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45 メリット・デメリット

Bランク、Aランクは迷宮の内部に入ることが許されたランクであり、その2つには大きな違いがあると言う。

Bランクは結界都市を跨いで活動出来るランク。

つまり、他の結界都市で色々な経験を積んで、Aランクへの昇格が認められると言う。

各結界都市ではAランクの在籍数を高く保つために、クエスト報酬や買取価格の上乗せがあると言う。

しかし、Aランクはその在籍数を減らさないために、行動制限も掛けていると言うことだ。

今まで考えなしに西東京結界都市に入っていたが、実は他の結界都市にはまた最初から登録してGランクから入り直さなければならなかった様だ。

しかし、BランクもAランクもどちらも高位だ。それを優遇されていることに、シエルの言う、怠惰、とまではいささか暴言な気もする。

「まぁ、言っても、ハジメちゃんはまだまだ迷宮を自在に攻略できるほどの実力は無い。分隊パーティーの二部に組み込まれる程度ですよ」

シエルはDランクからAランクにさせまいと、Bランクを狙って交渉している。

Cも経験していないのに、勝手に話を進めないで欲しいのが、この静寂な空間での気持ちだ。

「じゃあさ、緊急討伐で3クエストを完了したことにしてよ。んで、Cランク冒険者になったと言うことで」

冒険者ギルドの責任者マスターは悩んでいる。シエルの落しどころと、自分の管理する領域とで悩んでいるのだろう。

再び静寂に包まれたところで、シエルのトランシーバーが鳴った。

「ところでお前らもう出たのか?こっちは大体終わったぞ」

ビーからの通信だ。

「冒険者ギルドで交渉中~。普通に出て宿集合ね」

「了解」

「これは失礼。んで、ギルマスの決断はどうなります?」

ほんの数秒しか無かったはずなのに、さすがは冒険者ギルドの責任者マスターと言ったところだろうか。決断した。

「いいでしょう。緊急討伐を3クエスト完了として認めます。加藤さんのランクをCとします」

「いやぁ、ありがたい。派遣会社だと色々なしがらみでランクアップに時間掛かりますし、誰が育てただの、面倒見ただの煩い連中もいますからねぇ。その点、直は良いですね~」

シエルは結構ドライな所もあるので、あの時教えたとか、どうとか、確かに言わないタイプだ。そう考えると、Sランク官僚の権威で、直でランクアップを進められたのは良かったかもしれない。


軍服の人も兵士もそれぞれ帰り、報告窓口から外に出ると、引き摺られてきたサイクロプスの周りには人だかりが出来ていた。

「素材はどうする?皮だけでも工房に回すようにして、残りは買い取ってやろうか?即金とはいかないが」

「冒険者ギルドの懐事情も大変だねぇ」

「アンタがこの前大量に持ち込んだからこう言う状況なんだが!?」

後日ギルド本部からの振り込みと言うことで話は済んだ。

サイクロプスの素材を使った防具何かが欲しい気もしたが、シエルに中途半端な防具は無い方がマシ、と言われてしまった。

前掛けをした買取のおじさんに、

「また一財産儲けたな、金銭感覚には気を付けな」

と、耳打ちされた。

一体、サイクロプスの全身素材の買取価格はいくらになるんだろう。聞けば答えてくれそうだが、仰天したくなかったので、敢えて聞かないで置いた。


ビーとは宿前で合流できた。

相当ハードな走行をしたのか、ビーの乗ったバイクは泥だらけだった。

シエルはバイクに取り付けた装備を外し、アイテムボックスに収納する。

「はぁー。暇になったな。早いけど、メシにするか」

「このクエストは報告しないで良いのか?」

「緊急討伐で3つ完了したことになって、ハジメちゃんは今、Cランク冒険者なのだ!それを速攻で、3クエスト完了しましたって報告できるかよ。明日だ、明日」

十分速攻な気がする。

「そうか、なら俺もメシに賛成だ。ハジメの従魔もいないし、高い店行くぞ」

「そうだな、昇格祝いだ」

ほとんど、流されるままにCランク冒険者になっているのに、祝われるのは不思議な感覚だ。

しかし、ここで異議を唱える勇気は無い。そのまま付いて行くだけだ。


正直、高い店、と言うのは嫌な気がしたが、そうでも無かった。豪華な内装に煌びやかな食器。などと想像していたが、ここは普通の都市ではないのだ。結界都市なのだ。

「この肉、めちゃくちゃ美味いですね!」

大蛇レッドサーペントの肉に興奮している。

結界都市で高い店、と言うのは、どうやら食材に関してらしい。

ごく普通の小綺麗な定食屋だ。確かに酒類も充実しているが、見た目が高いのではない、あくまでも扱っている食材が高価なのだ。勿論、料理人の腕もあるのだろうが、見た目ではない。

メニューを見て料金には驚いた。正直、魔獣肉の料理は研究所でも食べていたが、あれは営利目的が薄い価格設定だ。ここは産地直送でもこの値段。

いや、高い。

「んじゃま、次は飲みかね」

「日本酒だ」

また、昨日のことが起こるのか、と心配していると、ふと気になる看板が目に入った。

『各種ポーション取り扱い』

店名は無い。薬局か?

「何、ハジメちゃん、興味あるの?入る?」

「研究所で作られたものとかが、こう言うところに流通してるのかなぁ、と思って」

入った店内は狭かった。その代わり、店番の人の後ろには大量の引き出しがあり、多種多様な物の取り扱いが伺えた。

「彩の研究所で作られるような物は高価すぎてここいらには流通しないよ。薄めた物ならあるかもだけど」

毒に始まり、麻痺やら石化なんてヤバそうな代物まで扱っている。

結界内や迷宮内部ともなると、様々な状態異常が付与された攻撃にさらされるのだろう。丸薬は自分で飲めるとして、金属のボトルに入っているのは飲んだり、振り掛けたりするのだろうか、様々な形で売っている。

とりあえず、表で待っているビー用に酔い覚ましの薬を買っておく。

絶対使うことになるだろうから。


シエルは嵌めた。

ビーは何も知らずに1杯目から『ドワーフ殺し』でやられてしまった。

「いいっていいって、酔い覚ましはもうしばらく良いから。それよりさ」

ビーは彫像のままらしい。

「明日は忙しいよ。まずはテイマーギルドで認識票を受け取る!」

「数も数ですし、出来てないんじゃないですか?」

だって156だもの。

「ある程度の在庫と追加発注だから大丈夫だと思うよ。あと、3日って言われたら大体2日で届いてるもんだよ、なんなら、発注書持って工房に直接回収すればいけるでしょ」

「ご、強引ですね」

シエルは酷使するタイプだ。

「んで、それを持ってゴブリン城に向かう」

もはや城なのか。

「帰ったらその足で冒険者ギルドに今日ビーが持ち帰った3つの調査クエストを報告をする!」

そうすれば晴れて仮Bランクになって、試験を受けて正式なBランクになって、強制的に迷宮入りか…。

「ここからが重要だ。多分Bランクの試験は難易度を通常より上げられるだろう。多分、実戦形式の戦闘試験だろう」

「え?何で難易度上げられるんですか?!」

「GランクからBランクまでが異常に速過ぎるから」

それを実現させたのは誰か分かっているのだろうか。そしてその試験を受けるのは誰か分かっているのだろうか。

「そこで、問題になってくるのは、これだ」

シエルに胸を突かれる。

「心の問題ってことですか?」

「違う!防具だよ!防具が貧弱なんだよ!武器と盾だけ高級品で、その防具はさすがに無いわ」

貰っておいてなんだが、誰がチョイスしたのだ、と言いたい。

「前も言ったけど、この防具とかどう?」

シエルはアイテムボックスからテーブルに防具を積んでいく。

全身5点セット。青い鱗が付いた革製の鎧だ。シックな感じで良いかもしれない。カッコいいし。

「スカイドラゴンの全身装備だよ」

あー、前言ってたやつってこれのことかー。ドラゴン素材ってどうか、と思い断った奴だ。

「えっと、これっていくら位するものなんですか?」

「金額何て有って無いようなもんだよ」

あるんじゃん!

それにしょっちゅうシエルからホイホイと貰っていてはいけない気もする。

でも今の防具もなかなか気に入っている。何よりも分相応って感じで、結界都市でも目立たないのがいいのだ。

これは目立ってしまうな。

「これ位装備しないと、笑われるよ?」

「スカイドラゴンなんて見たことも無いですし」

「そんなの冒険者じゃよくあることだよ。防御力は命に直結するんだから。それにこれ、デザイナー職の工房で作られたものだから、カッコいいでしょ?無駄なダボつきも無いし」

「分かりました!じゃあ、買わせてください!値段絶対高いでしょうし、ローンでお願いします!」

「じゃあ1,000万」

高っ?!

いや、でも今の自分の懐事情を考えると買えてしまう恐怖。

「わ、分かりました」

「じゃあ、明日からはこれ着て行動ね。あ、街中でヘルムは外した方が目立たないよ」

十分目立ちそうな、スカイドラゴンの全身装備を手に入れてしまった。

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