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冬の童話祭2024

泥棒達の悪夢

作者: 六福亭(中澤敬)


 勇敢で、ずる賢い、7人の泥棒達がいた。彼らはとても仲が良く、いつも7人で仕事をした。彼らの名前は辺り一帯でひどく恐れられていた。


 ある夜、泥棒達は、いつものように盗みの仕事に精を出していた。1軒目は金持ちの商人のお屋敷で、2軒目は威張り腐った警官の家だった。そして3軒目に、悪名高い魔法使いの城に忍び込んだ。


 魔法使いは不在だった。魔女集会にでも出かけたのかもしれない。これ幸いと泥棒達は屋敷の中を物色して回った。


 魅力的な品物が、どっさりあった。ぎょろ目でお客を睨みつける猫の剥製や、宝石を散りばめた箒があった。赤い血のような酒の瓶と、世界中の金貨をあしらったドレスも素晴らしかった。だが、彼らを最も惹きつけたのは、きちんと鍵をかけた、大きな鉄の箱だった。中に何が入っているのか、とてつもなく重かった。3人がかりで箱を運び、魔法使いの城を抜け出した。


 泥棒達の根城に戻ると、さっそく7人は箱を開けようとした。鍵開けの名人が何度も挑戦したが、鍵はどうしても開かなかった。その上、鍵は3つもついていた。


 なかなか開かない箱に腹を立てて、泥棒達はついに怒鳴り始めた。誰が箱を盗もうと決めたのか訝り、自分以外の誰かのせいにした。酒が入っていたこともあり、殴り合いの乱闘が始まった。


 いつまで経っても決着はつかず、泥棒達は機嫌の悪いまま眠りについた。


 箱を運んだ1人が、夢を見た。鍵開けの名人が、助けを求める夢だ。だが、泥棒は鍵開けの失敗に腹を立てていたから、仲間の声を無視した。所詮は夢だから、とも思っていた。


 何時間も眠って、泥棒達がようやく目を覚ました時、まだ周りは真っ暗だった。窓から差し込む月明かりすらもない。互いの声も聞こえなかった。いつも側に置いていたはずの剣やずだ袋もなかった。


 泥棒達は混乱して、わめき立てた。だが、その声はもはや外の誰にも届かなかった。


 鍵開けの名人は、悲しい気持ちで、鉄の箱を見つめた。その中には6人の仲間が閉じ込められている。だが、彼にも助けることはできない。恐ろしい魔法使いが彼の肩をがっちりと掴んでいるからだ。


 魔法使いは、泥棒に入られたと知るや、すぐさま黒山羊に乗って追いかけてきたのだった。そして、泥棒達の中の1人を自分の召使いに選び、残りの6人を箱の中に放り込んだ。箱の中には、今までに魔法使いの犠牲となった哀れな泥棒や、別の魔法使いたちがぎっしりと詰められている。


 鍵開けの名人があまりにも頼み込むものだから、魔法使いは他の6人に助かる機会を与えることにした。だが、誰一人、夢に出てきた仲間の警告に耳を貸そうとはしなかった。


 魔法使いは、泥棒が中から騒ぎ立てる箱を魔法の力でひょいと持ち上げ、杖のひとふりで鍵開けの名人を黒山羊に変えて、自分の城に帰っていった。泥棒達の根城は、1本の樫の木に変えられた。魔法使いが黒山羊に乗って飛び回っている限り、その木は今でもそこに生えている。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なんとも言い難い不思議な味のある童話でした。義賊の雰囲気の始まりから、物色の様子から義賊でないことがわかり、さらに誰もが失敗者の助けを聞かないながれで普通の盗賊であることが分かる流れで、な…
[一言] 魔法使い、怖い! 盗んではいけないものを盗んじゃったんですね。
2024/01/01 16:37 退会済み
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