25 ビー
ビーはとにかくでかい。
魔物と言われても納得してしまいそうなくらいでかい。
海軍基地の施設を出るまで常に屈んで移動している。
外に出て改めて見上げる。身長と言うより、体高と言う表現の方が正しいだろうか。
2.5メートルはある。しかもただ背が高いだけではない。前の世界でこんな背の人はバスケットボールプレイヤーとかプロレスラーとか。いやそれよりもでかい。
肩幅も半端ない。筋肉も相当だ。遠くから見るとボディビルダーだが、近くで見ると恐怖だ。
ビーの身体を眺めていると、倉庫からフォークリフトが走ってきた。
この世界にもフォークリフトがあるようだ。パレットの上に何か積まれている。
巨大な剣だった。2メートルはあるだろう。刀身に丸い穴が開いている。巨大さ故の軽量化加工だろうか。ビーならでは装備って感じがする。
「収納するから、ここに突っ込め」
シエルはアイテムボックスを開き、ビーに促す。ビーは片手で持ち上げ、シエルのアイテムボックスに差し込む。
ちなみにビーが大剣を持ち上げた瞬間、フォークリフトが大きく揺れた。相当重いのだろう。
興味本位でビーを鑑定してみた。
魔力総量0
大剣神の加護
大剣天10
大剣帝10
大剣王10
大剣聖10
大剣術10
極威圧
強威圧
中威圧
威圧
圧力
魔力封印
身体拘束
極威圧って。これがオーラの正体か。その影響をあまり受けないのは、ビーが見込みがありそう、と認めてくれたからだろうか。それとも常時発動ではなく、都度発動とかなのだろうか。
それと魔力封印のせいで魔力総量が0なのか?身体拘束と共にバットステータスと言ったところだろうか。
以前シエルに超戦闘特化とか言われたが、ビーは大剣においては究極の戦闘特化だろう。
「ハジメの得物はなんだ?」
「丸盾と片手剣です。もう1本後ろ腰に差して双剣にも対応できるようにしています」
「魔術も使えるのか?」
「基本的な魔術は一通り出来ます」
「なら、軽装魔剣士ってところか」
なるほど、そんな分類があるのか。そうなるとシエルは剣士で、ビーは大剣士とか重剣士になるのか。
この面子を見ていると、剣士ばかりだ。ビーは魔法が使え無さそうだが、確実に前衛だろう。
シエルと僕は魔法が使えるので、前衛両翼といったところだろうか。
「とりあえず結界のフィールドをうろつく程度には頭数は揃ったな」
「どこの結界都市に行くんだ?」
「西東京結界都市だ」
首都東京の西に離れた場所にあるようだ。聞くに途中までは高速道路が整備されているが、結界都市に近付くにつれて道の文明レベルが下がっていくらしい。
「とりあえず、一ちゃんの軍籍登録は後回しにしよう。結界都市の冒険者ギルドに顔出すか」
「ハジメは会社登録しないのか?」
「俺等居るし、冒険者ギルドの縛りだけで十分だろう」
この世界での冒険者は、直接冒険者ギルドには登録できないようだ。
様々な職種に分かれた冒険者の派遣会社が存在する。そこに冒険者は登録するらしい。
調査専門、採取専門、採掘専門、討伐専門、輸送専門、それぞれの派遣会社が代表して冒険者ギルドに登録しているらしい。
冒険者ギルドが様々なクエストの募集を掛け、各社が依頼内容に応じて冒険者を派遣する。そうして様々な職種の冒険者が集まりパーティーを組み、クエストに挑む。似たクエストが募集されれば似た面子が揃うこともあるらしい。
派遣会社内でもランクが存在するらしい。様々な職種でも迷宮に近付くにつれて危険が増すらしい。その為のランクみたいだ。
そして派遣会社内の高ランク冒険者は、冒険者ギルドでも別のランクが存在し、割高な指名制クエストも存在するらしい。
それなのに派遣会社に登録せずに、冒険者ギルドに登録すると言うのはどう言うことになるのだろうか。
「その、現状は対人戦闘と会計士のスキルくらいしかないのに、大丈夫ですか?」
「いいのいいの、派遣会社に入ったらそこ専門のクエストしか受けられないから。それに派遣会社は派遣して利益を得てる訳だから、勤務ノルマとかあるし」
「じゃあ、冒険者ギルドのノルマって何ですか?」
「場違いな地域に出没する魔物や魔獣の討伐だよ」
危険なノルマじゃないか!?
「緊急の場合は駐留している軍が処理しちまうがな」
軍が駐留しているのか。ビーを拘束したのも軍だったし、結界都市には軍も居るのだろう。剣や斧とかの物理攻撃、魔法攻撃をする冒険者。それでも手間取る相手は緊急措置的に銃とか大砲を使うのだろう。
「結界内の産物は冒険者ギルドの管轄で権益だからね。軍は緊急処理の場合と高ランク冒険者の取り締まりをするために駐留している」
普通の冒険者は冒険者ギルドによって組織された結界都市警察機構によって取り締まられているようだ。
ちなみに軍が結界内での活動が消極的なのにも理由があった。魔物や魔獣を討伐しても戦車砲やミサイルで倒すからその素材が破損し、価値が下がるからだ。その辺りの加減は軍には出来ないようだ。
あれ?車が無い。乗ってきた車が無かった。シエルもいつの間にか居ない。
黒い空間が現れ、そこから車が飛び出してきた。シエルが乗っている。
これではアイテムボックスではなく、アイテムガレージの方が正しいのでは…。
今度の車は幌の付いた大きなオフロード車だ。シエルは幌を外し、ビーはドアを使わず跨いで乗る。乗った瞬間、サスペンションが軋む音が聞こえる。この車、若干後ろに傾いている気がする。
「じゃあ、行きますか。一ちゃんは助手席ね。ビーはちゃんと中心に座ってろよ!」
「さっさと行け」
これからが本格的な冒険者生活の始まりなのだろうか。
期待に胸が膨らむ。結界都市は研究所の窓から見る景色とは違う街並みだろうから、どんな感じなのか楽しみだ。
ちなみにビーの体重のせいか、この大きなオフロード車でも高速道路の最低速度でしか走れていない。
しばらく、変わりゆく街並みを眺める時間が続くことになりそうだ。




