2 目覚め
黒い世界に飛び込んだ。
フワフワした世界を想像していたけど、そんな感じは全くしない。
何だか、仰向けに寝ている感じだ。
ここは天国なのだろうか、地獄なのだろうか。
自殺は自分を殺すっていうことだから、やはり地獄だろうか。
それにしても地獄感は無い。地獄の入口前なのだろうか。
あ、そうだ。目を開けていない。確認しなければ。
白い。
目の前は白かった。
いや、白い天井だった。
フワフワした世界とかでも、仰向けに寝ている感じでもなく、実際にフワフワのベッドの上に仰向けに寝ていた。
横を向いてみると、点滴台があった。チューブの先を辿ってみると、腕に繋がっていた。
あれ?病院?
反対を向いてみと、窓がある。個室だろうか、空も見える。
「あ、起きた?」
足元の方向に1人の男が立っていた。歳は20代後半といったところだろうか。スーツ姿の男は財布の中を覗き込んでいた。
「加藤一さん?免許証とか無いの?保険証ってこれ何だ?」
健康保険証を珍し気に表裏を確認している。
「う~ん、やっぱここに連れて来て正解だったな」
え?ここ病院じゃないの?
「え?もしかして喋れない?日本人だよね?衝撃で喋れなくなったとか?!」
男は慌てて隣に来て、ペチペチと頬叩いてくる。
「ここは、病院ですか?」
「何だ、喋れるのか。良かった~。ここ?病院って言うか、研究所だね」
研究所?特別な病院なのか?
電子音の後、扉の開く音がする。誰か入ってきた?
「あんたバカなの?意識飛んでた人間の頬叩くとか」
「ん?精密検査終わったんだろ?」
「結果は伝えてないでしょ」
「問題無いからこの部屋に帰ってきたんだろ?」
「そもそも入室を許可した覚えは無いんだけど」
「面会謝絶の札が無かったから?」
「そんな物無いわよ。ってか鍵掛けた部屋なんだけど」
男は視界には入らない誰か、女と静かな口論をしている。
頭を上げてみると、白衣姿の女がいた。男と女は額を合わせている状態だった。
何と言うか、声には出ていないが、険悪な感じだ。
「あの~、ここは一体どこで、私はどうなってるんでしょう」