34 鉱脈と配下
到着した場所は土砂崩れになっており、言葉通りだった。
ゴロゴロとした岩に紛れて、光るものが見える。つるはしを持ったゴブリンチャンピオンに、岩を砕いてもらうと、岩の断面には見覚えのあるものがあった。
「これって屑魔結晶ですよね!」
研究所で教授に見せられたものと一緒だ。それがこの岩には含まれているようだ。
「これは結構な当たりくじを引いたかもね」
シエルも屑魔結晶付近を金槌で叩き割り、手にして確信したようだ。
でもクエスト発注書では50キロが3つだから合計150キロ。錬金術を使ってしまえば無駄なく回収できるであろうか。そもそもキューブってそんなに触ったこと無かったな、あれって重いのか?質量とか…。
「あー、一ちゃん、錬金術士ってのがギルドにはバレてるけど、デカいキューブにして持ち帰るのは、後々面倒なことになると思うよ?牽引車に載せきれないってのもあるけど」
確かに、別の都市部の錬金術士の仕事をスルーさせてしまうからか。
適度な純度、かつ適度な大きさにして持ち帰る。
「って、じゃあ何で最初から持ち帰れない物の採掘クエストを受けたんですか?!」
「いや?牽引車は寝床とチャンピオン運ぶために出しただけだよ?持ち帰るのは俺のアイテムボックス使えばいいし」
シエルはどこまで見通して行動しているのか全く分からない。
とにかく、適度な純度、かつ適度な大きさにしてアイテムボックスに入れてもらう。
シエルは土砂崩れの中心に上り、辺りを見渡している。
「ロック」
土砂崩れした部分の全てが一塊の正方形の岩になった。
「凄い魔法が使えるんですね!」
「いやいや、ただの土魔法だよ?そこにある土砂を一塊にしただけだよ?何も無い空間から出した訳じゃ無し、触媒があるんだから初歩だよ、初歩」
言われてみればそうだ。発想が無かっただけだ。今までは魔力で土を形成して射出すると言う攻撃魔法しか考えていなかったが、キューブの錬成と同じことだ。
「じゃあ、ここから魔結晶だけを抽出してみてよ」
適度な純度、適度な大きさで複数を抜き出す…。
ゴロゴロ出てくる。これはもはや鉱脈だ!
まだ、この岩には魔結晶を感じる。
全て取り出す。適度な純度、大きさは小さくなっても良い頃合いだろう。
「じゃあ今度は、この何にも入ってない岩を…レンガくらいかな?それ位に変形して」
なるほど、このまま放置するわけにもいかないか。
イメージが沸かない。ん、んー、ブレイクロック?
ガコン!
岩に一斉に亀裂が走った。レンガが出来ている。しかし、岩から魔結晶を抽出した分だけの空洞があったのだろう、レンガはすぐに崩れた。立ち位置考えないと危険だな。
「じゃあ、本来の採掘のやり方で行きますか。チャンピオン!適度な間隔でお互いの穴が崩落しない程度に掘って行ってくれ!」
「分かったのだー」
「掘るのだー」
チャンピオンは物凄い勢いで岩を砕いて穴を作っている。
「一ちゃんもやってみ」
つるはしを渡された。そりゃそうか、採掘しなきゃ。
つるはしなんて前の世界でも持ったことが無い。とにかくやってみるしかない。
ガン!
小さく穿たれた。
あれ?硬い?今度は本気で、思いっきり振り込む。
ガン!
さっきよりは、多少は…。
え?弱い?チャンピオンがフルパワー過ぎるのか?こっちが弱すぎるのか?
チャンピオンは既に崖の中に入っている。時折ジャンプして岩を叩き割っている。あ、後から入って来れるように配慮してくれているのかな?
チャンピオンをよく見ると、採掘士。そんなスキルがあったとは。確かに前の世界でも、昔の熟練鉱夫とかはこれに近いものをもっていたであろう。今やドリルや重機が存在するもの…。
この結界内に持ち込めない様々な理由があるのだろうが、こう言うスキルが無いと、別の都市部へのキューブの供給が止まってしまうだろう。
とりあえず、チャンピオンに近付いて、鑑定眼で観察。
そして自分を鑑定。
採掘士の獲得を確認。これで少しは楽に。
大分楽だ。スコップで砂山を崩している感覚だ。鑑定眼、賢者、便利だ。
「もうダメー」
それでも根を上げるのが一番早かったのは自分だ。
「ちょっと休憩したいのだー」
「喉が渇いたのだー」
チャンピオンも穴から出てくる。ゴブリンは汗が出ないのか?
腰に下げた革袋、おそらく水筒だろう、水分補給をしている。
「汗だくなのだー」
「水分とミネラルは必要なのだー」
「これを飲むのだー」
…昨日を思い出す。茶色い水。
「おいチャンピオン!人間とじゃ飲み物が違うんだよ。ほれ」
シエルがペットボトルの飲み物を投げてくれる。助かった!腹を壊す心配が。
シエルが指を鳴らすと、チャンピオンたちの頭上に水だまりが浮かび、破裂する。
「うふゃ!」
「さっぱりなのだー」
「気持ちいいのだー」
「まだまだ掘れるのだー」
なるほど、魔法はこう言う使い方も出来るのか。研究所では的が有ったからどうしても狙うとか、壊すとかに集中していた。考えようによっては生活魔法として使えそうだ。
あれ?ビーがいない。
「ビーさん、どっか行ったんですか?」
「周辺の魔獣調査~、ちょっと気配を感じたからね」
気配察知とか探査とかのスキルが使えるのだろうか。
試しに魔力感知をしてみる、が、届く範囲にはいなさそうだが。
「大剣は持って行ったんですか?」
「いや?あいつがフィールドで獲物を振り回すことは無いよ。基本、迷宮内で、戦うに値する相手と認識しない限りは、あいつは素手だから」
それならなおさら拳闘術とかを持っていないのかが不思議である。
そして昨日聞けなかった案件1。
「そう言えば、昨日、聞きそびれちゃったんですが、テイマーってどんなスキルですか?」
「テイマーはスキルじゃないよ。職業だよ」
「職業?」
「従魔術士。戦闘職でもあるし、支援職でもあるし、運搬職でも、幅広い職業の総称だよ」
「従魔術士になると、思念伝達、念話が使えるようになるから、魔物や魔獣を使役出来るんだ」
「どうやってなるんですか?」
「一般的には戦って屈服させて、主従契約の確認をする、そして回復させてあげて、裏切らなければ成功、逃げられたら失敗。こんな感じ」
懸念事項だったのは、戦うのは本人じゃなくても良いらしい、主従契約を持ちかけて回復させてやる、そして見守る、と言う流れの様だ。なんだか一瞬虐待を疑うが、魔獣に関係なく、一般家庭のペットだって主従関係を明確にするための、餌付けなどの飴と鞭による教育があるのだ。
それが魔物や魔獣相手ならそれくらい当然か。
「じゃあ僕もそれなりに強くなったり、シエルさんが痛めつけた魔物や魔獣にそれを行えば、従魔術士になれますか?」
「何言ってるの?一ちゃんは既にゴブリンロードと従魔契約がお済ですよ」
「え?いつ?」
いつだろう。
「昨日、ゴブリンロードに頭下げられてたでしょ。何でも言ってくれって」
あれだけで従魔契約が成立したことになるのか?!
「だから、チャンピオンを貸してくれたんだよ?」
慌てて自分を鑑定する。どこだ?!そんな項目は無いぞ!
従魔契約:ゴブリンロード 配下156
お、おぅ。もしかして、もしかしなくても昨日の負傷ゴブリンもカウントされているのか。
「一ちゃんは、万能言語持ちだからな~」
「休憩はこのくらいにして穴を掘るのだー」
「掘るのだー」
「いくのだー」
配下が頑張っている。




