54 日本総本山へ行く
研究所の車両を借りてビーと共に裏口から外出しようとした。
甘かった。
ビーの乗れる車がトラックしかない。
運転免許を持っていないし、そもそも運転が出来ないのでどうしようも無くなった。
「こればかりはどうしようも無いだろう」
「あ!一ちゃーん!」
正面玄関で戦闘中のシエルに声を掛けるしかなかった。
「俺はもうこの施設に用は無い!お前ら帰れ!散れ!」
動揺する警察官と軍隊。
「ここ最近見なかったけど、彩に何か面倒なことさせられてたんじゃないの?」
「いや、そんなことはないですよ。充実してました」
魔導図書館や西東京結界都市に行っていたとは言えない。
「ちょっと気分転換にビーさんと出掛けようとしてまして…車が…」
足代わりにしている様に聞こえないように言葉を選ぶのは難しい。
「俺は穴が痛くなるから、バイク寄こせ」
「ここは結界外なんだからメットがいるの!お前の頭のサイズに合うメット何かねーよ!」
そうか、以前は気にせず結界内をバイクで爆走していたビーだが、結界外、都市部では当然ヘルメットが必要になるだろう。
その辺りの法律と言うかルールは前の世界と変わらないみたいだ。
シエルはアイテムガレージに姿を消すと、1台の車両と共に出て来た。
3輪のドアも無いフレームばかりのオフロード車両。
前1輪、後ろ2輪。座席も前の運転席が中央に1、後ろに2席。
「サスペンションはバイクよりも良いはずだから、こいつをお前が運転しろよ」
「よし、乗れ」
「シエルさん、これはさすがにマズいんじゃ」
後部座席のさらに後ろには回転式の銃座。
しかもそれなりに大きな機関銃が付いていた。
「あー、確かに!外さないとね、ありがとう一ちゃん」
指摘しなければこのまま走ることになっていたのか。
シエルは重そうな機関銃を外し、アイテムガレージへ放り込む。
「んで、どこ向かってる訳よ」
ビーの運転で3輪車は公道を走っている。
出掛けることになったのは良いものの、目的地は決まっていない。
「日本のギルド支部だ」
「支部に行って何すんだ?」
「ハジメの実力に見合う魔獣か何かを探しにな」
「んなこたぁ、ネットで済むだろうが!」
「支部の観光も兼ねてだ」
「お、おまえから観光なんて言葉が出るとは…」
「あのぉ~」
風よけの類の無いこの車両では結構、大きな声で喋らなくてはいけない。
それになにやら自分に関わりのある内容の様に聞こえる。
そもそもギルド支部って何?
「冒険者ギルドとは別の組織か何かですか?」
「一ちゃんの初期登録をした西東京結界都市の冒険者ギルド、あったでしょ?あんな所を纏めてるのが、ギルド支部って言う上位組織なんだよ。そのさらに上の組織が魔法省なんだけどね」
魔法省。これは何度か聞いたが、前の世界には無い組織だ。
「僕みたいなのが行って良い所なんですか?」
「ハジメはもう形式上Bランク冒険者だ。中に入るのには何の問題もない」
「そんな所で観光も出来るんですか?」
「ギルド支部は日本すべての迷宮の情報が集約されている。勿論、世界の情報が集まっているんだよ」
正直、西東京結界都市の迷宮に近付いた記憶も無いのに、もう他の迷宮の話とはいささか早い気がする。
不安でしかない。
「一ちゃんには前も話したと思うけど、日本の迷宮は小笠原海域の迷宮以外、結界を張って安全を確保してるんだよ。それに日本は世界有数の迷宮密集大国だからね」
海の迷宮は深海だから結界が張れない、確かに聞いた気がする。
しかし、迷宮密集大国とはどういうことだ?
西東京結界都市以外にも沢山の都市があると言うことだろうか。
「北海道でしょ。東北霊山でしょ。佐渡でしょ。北関東でしょ。東東京でしょ。西東京でしょ。
富士でしょ。名古屋でしょ。和歌山でしょ。広島でしょ。熊本でしょ。鹿児島でしょ、この12都市。これは小学校で習うようなことだよ?」
多くない?!
魔導図書館で読まなかったフロアの蔵書に書かれているレベルの内容だったのだろう。
一般常識として読むべきだったか…。
世界地図は眺めたことはある。
国名が違っていたり、別々の国が一緒になっていて、驚きもした。
それにしても、日本は迷宮が多い。
他の国はどうなんだろう。
「国によっては領土の割に迷宮が少ないところもあるからねぇ~。その利権争いで、戦争した歴史もあるけど、今は合併して共同管理、ってのがウィンウィンだよねぇ~」
戦争の歴史は有ったには有ったのか。
それにしても、この狭い日本の領土にそんなに結界都市があったとは。
魔力関連素材の取引がどれ位のものなのかはよく分からないが、一般家庭の電力が錬金術士によって作られたキューブによって賄われていることを考えてみると、この世界の日本は資源大国なのかもしれない。
更には迷宮内部には希少な金属も採掘されると言うし。
うーん、前の世界では技術はあるが、資源が無い国、日本。だったが、この世界では違うようだ。
「ハジメ、あれがギルド支部だ」
考え事をしていたら、目の前に大きなビルが見えてきた。
外観上は特に違和感はない。
「ここが日本の冒険者ギルドの集約地点だよ~」
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