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47 報告、そして試験

「弱いゴブリンを助けないのはゴブリン道に反するのである」

ゴブリン城を出る際にゴブリンロードに勝手に仲間を増やさない様に注意したところ、そんな返しがあった。

何だよ、ゴブリン道って。

ゴブリンの中の道徳なのか?

さすがロードともなると知能は普通のゴブリンとは比べ物にならない。

だからロードなのかもしれないが。

まぁ、組織的に行動するようになったのだから、無理なこともしないし、オークとの接触も少なくなるだろう。

冒険者相手の手出しだけは厳命した。それは守ってくれるようだ。


冒険者ギルドに帰ってきた。

報告窓口に直行する流れが怖い。

挙動不審になっているかもしれない。

「素材の買取かい?」

前掛けのおじさんがカウンター越しに声を掛けてくる。

「と、何だ、新人の兄ちゃんじゃないか。装備が立派になってるんで気付かなかったよ」

「調査クエストの報告に来ました」

おじさんはカウンター内で別の人を呼んだ。

どうやら調査クエストの報告は、別室でのマップ記入と口頭によるものらしい。

「こちらの会議室へお越しください」

大きなマップを持った男性職員から声が掛かる。シエルもビーも付いてくる。


実にあっけないものであった。

報告は本来2、3時間を要するものらしいのだが、こちらの提示したマップの精度が高く、情報量も多いため、その殆どが職員側が受け取る対応になった。

本来、冒険者はGPS等の精密機械を持って行動したりしないのだ。

それをビーが一緒に探知機を持ってバイクで走り回ったのだ。

あっけなくも、あっさりと、3つのクエストをこなしてしまった。


「えー、では、B級ライセンス取得の為の試験についてですが…!」

冒険者ギルドの責任者マスターは苦虫を、どうこうした顔をしている。

「いよっ!待ってました!」

シエルは無邪気に拍手している。

「試験は特別に、当日でも構いませんし、後日でも構いません。試験内容は模擬戦闘です。対戦相手はこちらで選ばせていただきます」

ハジメちゃんには実力者を当てて貰わないと」

なぁ?!

実力者とか無しだろう!

「何言い出すんですか?!」

「いやいや、期待の新人だよ?華々しくデビューしないと」

昨日と言ってること違くないか?!

「対戦相手は違ってくるのか?」

「今日、明日では変わりませんが、あまり期間が開くと変わる可能性もあります」

「ちなみに誰?」

「Aランク冒険者、堅牢の獅子、小清水健司コシミズケンジさんです」

「知らんな。有名なのか?」

「えー?Aランクって言っても数多いし。でも二つ名がある位だから、なんちゃってAクラスでは無いだろうね」

Bランクの試験に、二つ名を持つAランク冒険者を当ててくるか普通。

シエルとビーは知らない様子だが、冒険者ギルドの責任者マスターとしては心外なのか、わなわなと震えている。

何か空気が変に入り乱れている。

「試験はどうなさいます?」

ハジメちゃんが良ければ今からにして貰えば?」

まぁ、確かに、高名な方をお待たせする訳にもいかないだろう。

「えぇ、そうですね。出来るなら」

「では」

何故か一斉に立ち上がる。慌てて立ち上がるのだが、置いてけぼりを食らう。

報告窓口から外に出て、建物を半周すると、開けた場所があった。

木の柵に囲まれた場所。

「この練兵場で試験を行います」

練兵場と言うにはいささか狭い気もするのだが、個別指導なら十分な広さだろう。

と納得しつつ、練兵場の中心には1人の男性が立っている。

地面に置いてあるものの、腰の高さまではある大盾だ。


小清水健司コシミズケンジ

魔力総量550

短剣聖8

大盾術10

威圧


鑑定上、短剣の扱いは向こうに分があるように見えるし、大盾を使った立ち回りは見たことも無い。

堅牢、と言うだけに防御力も体力も相当なものだろう。

「私に一本と唸らせる様な一撃を持って試験合格としよう!柵に触れることは戦意喪失と見なす!」

小清水さんは声を上げた。

それに応じて柵の外側にいる何人かが場を盛り上げようと指笛を鳴らしている。

パーティーメンバーだろうか。

入口になっている所から柵内に入ると、柵は閉じられる。

「君は若くして魔剣士を名乗っているそうだね」

名乗らされていますし、具体的に何を持って魔剣士なのか知りません。

本来はもっと壮年の人が名乗るとか?

魔法も使える剣士、ならそうなるのか?

「私の愛用するこの大盾はただの大盾ではないのだよ。ミスリル製の大盾だ」

鑑定上、ミスリル軽銀の大盾、となっている。

魔法属性に強い素材だから、魔法や魔術を受け流しやすいと言うことだろうか。

「試しに魔法でも何でも放ってみるといい」

言われたので、口元を左手の丸盾で隠し、右手の短剣を使い、試しにファイアーボールを低出力で放ってみる。

何とも、手の内を見せる必要も無いのだし。

「ぐっ!…この通りだ」

放ったファイアーボールは虚しく霧散した。これがミスリル製の盾か。

でも、考えてみれば、今左手に装備している丸盾もミスリル製の物だ。

軽銀と合金でどう違うのかは分からないが、小清水さんが魔法を放っても同じように返せる、と言うことが判明した。

これは儲けものだ。

しかし、小清水さんの魔力総量的に、どれ位の威力の魔法が飛んでくるのかは全く分からない。

自分でも先ほどの魔法を数値化せよ、と言われても困るのだから。

シエルの言っていたような難題になるのは、こちらの魔法が効かない、と言うところだろう。

それを踏まえての接近戦をしなければならない、と言うことだ。

小清水さんも下手な攻撃はしてこないだろう。

防御に徹してこちらの体力を削り、最終的には多少の攻撃も、と言ったところだろう。

ならば、乗らせていただくしかない。


まずは中距離、斬空で試す。

日本刀の時の様にリーチが無い分、大きな斬空を繰り出すことは出来ないが、細かいのを連射することが出来るのが短剣のメリットだ。

火属性の斬空

水属性の斬空

風属性の斬空

土属性の斬空

気持ち、土属性の斬空が効いたかもしれない。何せ質量があるのだから。

それでも、小清水さんには効いていないようだ。

「…本物の魔剣士だ…」

「…斬空も織り交ぜてるぞ…」

何やら外野が騒がしく、人が増えてきた気がする。

と、よそ見をしていたら、小清水さんの踏み込みにより大盾の打撃を食らいそうになった。

危ない危ない。あれがシールドバッシュってやつか。

あれなら柵まで押し込まれて、強制的に戦意喪失にさせられてしまうだろう。


ん?


堅牢な小清水さんに一太刀浴びせるより、柵に追い込んだ方が速いのでは?


頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。


「グランドナックル」


小清水さんの足元から、巨大な拳が天高く伸びあがる。

小清水さんは消えた。


柵に触れていないけど、この場合はどうなるんでしょうか。

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