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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第二十章 天地の笑顔
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プロローグ 不思議な依頼

 もう十一月だ。今年ももう終わってしまうと思うと、少し寂しい気がする。それはともかく、ライトさんが手紙を持って来たので、任務だろう。どんな依頼かな、と覗き込んでみると、夜中に人の言葉を話すカラスが地震と共にやって来るという相談だった。

「俺たちは不思議探偵団ではないんだが。でも、もしかしたらスインならわかるかもしれないぞ?」

「エント…またそんなこと言って…」

相変わらず、エントは全く変わっていない。姉さんだって、圧倒的な記憶力を基にして推理しているので、未知の存在を理解できるとは思えない。これは、自分たちが行くべき案件なのだろうか。

「でも、もしかしたら人為的なものかもしれないぞ?今の人間界の技術は、相当なものらしいし、それを扱える外交官か何かがやってるんじゃねえの?」

「ライトさん、そのカラスが出るのっていつ?」

「ムルル。残念だけど、午前2時だ。子供は寝る時間だ。気にせず寝ておけ」

「…うん、わかった」

ムルルの働きは、私のガードなんかよりずっと良かった。おかげで、私は攻撃技を試すのに集中できている。だから、ムルル無しだと私が頑張らなくては。気合い入れに頬を叩こうと思ったら、姉さんに止められた。

「なんで」

「もう16なんやから。おてんばもほどほどにしてや」

「はーい」

そうして、私たちは仮眠をとり、やはり起きられなかったライトさんを叩き起こし、無理矢理連れて行った。

「ふああ。眠い」

「今日も9時まで寝てただろ、このねぼすけ。いい加減メリハリをつけろ。しかも、今回は闇屋敷近辺で比較的近いし」

そうこうしている内に目的地に着き、私たちは物陰に隠れた。腕時計が2時を指したとき、地震が起こった。だが、物が動くほどではなく、本当に小さな揺れだ。そして、真っ暗闇の中鳥が現れた。よく見えないので、ライトさんの明かりで見ると、やはりカラスだった。

「ぎゃあああ!出たー!」

思いっきり叫ぶエントだったが、よく見てみると霊的なものではなかった。カラスの羽を生やした少女が、誇らしげにゆっくりと飛んでいた。

「なーんや、可愛い子やん」

「姉さん、油断は禁物だよ」

「分かっとる。そーっと近づいてみるわ」

そうして、姉さんはあえて少女の目の前を歩いて近づいた。

「こんばんは。こんな所で何しとるの?こんな遅い時間に外出とったら危ないで。特に、ここら辺なんか暗い通りに一歩踏み入れたら持っとるもの全部取られてまうで」

「だって、楽しいんだもん。私が飛んでけば、みんなびっくりして、叫ぶの。そこのお兄さんみたいにね。それが面白いの」

幼さを感じる言い回しではあるものの、言葉の発音はしっかりしていて、しっかりとした教育を受けてきたことがわかる。さっきの少女の言葉に嘘は感じなかったし。また、テルルと同じパターンだろうかと思っていたが、少女はとんでもないことを言った。

「ねえ、フォニックスって知らない?見つけたら殺せってボスが言ってたんだけど」

これは、素直に言わない方がいいようだと思ったが、正義に燃えるライトさんはまたやらかした。

「誰だ!子供にそんなこと命じるやつは!ああ。俺たちがフォニックスだ!お前は、なんでそんなことをしなくちゃいけないんだ?」

「私がこうしていれば、お父さんも怒らない。みんな笑顔でいられるの。だから、あなたたちは殺すわ」

終始笑顔で話す様子は少し恐ろしかった。急に風邪の攻撃が来て、私たちは戦わざるを得ないということを悟った。思い切って攻撃しようと近づいたフウワさんだが、地面が動き、近づけないでいた。

「なんだ、これ?これだと一向に攻撃できないぞ!」

「遠距離攻撃も、壁みたいに防がれてまう。地属性でもないのに、地面を自由自在に操れる訳がないし」

確かに、あの揺れも、あの子がやったと考えると、消費妖力が圧倒的に多すぎる。やはり、もう1人いるのだろうか。でも、どこにも見当たらない。しかも、長期戦に持ち込むと攻撃にこちらがやられる。


 同刻。ブラックス本拠地。ブラックスのボスは、水晶玉のような大きさの妖気を利用しフォニックスたちの様子を見ていた。

「フォニックスは、“彼女たち”の力に戸惑っているようです。これはいい時間稼ぎとなるでしょう。それにしても、ムルルが取られたのは痛手でしたね。彼の力を引き出せれば、我々の強力な戦闘力となったでしょうに。まあ、我々にはまだまだ手駒があります。この調子で、じわじわと各国の力を削っていけば、ボスの理想も現実となるでしょう!さて、彼女たちで良いのですか?実験第一号は」

ボスはうなずいた。ボスはあまり声を出したがらない。

「では、早急に準備いたします」

この時、我々は気づいていなかった。フォニックスたちのメンバーの秘められた力と、関わりのある人々の力を。だが、そんなことは知る由もない。時の館の主人は、この騒動にどう思っているのだろうか。

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