泥棒達の悪夢
勇敢で、ずる賢い、7人の泥棒達がいた。彼らはとても仲が良く、いつも7人で仕事をした。彼らの名前は辺り一帯でひどく恐れられていた。
ある夜、泥棒達は、いつものように盗みの仕事に精を出していた。1軒目は金持ちの商人のお屋敷で、2軒目は威張り腐った警官の家だった。そして3軒目に、悪名高い魔法使いの城に忍び込んだ。
魔法使いは不在だった。魔女集会にでも出かけたのかもしれない。これ幸いと泥棒達は屋敷の中を物色して回った。
魅力的な品物が、どっさりあった。ぎょろ目でお客を睨みつける猫の剥製や、宝石を散りばめた箒があった。赤い血のような酒の瓶と、世界中の金貨をあしらったドレスも素晴らしかった。だが、彼らを最も惹きつけたのは、きちんと鍵をかけた、大きな鉄の箱だった。中に何が入っているのか、とてつもなく重かった。3人がかりで箱を運び、魔法使いの城を抜け出した。
泥棒達の根城に戻ると、さっそく7人は箱を開けようとした。鍵開けの名人が何度も挑戦したが、鍵はどうしても開かなかった。その上、鍵は3つもついていた。
なかなか開かない箱に腹を立てて、泥棒達はついに怒鳴り始めた。誰が箱を盗もうと決めたのか訝り、自分以外の誰かのせいにした。酒が入っていたこともあり、殴り合いの乱闘が始まった。
いつまで経っても決着はつかず、泥棒達は機嫌の悪いまま眠りについた。
箱を運んだ1人が、夢を見た。鍵開けの名人が、助けを求める夢だ。だが、泥棒は鍵開けの失敗に腹を立てていたから、仲間の声を無視した。所詮は夢だから、とも思っていた。
何時間も眠って、泥棒達がようやく目を覚ました時、まだ周りは真っ暗だった。窓から差し込む月明かりすらもない。互いの声も聞こえなかった。いつも側に置いていたはずの剣やずだ袋もなかった。
泥棒達は混乱して、わめき立てた。だが、その声はもはや外の誰にも届かなかった。
鍵開けの名人は、悲しい気持ちで、鉄の箱を見つめた。その中には6人の仲間が閉じ込められている。だが、彼にも助けることはできない。恐ろしい魔法使いが彼の肩をがっちりと掴んでいるからだ。
魔法使いは、泥棒に入られたと知るや、すぐさま黒山羊に乗って追いかけてきたのだった。そして、泥棒達の中の1人を自分の召使いに選び、残りの6人を箱の中に放り込んだ。箱の中には、今までに魔法使いの犠牲となった哀れな泥棒や、別の魔法使いたちがぎっしりと詰められている。
鍵開けの名人があまりにも頼み込むものだから、魔法使いは他の6人に助かる機会を与えることにした。だが、誰一人、夢に出てきた仲間の警告に耳を貸そうとはしなかった。
魔法使いは、泥棒が中から騒ぎ立てる箱を魔法の力でひょいと持ち上げ、杖のひとふりで鍵開けの名人を黒山羊に変えて、自分の城に帰っていった。泥棒達の根城は、1本の樫の木に変えられた。魔法使いが黒山羊に乗って飛び回っている限り、その木は今でもそこに生えている。