが慌てて駆け込んでくる。
「何事だ!イナミックか?それともアラーデュか!?」
「原因解明中です!大統領、シェルターへ!」
「そうだな。シェルターで緊急記者会k……うっ……!」
その瞬間、強烈な衝撃が身体を貫いた。視界が真っ白になり――。
気がつけば、目の前に広がるのは夢で何度も見た光景だった
見渡す限りの大草原と、果てしなく広がる青空
「ここは……!」
最後までお読みくださって誠にありがとうございますっっ!!!
誤字脱字のなどございましたらじゃんっじゃんっ教えてください!コメントでここ、こうした方がええんじゃ?などアドバイスなどなんでも受け付けておりますのでぜひお気軽に!
みなさんに読んでもらえる事がもう幸せでいっぱいです。
本当にありがとうございます