表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/66

63 石鹸を作る

藤波商会を後にする。

商会では錬金工房の紹介状を貰った。

苛性ソーダ購入の為の書類は取られた。

と言うより、売却証明として保管するのだろう。

このやりとりが結構面倒な気もするが、今後のことを考えると錬金術師ギルドに加入しても良いかもしれない。

当面は石鹸作りだけだし、店を構える訳でも無いので、保留とする。


その錬金工房は、魔煙薬を作っているらしい。

魔煙薬とは各種状態異常を狙う粉薬の総称だと言う。

毒や麻痺、眠りなどなど。

竈と大鍋を使うし、乾燥、粉末化もするため、石鹸作りには向いてるだろうと、教えて貰った。

『錬金魔煙薬工房』

うん、そのままのネーミングだ。

中に入る。

「うわっ」

工房に入ると部屋の奥にあったのは、日本の伝統的な塩釜を思わせる巨大なはそり鍋である。

デカい。

「いらっしゃいませ。何がご入用ですか?」

重厚な割烹着みたいな装いの女性に話し掛けられる。

「藤波商会さんの紹介で来たんですけど」

紹介状を渡す。中身を確認する女性。

「あー、工房長呼んできますね」

女性はスタスタと奥へ行った。

改めて工房内を見渡す。

入口付近には様々な魔煙薬が並んでいる。

1つ1つが大きい。工房だからか、冒険者向けの雑貨屋などに並ぶサイズではない。

この工房も雑貨屋に卸すのだろう。

全てが雑然と並べられており、陳列と言う感じではない。

「おたくが石鹸を作りたいっていう錬金術士かい?」

奥から出て来たのは中年の男性だった。

「すいません、お借り出来ますでしょうか」

「ちょうど、鍋の掃除が終わって、別の工程に移っている。後3日は鍋は使わない。それに石鹸だろ?変な錬成する訳じゃ無いから、ちゃんと掃除してくれるなら構わんよ。藤波さんの紹介だしな」

良かった。人柄も良さそうだ。

「場所代はいくらくらいですか?」

「加入はしていないが、商業ギルドも藤波さんも認めてるんだ。どこの馬の骨とも知れぬ奴なら金は取るかもしれないが、いや、そもそも使わせんな。錬金術士なら別に金はいらん。でも、ちゃんと掃除はしてくれよ?」

「はい!」

奥へと入らせてもらい、材料置き場に買った材料を出していく。

テーブルには、電子計量器やビーカー、フラスコ、ナニコレ?な器具がたくさん並んでいる。

苛性ソーダを全量鍋にぶち込み、水魔法で水を作る。

精製水が望ましいはずなので、水魔術で自分の魔力を抜き、不純物も抜いていく。

規定量の精製水が出来上がったら、それを火魔術で温める。

風呂位の温度になった精製水を鍋にゆっくり落とし、水魔術の応用で水流操作して混ぜる。

化学反応か?

ちょっと変な匂いがし始めたので、窓を開け、風魔法で換気もしておく。

混合オイルも蓋を開け、同じ位の温度になるように火魔術で温める。

樽は重くて持ち上がらないので、水流操作で樽から鍋に移す。

ここからは泡立てることなく、ゆっくりと混ぜ続けるのみ。

弱めの水流操作を掛けつつ、苛性ソーダ袋と樽をアイテムポシェットへと片付ける。

凝縮香油は最後の方に入れた方が良いだろう。

温度で揮発されてしまっては困る。


20分程水流操作を続け、凝縮香油を全量投入。

最初は強烈なシトラスの香りがしていたが、混ぜ続けるうちに、適度な香りに落ち着いた。

そろそろ冷えて来たのだろう。

水流操作の抵抗が強くなってきた。

結構な粘度になってきた。

用途は絶対違うだろうが、木枠の番重があったので、それに移していく。

番重すべてを使って、鍋半分といったところだろうか。

このまま固まるまで、待つしか無いか。

でも、1日位寝かせる必要があるはずだ。

鍋の残りもあるし、どうしたものか。

水魔術で脱水してみるか?

でも加減が分からないし、ボロボロになっても困る。

ハジメちゃん、順調そうだったのに、どうしたの?」

シエルが顔を覗き込んでくる。

「いや、木枠のは固形化するまで1日位放置するんですけど、時短するのに、脱水するにしても加減が分からなくて」

「1日で良いの?」

「多分ですけど」

シエルは積み上げた番重に手をかざす。

「ワンデイクロックアップ」

ん?何かした?魔術?

「これでどうよ」

良い感じに固まってる。

「シエルさん、ワンデイなんとかって何ですか?!」

「ワンデイクロックアップね。この木枠だけを1日分時間を加速させただけだよ」

何魔術よソレ?!

時間を操作する魔術?!

「それどうやったら覚えられますか!?何系統ですか!?」

「空間魔術の派生魔術だよ。空間魔術って時間概念を無視するでしょ?その時間概念を特化させた魔術。ハジメちゃんには無理かな」

高位魔術で、しかも、さらに派生かよ。

「ぐぬぬぬ」

「あははは、めげないめげない。ハジメちゃんは全魔法適性レア応用魔術適性レアがあるんだから。贅沢はダメだよ?普通は1つか2つの魔法適性で、3もあれば天才扱いなんだし、応用魔術も大体1つが限界なんだから」

言われてみればそうだ。

一応、チート体質だった。

魔力総量以外はそう実感できるものではないが。

はぁ、人間のあくなき欲求と言うものなのだろうか。

番重をいっきにテーブルにひっくり返し、長方形の石鹸を短剣で適度なサイズにカッティングしていく。

重ねていても魔力を込めた短剣ならスルリとカッティングできる。

空になった番重には、鍋の残りを流し込んでいく。

シエルにまたワンデイクロックアップを頼み、ついでにカッティングもお願いする。

その間に鍋の掃除だ。

普通に水魔法で水を鍋に張り、鍋下の炉に火を入れることもなく、火魔術で沸騰させる。

掃除道具の場所は聞いていたので、そこからデッキブラシを持ってきて、鍋の内側をこする。

泡泡とは言えないが適度な泡が出来る。石鹸としては十分だろう。シトラスの良い香りもする。

天井のワイヤーを鍋の端に掛けて、レバーを引く。すると排出溝へと鍋が傾く。

石鹸水が排水溝へと流れて行く。

次は空いた番重を鍋に入れて、再度水を張り、熱する。

番重もタワシを使って丁寧に洗う。

それを何度か繰り返し、番重と鍋に石鹸が残らない様に洗浄していく。

最後に火魔法で鍋を温め、水分を飛ばす。

特に飛び散ってはいないが、床も掃除しておく。

排水溝は特に入念に水を流し、石鹸カスが残らない様に掃除する。


テーブルにはカッティングされているとはいえ、石鹸の山が出来ている。

これ何個?

数えるのが面倒だ。

「どうだい、時間の掛かる作業だし、茶でも飲んで休まないかい?」

両手に何やら飲み物を持って工房長が入ってくる。

鍋の周りを見る工房長。

「あぁん?配合の計算まだ終わんないのか?」

「いえ、もう終わりました。後は完成品をアイテムバックに収納するだけです。一応、掃除はしましたが、確認して頂けますか?」

「はぁ?」

鍋を手で触っている。

鍋下の炉を見ている。

床を触っている。

排水溝を覗いている。

最後にテーブルの上の石鹸の山を見る。

「どんな魔法を使った!?」

「魔法じゃなくて、魔術を使いました」

「そうじゃねぇ!100歩譲って魔術で作ったとして、石鹸が固まるのには1日は掛かるだろう!?」

「あぁ、それはシエ?!」

「企業秘密です~」

シエルに後ろから口を塞がれた。

工房長、開いた口が閉まらない。


錬金魔煙薬工房を後にする。

取り敢えず、自作した石鹸は従業員の方全員に2個ずつプレゼントした。

残りはテーブルからアイテムポシェットにシエルに押し込んでもらった。

数は、分からん!沢山だ!


あ。環境配慮石鹸探しに時間を使いまくった!

石鹸自作も何気に2時間位掛かってしまった。

早く、インナー引き取りに行かないと。

読んで下さり有難う御座います。

ブックマークや評価などで一喜一憂したりもしますが、指摘などを頂けると幸いです。

今後とも宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ