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41 闘技場

闘技場の場所は大体わかった。それは歓声だ。

そこはまるでローマのコロッセオ、どころではない。前の世界のドームだ。

漏れ出る歓声は凄い。今日は特別な催し物があるのだろうか。

中に入ると、歓声の意味が分かった。

「賭けもありなんですね」

エントランスにはズラリと受付が並び、手書きの掲示板には各対戦の倍率も書かれている。

正直、賭け事はよく分からない。競馬とかもテレビで大きな大会を見たことがある程度だし、街中のパチンコ店にも入ったことは無い。あ、トイレを借りに入ったことがあったか。


闘技大会のルールはシンプルだった。

ギルドランクに応じた相手との対戦。ただ、無差別級も存在する。

武器、魔法、魔術、何でもあり。ただ、アイテムの使用は禁じられているようだ。

特定の制約を伴った、格闘限定、魔法、魔術無し、共通の武器限定、などもあるらしい。

基本的に午前中は決まった対戦が行われ、午後は腕試しの自由対戦が多くなるらしい。

ハジメちゃん、100円から賭けられるよ。試しに賭けてみる?」

「事前に対戦者の公開ってされてるんですか?」

「対戦が決まった瞬間から、闘技場の部屋に隔離されるんだよ。鑑定眼ユニークは使えないよ。対戦開始の10分前に賭けは締め切られるしね」

うむぅ。ズルはさすがにマズいか。

「午前中は真面目に戦闘を観察して勉強するのが主だね。倍率も高くないし。午後は乱戦が多いし、倍率も高いのが多い。まぁ、一獲千金を狙うなら、午後かな」

いや、一獲千金は構わない。十分財産は獲得してしまっている。不本意な形でだけど。それを賭けをしてまで増やそうとは思えない。

「いえ、結構です…。賭け事で手持ちを増やすという考えは…」

「あらま。随分と頭の固いことで。でも冒険者も命を賭けてる職業だとは思うけど」

それを言われると、中々考えさせられるところもあるのだが。

「よし、ハジメ。見本をみせてやろう。来い」

え?連れて行かれるのかと思ったが、ビーに引きずられたのはシエルだった。

「あー、はいはい。そゆことね。ハジメちゃん、受付で特別席買いな」

シエルはビーと並び、特別な受付へ進んでいく。

ロードと一緒に、観戦受付に進んでみる。

「今日の特別席って空いてますか?従魔も一緒に入れる部屋で」

「特別席は2種類ございますが、闘技場に近い席と、3階の全体を見やすい席、どちらが宜しいですか?」

「近い席の方で」

「1日観戦で5万円です」

高っ!でもシエルに言われたし、これは必要経費だろう。

チケットとマップを渡される。

マップと現在地を比較して。と考える前に、案内表示があった。特別席はこっちか。

「チケットを拝見します。特別席内は自由席です」

誰も居ない。最前列中央を陣取る。ここなら真正面で観戦できる。闘技台より少し高い位置に居るから、観戦に向いていると言えるだろう。


最初の対戦枠は40分後。映画館みたく、何か軽食を買ったり、トイレ行ったり…

そのアナウンスは唐突だった。

「本日、午前中最初の対戦は40分後を予定しおりましたが、緊急対戦を開催します。なお、こちらの対戦はベット出来ません。繰り返します…」

ビー、それにシエルも大分強引な受付を通したことが安易に予想できる。

「対戦詳細は短くもありますが、対戦はB級冒険者とS級冒険者です。繰り返します…」


詰め詰めだ。特別席は一斉に埋まった。闘技場外にも案内されたのだろうか。闘技場外周の一般席も続々と埋まっていく。

闘技台に左右から上がる。シエルは日本刀を携えている。ビーは上半身裸で革のベルトを纏い、大剣を背負っている。大剣の穴は革のベルトと繋げて帯刀しているのだろう。

「これって、何か合図あるのー?」

「無くても問題ないだろ」

ビーは突貫した。勝手な想像だった。ビーはパワー特化で、スピードは劣る。

全然、そんなことは無かった。適当にも思える突貫の殴りは凄まじい衝撃の波動を吹き飛ばした。

しかし、シエルは1歩も動いていない。簡単に右手でビーの拳を受け止めている。

「最初は格闘な訳?」

シエルは左ひざを繰り上げるが、ビーは簡単に足で払いのける。

シエルはビーの右手を離そうとしない。ビーは左手でボディーを狙うが、やはりシエルの左手によって受け止められる。

純粋な力比べになっているように見える。

ビーが覆いかぶさっている形になっている。

明らかにビーが勝っている気がするが、シエルに負ける要素を感じている様な顔つきをしていない。

仕掛けたのはシエルだった。

シエルは頭突きを放った。体勢から衝撃は強い物とはなっていないだろうが、その衝撃波はこちらにまで飛んでくる。

シエルが手を離したのか、ビーは飛び下がり、大剣に手を掛ける。

「スケジュールがあるんだ。その選択は間違ってないな。武装制限は解除だ」

「同意だ。貴様の手加減も無しにして貰おうか」

「……」

シエルは何かを呟いたが、聞こえない。

無数の剣が現れる。多種多様な剣だ。

「…あ!」

シエルに貰った短剣がシエルの周りにも現れていた。

それらは一斉にシエルを囲み、蛇の様にビーへと襲い掛かる。

ビーの大剣の一振りで、その大半は吹き飛ぶ。弾き飛ばされた無数の剣は散らばる訳でも無く、消失する。しかし、シエルの周辺で再び現れる。

1歩。

また1歩。

ビーは一振り、また一振り。

1歩ずつ、シエルに近付く。

シエルの連続出現の速度が変わらない限り、ビーは確実にシエルへと接近していく。

このまま行くとビーの間合いに入る。


「くぅ!」


ビーの一振りが止まった。弾け飛ばせない剣が存在した。それは、ビーの大剣と同じ大剣だった。

シエルは本当に何でも出せるのか?

その後現れる剣は、全てビーのと同じ大剣だった。

片手で大剣を振っていたビーだが、今は両手で苦慮している。

僅かな隙にビーは大剣を闘技台へと突き立てる。

シエルの出現させていたビーと同じ大剣の全てが砕け散る。

シエルは驚いた顔を見せる。

好機と見たのか、ビーは大剣を闘技台から大剣を引き抜き、シエルに接近する。

「そう言う、熱いの、嫌いじゃないよ」

シエルの速さが上回った。

ただ、回避しての回し蹴り。

それだけだ。

ビーは壮大に吹き飛び、闘技場の内壁に激突する。

土煙で姿は見えない。ビーは動かない。


終了を意味するブザーが鳴る。

『場外・意識消失判定』


慌てて席を立つ。戦いは5分も無かった。受付はモニター観戦している人もおり、ごった返している。シエルは!ビーは無事なのか?!人混みを掻き分け、受付脇に救急窓口のドアがあった。

飛び込む。

「お。ハジメちゃん、ちゃんと見てた?」

「見るも何も、ビーさんは無事なんですか?!」

「ビーが俺の蹴り位で死ぬわけないじゃん。とりあえず、表の騒ぎが収まるまでここで過ごすか。裏口から出るか…」


心配して損した。

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