22 研鑽
数日経って、魔術も全ての基本は中級まで習得した。体術も5になった。
戦闘の基本は魔法、魔術、物理攻撃のコンビネーションであり、そこから更に自分流を確立していくのが冒険者、とシエルに教わった。人の真似ばかりでは、自ずと弱点や隙が顕著に表れるのだという。魔獣は倒せても、魔物にはそれを突かれてしまうらしい。
今は専ら実戦形式の立ち合いだ。
「思うに一ちゃん、魔法を使うたびに左手を放すのは修正しないとね」
そうだ、魔法を使うには片手に刀、片手を空けなければいけないのだ。癖になってしまったのだ。
シエルは刀を両手にしても魔法を使える。無詠唱で身体の周りに魔法を出現、行使させることが出来る。
自分では最低でも片手をかざさないと使えない。刀を使う時は刀に集中、魔法を使う時は魔法に集中。これが精一杯なのだ。
「不本意ながら、武器、変えてみる?」
そう言ってシエルはアイテムボックスから新しい武器を取り出す。
刃渡り30センチ程の片手剣が2本、小さな丸盾が1つ。
「片手剣に丸盾の装備か、双剣の装備か。刃渡りが短いから魔法を使いやすいだろうし、それはミスリル合金製の逸品だから魔法、魔術との相性も良い。魔術士以上が使う、ワンドに近い物にもなるだろうさ」
ミスリル?そんな伝説的な実在しない金属が存在するのか。まぁ、魔結晶やキューブ、魔鉱石がある世界なんだから、それくらいはあるのかもしれない。
確かミスリルは、銀の輝きで鋼鉄並みで、魔法との相性が良く、銀の性質も含まれていて、アンデットに有効な素材。なはず。
「ミスリルと、ミスリル合金ってのは違うんですか?」
正直な疑問である。
「ミスリルは希少金属で迷宮の奥の方でしか採掘出来なくてね。そのミスリルで作った武器や鎧は勿論、性質を理解すれば強固で有用だけど、更に合金にすることによって性能が上がるんだよ」
迷宮か。確か封印結界で周囲丸ごと覆われている場所。その迷宮の奥にしか存在しない希少金属。
「他に希少金属って、どんな物があるんですか?」
「比較的浅い所には魔鉱石。中間位になると魔鉱塊。奥にミスリル、アダマンタイト、オリハルコン、って感じかな。まぁ、迷宮によっては無い物もあるけど」
前の世界の知識が通用するなら、ミスリルは魔法適性が高い。アダマンタイトはとにかく硬い。オリハルコンはそれらの中間に属する金属なはずだ。
どれも適性があるだろうから、希少だからと言って強弱は付けられなさそうだ。
とりあえず、武器だ。片手剣に丸盾を手にしてみる。やはり防御は重要だ。いまいち魔力障壁と物理障壁の習得がいまいちだからだ。
左手の腕に丸盾を通し、左手で握りこむように構える。拳を握っていてもこれなら今まで通り、魔法は使えそうだ。右手の片手剣も馴染む、これなら振り回されずに扱えそうだ。
「何か、納得した顔してるな、一ちゃん。男の誇り!日本刀をそうも簡単に捨てるのか?!」
戦えないなら、捨てますよ。
シエルは舌打ちをしながら、アイテムボックスから2つの革製の鞘を取り出す。
「1つは右脇、もう1つは左抜きに後ろ腰に使うんだ」
いざと言う時は双剣として、と言うことだ。
それにしてもこの片手剣は持っているだけで、魔力を少しずつ吸収されている気がする。魔力総量が多い身としては、そんなに気にすることは無いと思う。
「その刀身に火でも通してみな、属性剣としては向いてるからな」
刀身に火魔法を通してみる。
…燃えている。
…熱くは無い。
日本刀の時より調整がし易い。
「はぁ、やっぱ片手剣向きか。それが火炎剣だよ」
おぉ、なるほど。これならいけそうだ。
火炎剣は火の付与攻撃になる。
水流剣は水の付与攻撃になる。
風剣は風の付与攻撃と斬空との相性が良い。
土剣は斬属性ではなく、打属性に分類され、刀身の保護にも良い。
氷結剣は氷の付与攻撃になる。
雷鳴剣は雷の付与攻撃になる。
「これは、上手く扱えそうな気がします!」
「そりゃよかったよ」
シエルとの立ち合いは、日本刀の時よりも良い感触だ。連撃も最初から考え直さなければならないが、それも日本刀の時の要領を持ってすれば、大きく遅れを取る訳では無さそうだ。
それでも相変わらず、シエルにはまともに相手して貰っている感覚は無い。
刀身が短くなった分、手数は増えたが、それでも捌かれる。
以前のような焦りはあるものの、悔しさはあまりない。充実感に似たものを感じ始めている。
休憩の時間、自分を鑑定してみる。
短剣術8
剣術10、体術8、属性剣の扱いの効果か、思いの外、習得が早い気がする。
ここまで来ると、もうシエルに防御専門を解いてもらう必要があるのかもしれない。
丸盾は装備していても全然使っていない。
それに後ろ腰の、もう1つの片手剣。双剣の扱いも覚えて行かなければならないだろう。
着実に強くなっている、そんな気がした。
この世界では、ここで学ぶことが、世界を生きることを意味する。
まだ若いのだ。
多少の無理をしてでも強くなければ。




