46 ゴブリン城
翌日、スカイドラゴンの全身装備を装着して宿の部屋を出る。
ヘルムは小脇に抱えている。
ロビーの姿見で自分を見ると、控えめに言ってもなかなかイケている。
重量も以前とほとんど変わらない。さすが空を飛ぶドラゴン素材だ。飛行しない陸ドラゴンも存在するらしいが、そちらは重く、防御力に優れていると言う話だ。
「自分で見惚れてるねぇ、一ちゃ~ん」
いつの間にかシエルに見つかっていた。
「前が貧弱過ぎたからな」
ビーは初期装備から低評価だったのだ。意識として冒険者は、これ位が当然なのだろうか。
いや、でも1,000万だし。
朝食は屋台のホットサンドで済ませつつ、車両は使わず、徒歩でテイマーギルドへと向かった。
相変わらずギルド前には様々な魔獣が大人しく待機している。
ギルドに入ると、老紳士や職員が慌ただしく荷運びをしている。
開店前準備だったか?
「これはこれは加藤様。認識票のお受け取りですか?」
「はい。早かったですかね?」
「本日の早朝に納品されまして、数を検品しているところでした。もう少々お待ちいただけますでしょうか」
早朝に納品って、徹夜で作業して納品されたと言うことだろうか。
これはまた大分無理をさせてしまった。
邪魔にならないように壁際のハイチェアに腰掛ける。
何気なく、自分を鑑定し直してみる。
従魔契約:ゴブリンロード 配下213
ん?
あれ?
ゴブリンロードの配下は156だったはず。
何で増えてるの?
「シエルさん!シエルさん!僕の従魔契約鑑定してくれません?何かの間違いですかね?!」
「ん?どれどれ?」
慌てて玄関外で待っているシエルに声を掛ける。
「あー、ゴブリンベビーが産まれたかな?もしかすると、他の集落とか放浪ゴブリンが合流したとかかな。よかったじゃん、戦力アップ!」
親指を立ててくるが、全然嬉しくない!
あのロード、勝手に仲間を増やしたってことか!
いや、産まれてくるベビーは仕方無いにしても、他からの合流とか!
「もう、仕方ないなぁ、俺が説明してあげるよ」
やれやれ、と言った感じでシエルと共にテイマーギルドに入り直す。
「あー、ちょっといい?昨日、ゴブリンロードの村に行ったら、数が増えてたんだけど、その分の追加、出来る?」
そんな簡単で良いの?
「え?増えた?数はいくつでしょうか?156と伺っておりますが…」
「数えたら213だったよ。今後も考えて、予備も欲しい所なんだけど」
「57も増えたのですか?!」
「ゴブリンだからね」
「まぁ、確かに、ゴブリンですから…至急数の確認を進めますので!」
「よろ~」
ゴブリンはそんなに簡単に増えるのか。村とか言ってたけど、昨日は城と言っていた。
これは増々脅威度認定が…でもその為の認識票か、冒険者ギルドにも報告しないと。
「大変、お待たせいたしました」
大して待たされてはいないが、職員が認識票が入っているであろう木箱をカートで出してくる。
「馬車にお積みになるのはお手伝いさせていただきます」
「あー、俺はアイテムボックス持ちだから構わないよ」
1箱に50個の認識票が入っている様で、シエルは5箱をアイテムボックスに収納してくれる。
「後は、こちらの旗をお持ちください。テイマーギルドの紋章です。これを村の見通しの良い所に掲げて頂くことで、他の冒険者との不要な争いが避けられるかと思います」
広げた旗は、テイマーギルドの看板に描かれた紋章と確かに同じだった。これが抑止力になるのだろう。
ビーはバイクに、シエルと一緒に車両に乗り、結界内へと進む。
今回は結界内の調査と言う形で、シエルは冒険者ではなく、視察の官僚として入ることになった。
軽快に走るシエルの車両と随行するビーのバイク。
見えてきたのは、驚愕、としか言いようが無かった。
ゴブリン村が、本当に城塞化していたのだ。
正確には拡張工事中だった。
土魔法を使うゴブリンシャーマンが山の土をレンガに作り替え、ゴブリンチャンピオンが運搬し、ゴブリンが城壁を作っている。ゴブリンイエーガーは作業中も高い位置に陣取り、辺りを警戒している。
「鉄の荷車が来たのだー」
「警戒するのだー」
「無暗な攻撃は控えるのだー」
「防衛に徹するのだー」
接近にいち早く気付いたのはイエーガーだった。やはり狩人は眼が良いのだろう。警戒板を叩いている。
丘だったところが削り取られ、丘は城壁によって囲まれつつあるようだ。
シエルの作った水路も簡易的に迂回路が作られ、水堀りに繋がっている。
各所には橋もあり、昔の門前にはグリーンボアの頭蓋が掲げられた跳ね橋が出来ている。
完全に城じゃん!
「お待ちしていたのである」
ゴブリンロードに迎えられた。
「拡張工事するのは良いんだけど、増えてるよね」
「さすがお見通しされたのである。他の小さな集落のゴブリンを迎えたのである」
「ベビーも産まれたんですか?」
「それはまだ出産前なのである」
ゴブリンベビーはまだ産まれていないのに、この数の増え方。どんだけ集落を吸収したと言うのか。
取り敢えずゴブリン達を集合させ、認識票を配る。
それぞれが腕に認識票を付ける。
これでこの結界内、フィールドで冒険者による無用な衝突は避けられるだろう。
新たに武器も支給した。
それでいて、冒険者への一切の手出しを禁じ、一番高い物見み櫓に旗を掲げさせた。
近くにはオーガの縄張りもあるが、これも不用意な戦闘は避けるように命じた。
安全に暮らせるように、少数精鋭のゴブリンライダー重視の小型魔獣狩り部隊と、ボアなどの大型魔獣討伐部隊の編成を行った。
勿論シエル主導だ。
こちらも城壁作りに加わった。
見晴らしの良い、防御力を要しそうな拠点にはレンガ造りではなく、一枚岩の岩石をそびえさせた。一枚岩は衝撃で砕けるかもしれないので、前部にはレンガ張りにした。衝撃拡散を備えさせたのだ。
ゴブリン城の問題は片付いた。
次は冒険者ギルドで、ビーの調査クエストの一括報告だ。
これも自分でやった訳じゃ無いので、また、不要な目を向けられるのだろう。
どうしよ。
さらにそれが終われば仮Bランクで、試験も行われるだろう。
どうしよ、どうしよ!




