第五部 違和感
翌朝。心地良い九月の風が吹き、小鳥がさえずる中、気持ちよく熟睡…なはずだったが、またしてもフウワに叩き起こされた。
「いくらなんでも、こんな起こし方ないだろ?そっちは知らないと思うけど、こっちは戦闘中ずーっと攻撃し続けてるんだぞ!体力の消費量が違うんだよ!」
「はあ?それとこれはまた別の話だろ!お前は任務のあるなしに関係なくねぼすけじゃねえか!そんなの理由になんねえよ!」
こうして、言い訳も最も簡単に言い返され、不可抗力で食卓に向かうのが毎朝の起き方だった。食卓に行くと、みんなはやはり呆れ顔で待っていた。
「おはよう、みんな!ソウマ、大丈夫だったんだな!ごめんな、真っ先に寝ちゃって。なんか、すっげえ眠かったんだ」
「寝坊に共感はしないけど、昨日すごく眠かったのはわかる。ソウマさんに申し訳ないのは分かってたんだけど、ベットに吸い寄せられる感じで」
「ああ。もしかしたら、何者かが夢として俺たちにあいつの過去を伝えたのかもしれねえな」
「なんのこと?ある僕は少年の視点で、500年前の世界を見た夢だったんだけど」
もしかしたら、呼び覚まされた意識の記憶なのかもしれないが、ソウマが混乱すると思い、あえて口には出さなかった。その夢を見せているのは協力者かそれともブラックスの一員なのかわからないが、あれが事実であることは間違いなさそうだ。その時、スインが手を挙げ、話し始めた。
「相手の動機についてなんやけど、なんや違和感を感じるんや。どう考えても、不自然なんよ。あのコウくんがいくら空腹だからって野菜泥棒になるようなことはないやろうし、心優しいナノガさんがすぐにそんなことを思いつくとは思えやん。他の人たちもや。絶対に、裏で糸を引いている人がいる。ミレイさんだって、そもそも両親の離婚自体が不自然やし。もしかしたら、私たちは人を操れる能力者が作ったシナリオ通りに動いているだけかもしれへん。まあ、ただの勘やけどな」
「それだったら、ロル君たちが暴れ出したのにも合点がいくよね」
「待て待て、人を操れるのはオスコだけだろ。どう考えても有り得ない。作者の表現が下手なだけじゃねえの?」
エントはフウワに思い切り殴られ、床の下に落ちていった。
「んなわけあるかよ!もしそうだったとしても、それは禁句だ!作者って言うな!」
「さく…しゃ?」
「いや、なんでもねえ。気にすんなエントも自力で戻ってくるだろ」
「でも、エント君の言う通り、人を操れる特殊能力を持つのはオスコさんだけだ。だとしたら、技で人を操ってるのかな?」
「そんな技、聞いたこともありませんが…」
みんなが頭を抱えている中、お茶と朝食を運んで来たコウが思いもしなかった発言をした。
「思考を狂わせる技ならあるぞ。ブレックジンって言ってな、そんなに妖力を消費せずに、人の思考を狂わせる技なんだと。でも、危険すぎてお蔵入りになったそうだ。まあ、誰かが再び解放した可能性も十分あるけどな」
「なんでお前こんなこと知ってるんだ?」
「昔、延々と技を学ばされた記憶があるんだけど、そのうちの一つだ。なんのためだったのかは、全く覚えてないけどな」
「ブレックジン…か。ありがとう、コウ。家事に専念してくれ。あと、今日は俺の朝食はいらない。別の部屋で2人きりで話したいんだ。いいか?スイン」
「ええで。別に一食食べやんくても死ぬわけやないし」
みんなは不思議そうに食卓を去っていく俺たちを見ていた。1階の空き部屋に入り、ドアを閉め、俺は振り向いた。
「コウがブレックジンと言った時、スイン。お前だけが、驚いた様子だった。知ってるんだろ?ブレックジンについて」
「さすが。ライト君には敵わんなあ。昔、一度だけ、使っている所を見たことがあった。そして、受けた人は光狐やった。それが原因で、光逆戦争は起こったのかもしれやんな。こんなこと、人に言えるわけなかったけど。使っていた人は、なんだか気迫があって、マントに黒いハット帽をつけとったから、どんな人かはわからんけど、見つかったら殺される気がして、あの時は必死で逃げたんや。特殊能力を使ってな」
「黒幕はそいつなのか?」
「いや、そうとも言い切れへん。私たちが請け負ってるような事件が、人の速度では無理すぎるスパンと広範囲で、起こってるらしいんや。だから、ブレックジン使いが複数人いると考えた方が妥当やろ。これは私たちが調べ切れることではないから、他の組織と情報交換することも大切かもしれやんな」
「情報交換か…。パワーアップして来たとはいえ、俺たちはまだ二流三流の戦士だ。相手にしてくれる組織があるといいんだが…」
「そこは、最高権力の方が身近におるやない」
言われた時はピンと来なかったが、説明されて、すぐに合点がいった。しかし、それ程の人がそんなに簡単に動くものだろうか?時間も労力もかなりかかる。だが、あの人ならやってくれるかもしれない。




