55 一緒に学ぼう
駐車場から見上げるビルは高く、丸かった。
入口が複数個所あるらしく、
観光用のギルド展示の入口。
ギルド支部の入口。
そして上層階は魔法省の入るフロアに繋がる入口。
勿論正面の豪華な入口は観光用の入口だ。
ビル近くの駐車場には大型のバスも停まっており、団体客を迎えている様だった。
それらに紛れて観光用のギルド展示場に立ち入る。
「チケットはお持ちですか?」
ゲートでは団体客を捌く受付の女性が声掛けをしている。
「個別入場ゲートはこちらです」
チケット買ってない。
売り場、どこだろう。ゲートを前に止まってしまう。
「一ちゃん、ギルドカードで入れるから」
ギルドカードをゲートのタッチパネルに当てようとするとゲートが開く。
何故か周りの受付の人たちから視線を集めてしまう。
「ズルとかじゃないですよね?」
一応シエルに聞いてみる。
「全然ズルじゃないって。むしろ冒険者の家庭の子供が親の仕事の見学の機会で入ることもあるんだから」
なるほど、職場見学は実地では出来ないが、ここで出来ると言うことか。
でも、大人3人だけ、それもそれぞれがギルドカードで入るのは何やら居心地の悪い気もする。
勿論、シエルやビーは気にしている素振りが無い。
「中の案内は出来ないから、団体客に紛れ込んで見学ツアーに乗っかろう」
やっぱりズルじゃん。
団体客に紛れ込むことには成功した。
ビーだけは頭3個分ほど浮いているので少し距離を取ることになった。
団体ごとに音声アナウンスが響き、来場者を誘導している。
ここ日本冒険者ギルド支部の目玉は一般市民の暮らす都市部でも使役される魔獣の詳解。
各結界都市の主だったAランク冒険者の宣伝。
また目玉となる魔獣や魔物の詳解。
「更に最近では、Bランクながら多数のゴブリンを従魔契約した冒険者も居るんですよ~」
え。宣伝に使われてる?
「えー、ゴブリンて汚いんでしょー」
「強くもないしー」
などなど、子供たちから野次が飛んでいる。
しかし、言いたい!
うちのゴブリンは清潔で精強なのだと!
でも、長年の常識は一時の現状には覆せない。
くっ!
新たに判明したことだが、どうやらドラゴンは確かに存在していると言うことだ。
しかし、日本に居る固有のドラゴンは、蛇型でどういう理屈かは別として、飛行型。
東方神話に出てくるモノだった。
以前シエルとドラゴンの話をしたときに想像していたドラゴンとは違っていた。
日本に生息するドラゴンは竜。
どうやら翼の生えた二足歩行型は欧州に多く生息しているらしい。
日本に棲息するドラゴンは接敵禁止らしい。
生態系が研究段階を出ず、数が少ないのが理由のようだ。
亜竜とされるモノも存在はするようだが、日本ではドラゴンとはカテゴライズされていないらしい。
実際にオオトカゲは地竜止まりである。
日本はそれだけドラゴンを特別視、神聖視していると言うことだろう。
日本では結界都市の緊急防衛に陸軍を駐留させている。
海の迷宮は海軍が対応している。
では空軍は何をしているのか。
それは大陸から飛来する亜竜の対処だ。
何故、大陸から亜竜が飛来してくるのか。
結界は?
この問題は説明が無かった。
「シエルさん、何で大陸から飛んでくるんですか?東ユーラシア連邦の結界高度が低いからですか?」
「これは国策の問題だね」
東ユーラシア連邦は結界技術を有しているが、迷宮を囲うのではなく、都市を囲う国策のようだ。
迷宮の放つ魔力影響範囲を広くすることで、魔力影響を受ける産出品を多く獲得しようとしているのだ。
日本の稲や小麦、穀物は魔力生育要素を受けていないが、東ユーラシア連邦は意図的に魔力生育要素を受け、品種改良を行い、農耕を進めていると言う。
当然だが、その農耕をしている地域に魔獣も棲息していると言うことになる。
必然、農家さんは冒険者も兼ねていると言うことになる。
しかし、戦えない人はどうしているか、集約された結界都市に閉じこもるしかない。
しかし、場所が、面積が限られてくる。
結果として、東ユーラシア連邦には都市戸籍と農村戸籍の2つが存在する。
長年国際人権問題として取り上げられていたが、50年ほど前に日本が冒険者技能実習制度を作り、農村戸籍の若者を日本に留学生として受け入れ、農耕技術の教育と冒険者としての戦闘教育を受けさせていると言う。
また都市戸籍からは農村戸籍者同様の制度利用と、特別実習制度を設けている。
これは主に学術留学であり、研究者を日本で育て、ある一定期間は日本に貢献を義務付け、その後本国への帰国が可能になる制度だ。
日本の様に多くの迷宮があれば、この様に分離政策を取らなくてもよいのだが、地政学的に仕方が無い部分もあるのだろう。
近年では結界都市の拡張、結界の張り直しが提言されているらしい。
色々とシエルと会話をしているとビーがやってきた。
「おい、そろそろ、支部に行かないか。飽きた」
「お前の言い出した観光だろ!」
「ハジメに当てる目星もここで大体は付いた。後は支部で討伐依頼を出してるか確認だ」
「え、なんて魔獣ですか?」
「オオサンショウウオだ」
やだー、こっちでは狩る対象なの?
読んで下さり有難う御座います。
ブックマークや評価などで一喜一憂したりもしますが、指摘などを頂けると幸いです。
今後とも宜しくお願い致します。




