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30 解体士

シエルとビーはもうほとんどの魔獣を倒している。

2人は魔獣の残骸をアイテムボックスに回収している。

こちらは相変わらず回避に専念し、頭蓋骨を狙って倒している。これで13頭のはずだ。

ハジメちゃん、教えたこと全然やってないじゃん~」

1対1なら試せるが、まだ数頭残っている。時間差攻撃はマズい。ここはシエルを無視だ。

よし、最後の1頭だ。

これでシエルの戦い方を試せる。

左手の盾を構え、鼻先と同じくらいに腰を落とす。突進してくるレッドボアの距離に呼吸を合わせる。

来る!

「うわっ?!」

突進と同時に突き上げを食らった。

左手の盾が上へと逸らされる。このままでは真正面から突進を受けることになる。

「この!」

無我夢中だった。

右手の片手剣を至近距離で斬り上げる。

顎から頭蓋骨まで簡単に斬ることが出来た。

数歩下がらされた形になるが、レッドボアは絶命していた。

「おぉ、予想外の攻撃に上手く反応できたね。これでボア系の2パターンの倒し方が分かった?」

「初戦にしては十分な戦い振りだったぞ」

概ね高評価なようだ。

残敵なし。倒したレッドボアの数を数える。丁度15頭だ。シエルとビーが数えて打ち漏らしてくれたのだろう。

それにしてもシエルはともかく、ビーは大剣使いなのに、素手で倒していた。あれだけの数を倒す実力を持ちながら何故体術を持っていないのだろうか。

「ビーさんはなんで大剣使わないんですか?」

「血が付いたりすると、手入れが面倒だからな。それにボアの鼻先は柔らかいから、殴っても拳を痛めることは無い」

柔らかいのか…?

「でも何で体術を持ってないんですか?」

「力任せに殴っているだけが体術じゃないからだろう」

なんとなく納得した。ただのパワー系と言うことだ。でも大剣を使ったら相当強いのだろう。何せ加護持ちなのだし。

「じゃあ、素材回収のレクチャーするから、ハジメちゃんはこっち。ビーは他を集めろ」

「おぅ」

シエルは1頭のレッドボアの前で短剣に似たナイフをアイテムボックスから取り出して屈む。

『解体用ナイフ』

鑑定したら出た。そんな装備もあるのか。

「鑑定眼を発動しながら見てな」

シエルはレッドボアの牙の根元へナイフを深く滑り込ませ、抉る。反対も同様に抉ると、牙が取れた。もう片方の牙も同様に取り出す。

「やってみ」

シエルは解体用ナイフを渡してくる。

え?いきなり?シエルを見ると、『解体師』のスキルがあった。

自分を見ると、『解体士スキル』を獲得していた。

頭の中に解体方法が浮かんでくる。それに従って、やってみる。シエルと同じ手順だ。牙は簡単に取れた。これがスキルの力か。獲得したスキルも下位のもので、実際に見たりすれば実践方法が分かるようだ。これも鑑定眼ユニーク賢者ユニークのお陰だろうか。

ビーが集めてくれたレッドボアの牙を取る作業を続けていく。牙を取ったレッドボアはシエルがアイテムボックスへと収納している。

1頭に牙2本だから合計30本の牙を手に入れた。

牙もシエルのアイテムボックスに収納してもらう。

「じゃあ、ゴブリンのキャンプに移動するか」

シエルとビーに続いて車に乗り込み、ゴブリンのキャンプ地に向かう。


あれ?いない。

テント周辺にゴブリンたちはいなかった。時間的には夕方だから、言っていた時間に間違いは無いはずだ。

でもまぁ、ゴブリンは時計を持っていないし、夕方何て曖昧な時間は仕方ないだろう。それにゴブリンが集めてくれているものを運搬してくるのも体格的に大変なのかもしれない。

待つ時間はシエルと一緒にレッドボアの解体をしていく。

「肉と皮は売れるけど、レッドボアの骨は基本的にゴミだから。でも頭蓋骨はゴブリンが欲しがるかもね。討伐の証みたいにしたり、被ったりしてるから」

皮と肉を剝がすのは、分かっていても神経を使う。

これが魔獣肉か。研究所でも食べたことがあるが、こうやって冒険者ギルドを介して流通していたのか。普通の畜産に比べて、集めるのに危険が伴うために高価なのだろう。

ビニールシートに肉と皮が積まれていく。

「バーナー寄こせ。腹が減った」

ビーはいつの間にかゴブリンたちが集めたであろう薪を手にしている。

ハジメちゃん、火魔法で着火してみようか」

シエルはアイテムボックスから鉄板とコンクリートブロックを2個取り出した。

ビーはそれらを受け取り、コンクリートブロックを端に並べる。その上に鉄板を置き、薪を下に敷き詰めている。

「ハジメ、着火しろ」

促されるまま、火魔法を薪に向けて放つ。

ボフッ!

いかん、薪を吹き飛ばしてしまった。

「ハジメ。出力位コントロールしろ」

「す、すみません…今まで最大出力ばかりだったもので…」

「とりあえず、鉄板が溶けない程度に温めろ」

この鉄板の素材が何なのか分からないが、鉄は1500度で溶けるはずだから…。

とりあえず、最低出力に意識を集中する。

…ラ、ライター級。

「なんだそれは。その10倍の火力にしろ」

加減が難しい。

「良いぞ。鉄板をまんべんなく温めていけ」

「ビー、塩コショウ程度ならあるぞ。使うか?」

「寄こせ」

シエルのアイテムボックスは何でも入っているのだ、と感心しつつ鉄板は順調に温まっているようだ。

シエルがステーキ肉の様に厚切りにしたレッドボア肉を持ってくる。片手にはゴミと言っていた骨を鋭利にしたものも持っている。

「ハジメ、もういいぞ。焼いていく」

鉄板全てにステーキ肉が敷き詰められる。ビーは塩コショウを適度に振りかけ、焼き加減を見ている。

「ビーさん慣れてますね」

「冒険者はこれ位出来ないとやっていけん。食料は基本的に現地調達だからな」

確かに。アイテムボックスを使える人間がいるなら別だろうが、リュックに保存食を…なんて言ってたらこの世界の冒険者は務まらないだろう。

ビーは焼き加減を見つつ、肉を裏返していく。

「ハジメ。食ってみろ」

2本の骨に刺されたステーキ肉をビーから受け取る。見るにミディアムレアな感じだ。ビーの好みなのか。

「良いんですか?」

「お前の獲物だ」

「ありがとうございます…では」

やはりミディアムレアだ。美味い、塩コショウだけとは言え、やはり魔獣肉は美味い。

「焼き加減ベストですよ!」

「なら俺らも食うか」

シエルも腰を屈めてステーキにかぶりつく。ビーは1枚を1口だ。

結局、ステーキを2枚食べた。満腹だ。シエルも同じくらいだが、ビーは残りをぺろりと平らげたがまだいけそうな感じだ。

「食いすぎると、眠くなっちまう」

半分と言ったところだろうか。

片づけをしていると、声が聞こえた。

「肉の匂いがするのだー」

「いい匂いなのだー」

ゴブリン達が大袋を背負って帰ってきた。

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