1 プロローグ
プロット
ダメだ。もうダメだ。どうにもならない。人生詰んだ。
私、加藤一の人生は45歳にして終わるのだ。
いや、終えるのだ。自分の手で、いや足で?
こんな山奥の橋の上から落ちれば即死だろう。
自然と足は震えないんだと実感する。
振り返るとコミュニケーションが得意ではない人生だった。
学生時代も、社会人時代も、友達と言える人は居なかった。
1人で黙々と勉強し、学習塾にも通っていた。
習い事は剣道。
趣味はマンガ。
両親は友達のいない1人息子を心配していたが、
引きこもりと言う訳でもないので干渉はあまり受けずに育った。
大学卒業後は公認会計士として働いていた。
書類やメールならば流暢にやりとり出来たのものだ。
でも話すのは苦手で電話も苦手だった。
よく会議中と称した留守録を利用したものだ。
同僚、取引先と飲食をする機会もあったが、タイミングを見計らっての相槌。
当然、呼ばれる機会はドンドンと減少したものだ。
同時に両親からは最初の頃こそ、
「彼女は?」
「結婚は?」
「〇〇さんのところは結婚した」
などと言われていたものだが、次第に諦めてくれた。
正直、同性ともコミュニケーションが得意ではないのだ。
異性とのコミュニケーションなど尚のこと取れる訳がない。
何でこんなことになったのか。
身に覚えのない横領疑惑による突然の解雇通知。その額5万円。
たかが5万円、されど5万円。横領は横領、弁明の言葉も出せず、突然の解雇通知。
真相究明の文字も頭には浮かばなかった。
だから1歩踏み出すのだ。解放の1歩。最後の1歩。
落下している時の解放感はとても良い。素晴らしい気持ちだ。
ドン!
即死と言っても衝撃音くらいは残るのだなと思い、暗い世界へ旅立てた。