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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第二十章 天地の笑顔
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第三部 謎の少年

 みんなは応戦したものの、ただでさえ元々強かった相手がさらにパワーアップして、苦戦を強いられていた。相手は言葉は発さず、淡々と攻撃していたが、何より威力が絶大であり、街への被害は広がっていく一方だ。もちろん私たちは必死で戦っているのだが、そちらにまで気が回らない。そんなことをしていたら、こちらの命が危ない。危機を察したのか、住民は避難し始めた。もちろん気づいていない者もいるが、少し経てば気づくだろう。私たちは、せめて住民の避難が終わるまで持ち堪えなければならない。人々を守ることが、戦士の大前提だ。それはみんなも感じているらしく、いつになく緊迫した雰囲気をまとっている。その時、背後から妖気を感じた。相手が後ろに回り込んで来たのかと思ったが、相変わらず私たちの前にいる。じゃあ新手かと思い、迷ったが後ろを向くと、謎の人影は姉さんを気絶させた。もう確定だと私は攻撃を仕掛けたが、瞬間移動で避けられた。その時、技の光で姿がよく見えた。顔の半分が見えないくらいに深く帽子を被った、闇狐だった。本人は、ため息をついて口を開いた。

「馬鹿なのか?お前ら。なんで自己犠牲で全員を助けようとする。諦めるという選択肢はないのか?住民だって、やる奴はやる。自分の身くらい、自分で守れる。お前らも、守るのは自分自身だけじゃダメなのか?こいつらを倒すのは、自分を守れて、余裕のある奴でいい。お前らが無理をしたって、自己満足なんだよ」

新手ではないことがわかったが。初対面かつ年上の人にこの言葉遣いだ。だが、言っていることは間違ってはいない。でも…。

「ああ。そんなこと分かり切ってる。俺たちに余裕なんてない。でもな、たとえ自己満足だとしても、俺たちは戦い続ける。人任せで後悔なんて、したくないしな」

ライトさんならそう言うと思った。もちろん、私も同意見だ。人任せで後悔したくないという気持ちは、よく分かる。

「俺が言ってやるのは、ここまでだ。あとはお前らの勝手にしろ。もう一つ、あいつらの狙いは絶対この女だ。こいつを引き渡せば、見逃してくれるだろう。まあ、お前らがそんな選択をするとは思えんがな。俺はもう知らん。勝手に死んでおけ」

そう言って、少年は去っていった。結局戦況は何も変わらず、むしろ姉さんが気絶しているのでより不利な状況で戦う羽目になった。確かに、2人は姉さんの近くを集中的に攻撃している。つまり、私は集中攻撃を受けている。最初のうちはかわせていたが、体力が消耗していくにつれてギリギリになっていき、直撃しそうになった瞬間だった。突然、影が動き、技を打ち消した。もちろん私たちも驚いたが、2人もかなり驚いたようで、辺りを見回していた。こんな暗闇の中で、隠れている者を見つけるのは不可能に近そうだけれど。しかし、技からしてなんだか予想がついた。

「ねえ、結局なんなの?勝手に死んでおけとか言ってたくせに、今度は助けたりして」

これで違う人だったらかなり恥ずかしいことになるが、不思議と確信を持って言えた。案の定、さっきの少年が物陰から出て来た。

「俺の住処を荒らされるのが嫌だっただけだ。勘違いするな。次はないと思え」

じゃあ、なんで私を守る必要があったんだろうねえ、と思ったが、命拾いしたことには間違いはないので、何も言えなかった。それにしても、ただの住人にしてはかなりの戦闘能力だ。

「おい、お前ら。殺されたくなかったらすぐに攻撃を止めるんだな。この暗闇において、1番自由に動き回れるのはこの俺だからな」

どういうことだろうと目を凝らすと、どうやら特殊能力はコウモリらしい。コウモリの翼が生えていた。確かに、暗闇の中は目が見えないので、非常に戦い辛い。それは相手も同じだろう。しかし、コウモリの超音波能力を持っているなら話は変わってくる。気まぐれだが、相手は絶対に倒してくれるような気がする。少年の言葉に2人は反応せず、淡々と攻撃を続けていた。少年はそれを否定と受け取ったらしく、2人を攻撃しようとした。やり過ぎないことを祈るが。

「おい!そこの!邪魔だ!さっさとどけ!」

しかし、全く協調性がなかった。エントを押しのけ、1人で戦い始めた。押しのけられたエントは不服そうだったが、少年の強さに何も言えないようだ。でも、少年が加わったら勝ちということは全くなく、私たちも邪魔だと言われないように攻撃やサポートを始めた。これでは、どちらが立場が上なのかわからない。そうしていると、姉さんが目を覚ました。一瞬何をしているのかわからなかったようだが、私の説明がなくても状況を大体把握したようだ。すぐさま攻撃をしてくれた。しかも邪魔だと言われない程度に。

「お前ら、本当に悪者なのか?全く悪意を感じないんだが」

全く事情を知らない少年も、なんとなく勘づいたようだ。その時、カリが話し始めた。

「……ウ、…ガウ、チガウ」

まるで、狭間の世界にいた恐ろしい方のソウマみたいな話し方だった。

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