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フォニックス 運命の始まり  作者: ことこん
第十九章 戦闘集団の見学
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第四部 複雑な願い

 ライトさんが勢いよく帰って来て、私に姉さんからの伝言を伝えてくれた。驚きしかなかったが、姉さんの言葉を信じて、振り返った。

「ムルル、あなた一体何者?こんな結界を張ったりして」

ムルルは目を見開くと、悲しそうな顔になり、泣き出した。

「だって、お兄ちゃんたちが、争ってるなんて、耐えられないんだよ。どっちの味方をすればいいか、わからなくて、ただ、戦わないで欲しくて、こっそり両方の団に入って、両方のお兄ちゃんの様子を見て、こんな結界を張ってお互いの味方が閉じ込められたら2人とも助けに来て、再会できたらもしかしたら和解できるかなって。…ごめんなさい」

その後は子どもらしくわんわん泣き出してしまった。みんなで必死に宥めたが、一向に泣き止む気配はなく、その代わり結界が解けた。


 しまった。誰かが中に入って来た時に考えを伝えようと考えを込めた技を実体化させようとしたら途中で攻撃されて中途半端におかしな方向に飛んで行ってしまった。もう一度やりたい所だが、もうほとんど妖力が残っていない。こうなったら、残り少ない妖力でやれるだけやるか、と思った瞬間、何が起こったのかシールドが全て消えた。私も驚いたが、もっと驚いていたのは相手の方だった。

「ムルル!あの野郎、裏切ったのか!許さない!」

相手は勢いよくかけだした。私も追いかけようとしたが、レイさんが木に寄りかかっているのを見て、踏みとどまった。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。少し、疲れただけだ」

そう言いながらも、全く大丈夫そうではない。こうなったら、私がゆっくりと運んでいくしかないようだ。


 ムルルが泣きじゃくっていると、誰かが勢いよく近づいてくるのを妖気で感じた。それは、先程まで戦っていた相手だった。

「急に裏切るなんて、どういうことだい?おかげで、面倒なことになってるんだけど。僕、裏切った奴は絶対に許さないのが信条だから。君には口封じに消えてもらわなくちゃならない」

ムルルは後退りをした。そんなムルルの前にも、ライトさんが立ちはだかった。

「勝手に暴れてんのはそっちだし。ムルルはお前らなんかと一緒じゃねえ。ただ、2人の兄のために両団に入るというリスキーなことをしていた健気な弟だ。だから、俺はムルルを守るためにお前と戦う」

「さっき僕にことごとく技を無力化された君がよく言うよ。倒せるもんなら、やってみれば?どうせ、無駄なことだろうけど」

「エレキアロー!」

「だから、無駄なことだっ…」

そう言っていた相手の肩を、エントががっしり掴んでいた。

「俺、知ってるんだぜ?瞬間移動能力は、触れてるものまで巻き込むものだってこと。だから、技をこっちに跳ね返したのは、瞬間移動をして、角度が変わった技を利用してたってこと。お前がそうすれば、俺も瞬間移動して、お前に技を撃てるってことだ。バーニングストーム!」

ゴオッというすごい音と共に、炎の渦が巻き起こった。相手は炎によるダメージを受け、2人とも服が燃え始めていた。

「エント!そんなことしたら服が!」

「大丈夫だ!この下にもう一枚着てる服は耐火性があるフェルクのお母さん特製服だ!」

「…」

心配して損した気分だ。やがて、相手は気絶した。泣きじゃくっていたムルルは、ライトさんとエントに礼を言っていた。その時、レイさんをよいしょよいしょと運んでいる姉さんを見かけた。

「姉さん!」

「レイ!」

ほぼ同時にアイナさんもかけだした。

「ははは。レイさん、重いなあ。もう倒したんか。さすがやなあ、エント君」

「レイ!大丈夫なの?レイ!」

アイナさんは必死で話しかけていた。レイさんは薄目を開けて、アイナさんを見た。

「案ずるな。少し、疲れただけだ」

「どう見ても疲れただけじゃないでしょ!一応ヒラヒノさんに診てもらうからね!」

「断る」

「ダメ!すぐそうやって言うんだから!あなたのためなんだから!」

「断る」

レイさんはアイナさんに持ち上げられた。

「あなたたちも、本部に来て。色々話したいし」

私たちは、居心地の悪そうなムルルを連れてアイナさんに続いた。

「ふう。ようやく預けられたわ。あいつ、あーゆーの嫌いだから。ムルル、あなたはこれからどうするの?」

「あのね、僕、2人に平等でありたいんだ。だから、ブラックスを裏切った今は、平等じゃないと思うんだ。こっちの兄ちゃんの味方をすることになるから。でも、向こうの兄ちゃんは止めたい。だから」

ムルルはこちらを見た。

「フォニックスさん。あなたたちの元で活動し、兄ちゃんを止めさせてくれませんか。もちろん、どんな任務でも手伝います。絶対に、ご迷惑はおかけしません。僕を、一時的な仲間にしてくれませんか」

私たちが何か言うより先に、ライトさんが前に出た。

「ああ。お互い目的は一緒だし。仲間は、多い方がいい。いいよな、アイナさん」

「一応、団長に確認とるけど、いいと思うわ」

そう言って、上着を着直した。こうして、ムルルが仲間になった。

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