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26 西東京結界都市

結界都市へ向けて高速道路に乗ったはいいが、周りの車にドンドン抜かれている。

最低速度で走っているのだから。シエルはアクセルを踏み切っている。

前の世界で見ていた都市部の風景から郊外へと進んでいく。郊外の先には一軒家が目立ち、耕作地域が多くなる。

しかし耕作地域を抜けると、東京とは思えない光景が広がっていた。平原だ。

しばらくして高速道路ではなく、一般道に降りた。道路はアスファルトから均した土の道だ。

『この先一般車の走行注意』

悪路と言う程ではない。ロードローラーが整備しているのだろう。

前方には透明に近い水色の壁が見えてきた。あれが結界だろうか。

「前方に見えるのが、結界だよ。西東京結界都市は、迷宮を中心に円柱状に半径50キロを塞いでいるんだよ」

半径50キロか。狭いのか広いのか、良く分からない。

「上空も塞いでるんですか?」

「空を縄張りにする魔物や魔獣の最高高度以上には伸ばしてるけど、塞いではいないよ。ドーム状に結界を張ってある都市もあるけど、ここはそうじゃない」

空飛ぶ魔物や魔獣か、と言うことは…

「ドラゴンもいるんですか?」

「どんなドラゴンを想像してるか分からないけど、この先にもドラゴンはいるよ」

おぉ、やはり居るのか!ドラゴン!西洋的なドラゴンか、東洋的なドラゴンなのか、それは見てみないことには分からない。楽しみだ!

「見えてきたよ、あと少しで結界都市だ」

再び、耕作地域に入り、木造住宅や石造りの家が目立つようになってきた。道路はそのまま結界都市のメインストリートになっているようだ。所々で脇道はあったが、狭くは無く、車が交差する程度の広さはある脇道だ。

建物は木造も石造りも大体3階程度だ。それ以上の高さの建物は無かった。

「建物の高さが低いですけど、建築制限でもあるんですか?」

「普通の都市なら、普通に鉄筋コンクリート造りでエレベーター付けりゃいいけど、魔力の濃い結界都市は魔法で造るか、魔力素材でなきゃ、すぐ壊れるんだよ」

なるほど、高いと階段の上り下りが大変だと。魔力素材のエレベーターを作る余裕があるなら、土地も余っているし、新築すればいいだけのことのようだ。

馬車や荷車がいるのには驚かされた。ちらほら車ともすれ違ったが、外観が旧式っぽく見える。魔力素材で作られているのか、年代物が多そうだ。

「着いたよ。ここがこの西東京結界都市の冒険者ギルドだ」

石造りの立派な3階建てだ。

「やっと着いたか、穴が痛ぇ」

ビーが車から降りると車の後ろが跳ねた。スプリングやサスペンションに相当負荷が掛かっていたのだろう。

正面玄関には、受付の案内表示と報告の案内表示がある。入口が違うのだろうか。

シエルとビーに付いて建物に入る。大きなロビーがあり、受付カウンターがある。ロビーは広くスタンディングテーブルがいくつか並び、大きな掲示板もある。でもその割にあまり人がいない。派遣会社との契約だからだろうか、スーツ姿の人が数人居た。いかにも冒険者、と言う感じの人が10人位立ち話している。彼らがギルド所属だろうか。それとも報告後の立ち話か。

シエルとビーはスタスタと受付カウンターの女性に話し掛ける。

「この子の新規ギルド登録を」

「は?」

女性はシエルの言葉に混乱の表情を見せ、こちらも見てくる。

「ど、どちらの会社に所属されているのでしょうか?」

「直だよ、直」

「随分とお若い方の様に見えますが…」

「…ハジメちゃんは20歳だよね!」

こちらに振ってきた。圧が凄いこれは頷くしかない。

「保証はどちらに…」

シエルとビーがカードの様なものを受付に置いた。覗き込んでみる。

どうやらシエルはSランク冒険者で、ビーはBランク冒険者の様だ。察するにシエルは最高位なのだろう。

カードを見た受付の女性は慌てて後ろの上司らしき男性を連れてくる。

「大変失礼では御座いますが、別の身分証を拝見させて頂くことは可能でしょうか」

えらく腰の低い対応だ。

シエルは内ポケットから黒革の手帳を取り出す。

『内閣官房国家安全保障局戦略級指揮官』

ピースサインが写りこんだ顔写真付きの身分証だ。公務員、それも官僚だったのか。

そう言えばカレンが指揮官殿と呼んでいた。こう言うことか。

「で、では、登録をさせて頂きますので、別室にてこちらの書類に記入をお願い致します」

いつの間にか受付の女性が後ろに回って来ていた。

通された部屋で書類に目を通した。

書類の生年月日に悩んだ。この世界の暦が分からないし、誕生日はどうしたものか。前の世界の誕生日?悩んでいると、察したのかシエルがペンを取って記入した。

誕生日は4月28日になった。

住所は教授にも言われていたし、研究所の住所を記入した。

途中まで書いて悩みどころも出てきたところで、受付の男性が入ってきた。女性は3人分のお茶を持ってきた。

「彼は若い。将来性を考えて、この項目は空白で構わないか?」

シエルが指さしたのは使用する武器の項目だ。本来なら、片手剣か双剣と記入すべきところだろうが、シエルは空白を示した。他の武器に適性があればそちらになることを意味しているのだろうか。

「拳銃や小銃の携帯許可はお持ちでしょうか?」

手にしたこともない。

「持たせてない。使用は結界内で俺の監督下で使用することはあるかも知れないけど」

「それでしたら、全て、とご記入をお願い致します」

従って記入する。これで記入は済んだ。

「それでは最後にこちらのパネルに手を」

見たことがあるパネルだ。魔力総量を図るプレートだ。

「こちらは今年から導入された鑑定パネルです」

そう言われてプレートに手を付けようとしたら、シエルに手を掴まれた。

「ちょっと連れしょん、行こうか」

「俺も行く」

ビーも立ち上がる。その圧に男性も立ち上がる。

「それではご案内致します」

個室を出、ロビーを歩きながらシエルが耳打ちしてくる。

「都合の悪いスキルは偽装しな」

そうか、研究所生活で獲得した不可解なスキルを隠さなければ。

それでもシエルがそんなことを気にするとは思っていなかった。

トイレで偽装するとしよう。

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