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44 雷王の裁き

とにかく集中することだ。

雷属性の魔術は3系統の魔法を複合的に行使するものだ。

苦手と言う訳では無いが、神経を使う魔術だ。

静電気を意識し、魔力で増幅させ、出力を上げる。

でも最大魔力と言われた。

これでは上級魔術止まりだろうか。もっと魔力を込めれば解決する問題なのかは分からないが、やってみるしかない。

雷は目には見えない。

パチパチと弾ける雷撃が手に収まり切らなくなってきた。これは魔力を増やした結果なのだろうか。

と言うよりも魔力以外の要因は無い、と思う。

質より量とか、量より質とか、考えても仕方ないけど、魔力を込め続けることしか出来ない。

幸い、サイクロプスの進行速度は遅い。

魔術の射程もあるし、まだ猶予はある。

ハジメちゃん、魔力を込めては圧縮収束してねー。広範囲攻撃魔法とか勘弁してよー」

圧縮もしなきゃだし、収束もしなければならないとなると、余計に神経を使う。

いい加減、両手に収まり切らなくなってきた気がする。これを更に圧縮となると、魔力が多いとは言え、中々厳しい物がある。魔力を盛大に放出しているのだ。

結界内だからか、魔力が身体に馴染むように吸収できている気もするが、それも微々たるもののような気がする。

「そろそろ盛大に行ってみよー!」

もはや魔術を抱えた状態だ。ここで暴発されたら、さすがにマズい気がする。

サイクロプスに目標を定め、魔術を放り投げる。

放り投げた瞬間、今まで溜めていた魔力とは別に、魔力がごっそり体内から抜け出て行く感覚に襲われる。

ふらついて転びそうになる。

しかし、放り投げた魔術は天高く飛び去ってしまう。

あれ?射出ミス?

最悪だ。ここに来てやり直しは間に合わない。


サイクロプスの歩みが進み、一歩踏み出したその時、巨大な雷が落ちた。


魔力を盛大に込めた雷属性魔術は、落雷になるのだろうか。

サイクロプスは前のめりに転倒し、動かなくなった。

「生体反応確認!」

「生体反応確認できません!」

戦車から数人の兵士が出てくると、シエルに報告している。

独力で魔物を倒せた、と言うことだろうか。

随分と優位な状況下ではあるが、これは実績に値するのだろうか。

「雷属性でサイクロプスを倒せるのか?」

「いや、でも実際に倒れてるしな」

「雷聖級魔術士なんてこの結界都市にいるのか?」

「事実、目にしちまってるし」

兵士たちが動揺交じりに囁いている。

「静粛にー!!!」

シエルが戦車の上に立ち、一喝する。

「兵士諸君は俺と共にこの顛末を見届けた。これは雷聖級魔術なんかじゃない。雷王の裁きだ。サイクロプスの魔法、魔術耐性が簡単なのは理解もしているだろう。柔軟性の高い硬皮のゴム性質。それを敢えて雷属性で打ち破ったのだ!」


え?

ゴム?

雷に耐性がある?

無駄に魔力を消費しただけじゃん!


サイクロプスは戦車に牽引されていく。このまま結界を出るようだ。

「いやぁ、ハジメちゃん、見事見事。中々の魔術だったよ」

「何で、耐性のある魔術でいかせたんですか」

「サイクロプスを圧倒できる実力を見せなきゃ冒険者ギルドも重い腰を上げないと思って」

「そんなに急がなくても…」

「人生は短いよ~、ハジメちゃんはもっと急げるところは急がないと」

「僕の人生って、まだ数年なんですけど。あ、急速な成長で、寿命が短いとか、あるんですかね」

シエルにじっくり観察される。

「寿命は、何もなければ、85年はあるね」

「見てわかるんですか?」

「え?分かるよ?まぁ、事故とかは考慮してないけど」

さらっと分かるのは置いておこう。シエルは未知の塊なのだから。


冒険者ギルド内は静かだった。

緊急討伐の依頼が出されると同時に軍も出動する。物量、火力、ともに軍が上回るのは当然であり、討伐は軍が終結させる。

無残な姿に成り果てた魔物や魔獣の残骸は冒険者ギルドに引き渡される。

今、冒険者ギルドの建物脇には戦車が牽引してきたサイクロプスが転がっている。

群衆は外で騒いでいる。だから冒険者ギルドは静かなのだ。

冒険者ギルドの責任者マスターと軍の偉いであろう軍服を着た人、その後ろにはシエルに戦車から引きずり降ろされていた兵士、そして立たされたままの自分。

「本当にこの青年がサイクロプスを倒したと言うのかね?」

「間違いありません!」

軍服の人が兵士に問うと直立したまま威勢よく返答する。

「では彼が雷を落としたと言うのは本当ですか?」

「術式展開は確認しておりませんが、魔力錬成は確認しております!」

冒険者ギルドの責任者マスターの問いにも直立したまま威勢よく返答する。

「だそうですが、本当ですか?」

え?こっち?まぁ、やったはやったけど。どう証明すれば良いのか分からない。目撃証言の為に多数の兵士が居る訳だし、そちらに聞いて欲しい。

「一応、自分がやりました」

「加藤さんは人間として登録されていますが、魔人種でしたか?」

あ、魔力総量を疑われている。

ハジメちゃんは間違いなく、人間だよ?そう勝手に判断して登録したのはそちらだよ?」

「それでは再登録を」

「そちらの不手際にこちらが手間取らされるのはどうかと思うよ?そんじょそこらの属性剣持ちの剣士として扱われては困るなぁ。正真正銘の魔剣士ですよ」

「本物の魔剣士ともなれば、Aクラスに匹敵します」

ハジメちゃんはDランク、迷宮にも入ったことが無いのに、いきなりAクラスで冒険者ギルドの制限を受けるのは如何なものかねぇ」

制限?

「制限とは心外です。厚遇と言って頂きたい」

「冒険者ギルドの責任者マスターともなれば分かるでしょう、真の強者はSランクかBランクだ。Aランクは現状に甘んじる怠惰な立場だ」


AランクよりBランクが強い?

どゆこと?

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