57 魔術は無限大
防具の装備は完了した。
双剣を構える。
結構時間が掛かったが、オオサンショウウオは、興味が薄いのかのそのそやって来てくれたので助かった。
目の前に来ると、その存在感は大きい。
目の前に居ると言うのに、周りをキョロキョロしたり、匂いを嗅ぐような素振りをしている。
こちらに興味が無いのだろうか。
しかし、討伐しなければ話は進まない訳で、飛び掛かり、双剣を頭に突き立てた。
ギョッ!
呻き声を上げ、頭を振り回す。
距離を取るのには丁度良かったので、その反動を利用した。
オオサンショウウオはしばらく身もだえていたが、先ほどより速い速度で這ってくる。
草食系とは言えさすがに敵対認識を持ったのだろう。
大口を開けて来る。
丸呑みにする攻撃だろうか。
サイドステップで躱しつつ、頬に攻撃するか。
ニュル。
刃が通らず、頬を撫でる形になってしまった。
双剣を見ると、ぬめりが付いている。
さっき頭部に突き立てた時に体液が付いたのだろう。
これでは攻撃が通らない。
双剣に水魔法を付与し、洗浄を試みるが、中々取れない。
双剣から水が溢れるだけの蛇口状態だ。
仕方ないので、火魔法の付与に切り替えると、ぬめりが蒸発した。
なるほど、普通の斬撃ではオオサンショウウオは苦戦するだろう。
ならば魔法攻撃が有効なのではないだろうか。
ファイヤーボールを放つ。
オオサンショウウオは激しく身もだえるが、そんなに効果があるようには見えない。
いや、身体を覆う粘膜が蒸発している。
さらにファイヤーボールを叩きこむ。
オオサンショウウオは顔面を焼かれ、更に激しい身もだえの末、絶命した。
うーん、どうやら身体を覆う粘膜が要の様だ。
改めて双剣を構える。
今度は炎の斬空を試してみよう。
さっきの個体は群れから離れていたが、今度は群れに近付く必要が出て来た。
1体を攻撃すると、やはり全体が敵対認識してきそうで怖いが、囲まれなければ問題は無いだろう。
魔力を込めた斬空はいくらでも使えるし、大丈夫だろう。
一気に群れに突っ込む。
先手必勝、走りながら双剣で火斬空を飛ばしまくる。
前方の2体に火斬空が直撃する。
ただ、傷が浅い。
以前、斬空を練習した時は日本刀を使っていたから気にしていなかったが、リーチが違う。
双剣では、斬空の大きさがどうしても小さくなってしまう。
魔力を追加するしかない。
まだ距離はある、接近しながら、魔力を押し込んだ火斬空を放つ。
魔力を注ぎ込む挙動の為、どうしても手数が減ってしまう。
双剣を止めて片手剣の方が良いかもしれない。
強めの火斬空が直撃する。
今度はバッサリと食い込み、2体が横倒しになる。
やり方は間違っていないようだ。
左の片手剣を腰の鞘に戻し、右手の短剣だけにする。
走りながら跳躍し、身体を捻って大振りの火斬空を放つ。
威力は申し分ない、群れていた所の3体が倒れる。
よしよし、大体コツは掴めてきた。
群れの外側にいるオオサンショウウオがこちらに気付いた、そろそろ遠距離攻撃の範囲が難しくなってくる。
川辺に向かって走っているのだが、最後に魔術で広域殲滅したいところだ。
川辺、水、密集、粘液を纏うオオサンショウウオ。
試してみるべきだろう。
「サンダーレイン!」
前方に高密度の雷魔術を放つ。
放物線を描く様に上空に飛んだ一見するとサンダーボール。
最高高度で弾け、無数の雷が雨の様に地面に降り注ぐ。
半径20m程度のオオサンショウウオが雷に貫かれ、感電死しただろう。
ギャアギャアと叫び声も聞こえてくる。
また水辺と言うこともあり、雷が水を走り、直撃を免れた射程外のオオサンショウウオにもダメージを与えているようだ。
風魔法を使って跳躍すると、その全貌が明らかになった。
サンダーレインで直撃死したのが20体程度。
川辺で感電し、身もだえするのが100体程度。
中々の戦果だ。
「一ちゃーん。そんなに接近して大丈夫~?まだ10分の1も倒せてないと思うけど~」
え?!
シエルからそんな危険情報が叫ばれる。
風魔法を踏み台にして跳躍を繰り返す。
げぇ?!
大量発生とは聞いてたけど、これ何体居るの?!
攻撃したのは群れの端の端。
確かに10分の1も倒せてないのはハッキリわかる。
このまま戦っていては体力が持たない。
しかし!莫大な魔力総量を生かす方法を知っているのだ。
魔導図書館通いの成果を見せる時だ!
んー。何が良いかな?
更に広域殲滅可能な魔術がいくつか候補としてはある。
だが、どれも強力過ぎて地形を変えてしまいかねない。
幸い、ここは川が流れる平原だ。
多少木が生えてたりするが、林って言う程のものでもない。
これ位なら大丈夫かな?
「雷帝の暴風雨!」
魔導図書館5階層で読んだ魔導書。
幾万の風刃、その風刃をより鋭利にする雨、雷との相互干渉で威力を最大限まで引き上げた巨大な嵐。
結構な魔力を持って行かれたが、暴風域の外に着地する頃には魔力は自然回復した。
遠巻きには複数の竜巻が予め指定した範囲を埋め尽くし、地上のあらゆるものを巻き上げて切り刻んでいる。
「これは強力過ぎるなぁ」
と自問しつつ、魔術の効果が切れるのを待つ。
指定した範囲を木っ端微塵にする無慈悲な魔術だが、2分も待てば収まるだろう。
しばし、待機。
「一ちゃ~ん」
急に背後から腕が現れ、首を締め上げられる。
「研究所でのんびりしてたんじゃなかったの~?隠れて魔導図書館に潜ったでしょ」
「ぐふふふ、ずびばじぇん」
謝ると、すんなり腕の力は抜かれ、膝から地面に落ちた。
「まぁ、有意義な勉強になったんならいいんだけど。俺的には、その魔力総量に見合った、もっと創造性溢れる一ちゃんだけの魔術を開発して欲しいもんだけどね。魔導書を読むなんてズルだよ。もっと創造しなきゃ!魔術は無限大なんだから」
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