夜の風
夜の風はぶっきらぼう
勝手にふいて
勝手にやんで
気まぐれに頬をなでては去っていく
いたずらに髪を乱しては去っていく
夜の風はいくじなし
加減してふいて
気を使ってやんで
そっと頬をかすめては去っていく
ふわりと髪を巻き上げては去っていく
夜の風はさびしがり
独りぼっちで吹いて
独りぼっちでやんで
誰かを抱きしめようとしては去っていく
誰かに近づこうとしては去っていく
夜の風は…夜にふく
夜の風は…夜明けとともに去っていく
陽気な朝の風から逃げるように
明るい朝の光に背を向けるように
元気な鳥たちの騒ぐ声に混じらぬように
夜の風は…夜が恋しい
すべてを包み込む…闇が恋しい
孤独が隠せる…闇が恋しい
夜の風は、待ちわびている
夜の風が、夜の風でいられる、夜の訪れを
夜の風が、夜の風を楽しめる、夜の帳を