50 魔導図書館
正面玄関からはとてもじゃないが出られそうにない。
何やら2足歩行のロボットが多数出動してきている。体高10mはあるだろう。
あんなレベルの物を持ち出さないとシエルは止められないのだろう。
シエルの闘技場での戦闘を目にしているから思えるのだが、多分シエルは周囲を巻き込まないように手加減をしているだろう。
勿論、警察と軍は全力だろう。
それが怖い。
と言うことで、カレンに案内されて裏口から車を使って普通に出ることになった。
魔導図書館はそう遠くないようだ。やはりこの世界も首都に様々な省庁や設備が集中しているようだ。
魔導図書館の駐車場はそう広くは無かったが、カレンが駐車係りに研究所のパスを見せるとあっさりと停めさせてくれた。
駐車場から建物に向かおうとすると、その建物の荘厳さに目が向く。
前の世界での国会図書館、いや、行ったこと無いけど。国会議事堂とかみたいな感じだ。
大きな入口を入ると、多数のゲート、大きな受付がある。
「受付に行きましょうかー」
カレンに付いて館内を歩く。
「初めてのご利用ですか?」
受付の女性が声を掛けてくる。
「私は既に入館証を持っています。こちらの方の新規登録をお願いします」
「それでは身分証を2つ提示いただけますか?」
2つ?複数確認か?
「えっと、研究所のパスと冒険者ギルドのカードでも大丈夫ですか?あ、後、紹介状、持ってます」
「冒険者の方でしたか、紹介状、拝見しますね」
受付の女性は紹介状に目を通し、2つの身分証を照会している。
「では、別室にて鑑定装置に入館証の記録を刻みますね」
ここで鑑定か。不必要なスキルは隠して、賢者だけは偽装から解除しなければ。
装置のある部屋に通され、受付の女性は何も刻印されていないカードを装置にセットし、手招きされる。
装置の前の椅子に腰かけ、装置に手を触れる。
「冒険者として中々の実力をお持ちなのですね。魔力総量が人間の域を超えてますが、確かに人間の様ですね。無詠唱に万能言語、賢者様は転生者なのですね」
あれ?偽装が効いてない?慌ててカレンを見る。
「鑑定偽装を上回る鑑定装置と言うことですー。大丈夫ですよー、情報が漏れたりはしませんからー」
受付の女性も笑顔で頷く。
でもまぁ、転生者と勘違いされたのは良かったかもしれない。
じゃなきゃ、この外見年齢と賢者では辻褄が合わない気がする。
受付の女性は装置からカードを外し、渡してくれる。
「この入館証で受付のゲートを通過できます。施設中央のエレベーターで5階層まで降りることが出来ます」
ここに来て3枚目のカードを手にしてしまった。今までは2枚だから首提げパスの両面に出来ていたが、3枚目はどうしようか。
「相互干渉しませんから、重ねても問題ありませんよー」
3枚目をどうしようかと、迷っているとカレンに指摘された。
ゲートを通過すると、階下には広大な図書棚が広がっている。
「下に行くほど狭くなるんですよー。蔵書も限られていきますからねー」
じゃあ、1階はスルーしてもいいだろう。ちょっとこの量は読み切れない。賢者の速読力を持ってしても年単位になりそうだ。
2階層も魔力の消費的問題を考えても、新しい有用な情報は補足的にしか得られないだろう。ここでも十分広い。
魔術師の入れる階層、3階層位から始めるのが丁度良いだろうか。広さ的にも大分狭くなってきている。多分だが、1週間もあれば読めるだろうか。
それで4階層、5階層と読み進めれば…うん、どれ位かで読み切れるだろうか。
これは長くなるだろうが、通う羽目になりそうだ。
読み通り、3階層は1週間で読み切ることが出来た。
しかし、4階層からの魔導書はそう簡単に読むことが出来なかった。
魔導書は写本であるにも関わらず、開くこと自体で魔力を相当量消費する。ページをめくるのにも魔力を消費してしまう。
普通の人間なら1冊読むのに、相当な日数が掛かることだろう。
高い魔力総量に感謝しつつ、読み進める。
4階層でも1週間掛かった。
ここまでしかカレンは入れないようだ。
本来の5階層、賢者の領域に入ると、その空間は一変していた。
極端に蔵書が減っている。普通学校の図書室の半分も無いだろう。
賢者の記した原書、大賢者の残した写本しかない。
部屋に居るだけで魔力が吸われている気がする。
本が魔力を求めている感じなのだろうか。
5階層では一挙手一投足で魔力をごっそりと消費されるのが分かる。
1冊読むのには至らない、半分しか読めなかった。
「妙にゲッソリしてますねー」
1階層で待つカレンに笑われる。
都市部では魔力が薄く、魔素が漂っているだけだ。全快するには結界都市に入らなければ難しいだろう。
魔力総量満杯だとして、1冊読むのに1日としても、これは結構な日数が掛かりそうだ。
現状、入れないにしても、これは6階層ならとんでも無いことになるのではないだろうか。
1日読んで、結界都市に入って、また1日読む。これを繰り返すしかなさそうだ。




