33 魔法装備の機能
冒険者の装備する魔法装備とは驚きが沢山だ。
シエルが初めてくれた靴も、大きいとは思ったが履いてみたら魔法の力なのか、ジャストフィットした。
冒険者ギルドでギルドカードを発行して貰ったお祝いの装備もそうだ。簡単そうな留め具を付けるだけでサイズはジャストフィット。まるで溶接されたかのような固定感。重量は感じるが、タブ付いたり、ガチャガチャすることも無い。
しかし、それはどうやら、魔物にも適用されるらしい。
ゴブリン達によって身ぐるみを剥がされ、ただの死体と変わり果てた冒険者の装備品は、ゴブリン達が装備しようとしている。
ゴブリンチャンピオンは鉄の鎧を身にまとい、満足そうだ。
槍を手にしたゴブリンケンプファーは嬉々として振り回している。
「これは今のままがいいな」
ゴブリンシャーマンはシエルが冒険者の杖を取り上げ、へし折られて悲しそうだ。
シエルとゴブリン達は当たり前のように、使わなさそうな戦利品も含めて持ち帰るようだ。
冒険者の死体はそのままだ。一緒に帰るしかない。
「シエルさん、あの死体はどうするんですか?」
「まぁ、狼系の魔物とかが匂いを嗅ぎつけて掻っ攫っていくんじゃない?」
自然の摂理上、そうなのかもしれないが、何か、忘れてはいけないことがある気がする。
(ファイアーボール)
一応、火葬した。強めに。開けた場所だったので燃え広がることは無いだろう。
「んで、ビーはまだ寝てんのかよ」
ビーは残留組と共に村の隅で地面に大の字で寝ていた。
「お帰りなのだー」
「生き残りはどうなのだー」
手当を受けたであろうゴブリンが近寄ってくる。
何も答えられなかった。
「でもこの人間たちのお陰で復讐を果たすことが出来たのだー」
「持ち帰った装備品はこれからのために保管するのだー」
ゴブリンロードが近付いてくる。
「感謝なのである」
頭を下げられた。こちらも遅れて頭を下げる。ロードもおおよその検討はついているのだろう。そしてこちらの思惑も理解しているのだろう。
「何か必要なことがあったら何でも言って欲しいのである」
「ありがとうございます」
「じゃあさ、この魔結晶の埋まってる地域知らない?」
シエルが空気をブチ壊して入ってくる。手にはクエスト発注書、魔結晶50キロの奴だ。
「…誰か知っているのであるか?」
「この丘の裏手にがけ崩れした場所で見たことがあるのだー」
「同じかどうかは分からないのだー」
違っていても良い。明日にでも3人で、車で行ってみよう。
「走ったから疲れたのであろう。水でも飲むのである」
ゴブリンが持ってきた木製のコップには、やや茶色な液体が…。
「いや、全然喉乾いてないです!鍛えてますんで!」
「であるか」
「いつでも言って欲しいのだー」
シエルが笑いを堪えている。
時計を見ると22時を過ぎていた。日が昇る時間を考えると、そろそろ寝た方が良いかもしれない。ビーはもう寝ている。睡眠時間が長そうだ。夜明けには起きていそうだ。
シエルはアイテムボックス、もといアイテムガレージから牽引荷台車両を出してきて、車と繋げる。荷台にロールマットを敷く。そして薄い毛布を渡してくる。
「一ちゃん、キャンプとかしたことないでしょ。これくらいしないと眠れないでしょ」
前の世界で子供の頃にキャンプ程度はしたこと位はある。林間学校も行ったのだ。
ここまでのサバイバル活動はしたこと無いが…。
荷台の寝心地は悪くなかった。見上げる星の輝き。
でもさっきの戦闘がどうしても思い起こされる。魔物に囲まれ、一方的に襲われるあの光景。
人間の叫び声、血が噴き出すリアルな音、肉が裂け、骨が砕ける音。
眠れそうにはない。
「おい、夜明けだ」
ビーの声で起き上がる。
眠れた。意外にぐっすり眠れた。頭がスッキリしている。シエルはまだ眠っている。起こさないように荷台から降りる。
「ビーさんは早いんですね」
「寝るのが早いんだから、これ位が当然だ」
じゃあ、もう少し眠らせておいて欲しかったとは言えない。
それでも意外と頭がスッキリしているのは、興奮しているからだろうか。まるで修学旅行の夜明けの気分だ。まぁ、遠い昔の話だし、友達と一緒に盛り上がった訳でも無い過去だが。
「昨日、何かあったのか?ゴブリンどもの生活サイクルが妙だ」
昨日の10人の冒険者の話をビーに話した。
聞き終えたビーは頷くこともなく、立ち上がった。
「自分の力量を弁えない奴は早死にする、それだけだ。ハジメはそんなことはしないと思ってるぞ」
力量、かぁ。結界内には迷宮が存在する。周辺をフィールドと呼ぶらしい。迷宮の入口に近付く程、強力な魔物や魔獣が棲んでいる。
ボア系の魔獣やゴブリンは比較的、迷宮から離れた場所でも確認されているようだが、それでも迷宮近くにも更に強力なのが棲んでいるらしい。
魔獣や魔物には、急所となる心臓や脳、以外に魔石と言うものが体内にあるらしい。魔結晶よりも高密度の魔石。これは宝飾や加工に需要があり、高値で取引されるらしく。討伐の際に得られればそれはそのまま討伐者に所有権があるため、冒険者の旨味になるようだ。
昨日の10人はそれを狙っていた。正規の手続きを踏まずに結界に入ったのか、本来のクエストとは別で行動したのかは分からないが、小遣い稼ぎを狙った。そして死んだ。
ただそれだけ。そう認識することにした。
シエルが起きる頃には、ゴブリン達も起きて活動していた。
昨日の食べきれなくなった肉は干し肉にしているようだ。肉を適度な大きさにカットし、風通しの良い所に干している。そのあとは確か、火で炙ったりするんだっけ?でもそこはゴブリンも慣れているのかテキパキと作業を進めている。
「なんだ、ゴブリンは働き者だなぁ」
「干し肉の作業はほとんど終わったのだー」
「量が多いから大変だったのだー」
「備蓄なのだー」
ゴブリンは堅実なようだ。
「昨日言っていた光る石のところに案内するのである」
ゴブリンロードはそう言って手を上げると、つるはしを持ったゴブリンチャンピオンが集まってくる。
「チャンピオンを採掘の手伝いに連れて行くといいのである」
「案内も出来るし、採掘はお手の物なのだー」
シエルの車にビーと共に乗り込む。相変わらずリーダーは真ん中だ。
牽引車にはチャンピオンが乗り込む。鉱山送りみたいだ。
「場所はここから丘を右回りに行くと行けるのだー」
いざ、魔結晶探しに出発。
ブックマークしてくださっている方、評価を付けて頂いた方、その他の方も、読んで頂きありがとうございます。
この様に遅々として進まない話に業を煮やしている方もいるでしょうが、ご容赦ください。
また、連載出来ていても、その他の機能の使い方が未だよく分かっていません。
お手隙の方や、興味をお持ちいただければご教授の連絡お待ちしております。
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引き続き、読んで頂けるように努力いたします。
何卒よろしくお願い申し上げます。




