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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第十八章 月の従者
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第三部 フウワの悩み、妖力

 本気を出したロボットを前にして、私はまた震えそうになったが、誰かが側にいることに気がついた。意外なことに、ソウマだった。あの日を境に、よそよそしくなったのを感じていたからだ。

「フウワさん、大丈夫?さっきから、ずっと止まってるけど」

「なあ、ソウマ。お前はなんでそんなに勇敢に突っ込んでいけるんだ?私だったら…怖くて仕方がない」

「僕だって怖がりさ。誰だって怖いものはあると思うし。でも、僕はみんなから必要とされなくなる方が怖い。結局、僕がみんなと一緒にいて見劣りしないのは打たれ強さと、こうやってみんなの話を聞くことくらい。しかも、草属性って自分の植物が決まってるんだけど、僕、ハエトリソウなんだよね」

最後は笑い話に変えて、はははと笑うソウマだったが、すぐに真顔になった。

「もっと自信を持ってもいいと思うよ。フウワさんだったら、あの硬い金属だって突き破れるよ。だってフウワさんの打撃は他の誰にも真似できない、日々の努力で磨かれたものだと思うから」

がんばれ、とソウマは言って、周辺の動物たちを避難させに行った。改めて、ロボットを見た。やはり、金属の硬さはかなりもので、パワーアップした今はさらに硬いだろう。でも、とりあえず、やるでけやってみようと思い、妖気をテールハンドに集中させた。元々少ない妖気を、集中させたとしても大したものにはならないかもしれないが、何もないよりはずっとマシだ。せっかくなので、もっと風属性らしい技を使ってみたいが、今回はそんな余裕はない。でも、やってみたいなあ…と竜巻を思い浮かべていると、あるものと形が一致した。これなら、もしかするとあの金属も貫けるかもしれない。ただ、妖力が足りるかどうか心配だ。しかし、誰かに妖力をもらうのは容易なことではない。妖力をもらうためとはいえ、誰かとキスをするなんて…と勝手に考えて赤くなってしまった。この中の誰とやっても、お互いの気持ちは複雑だろう。アインとかでも流石に…と勝手におかしなことを考えていると、アインの持っている妖石を思い出したしかし、あれはアインの必需品なので、誰かに貸すわけには…。

「どうしたんだ?フウワ。赤くなったり真剣な顔になったり」

「エ、エント?」

どうやら全て顔に出ていたらしい。見られたのがエントでよかった。ライトが見たらきっとけんかの時に持ち出されるし、スインに見られたらきっと後で何があったのかしつこく聞かれそうだし。

「いや、技を出したくても、妖力が足りないなあ、と思って、それで…」

「あー、なるほどな。妖力を分けようにも、キ…」

私は慌ててエントの口を塞いだ。

「それ以上は言うな、エント。アインが集中できなくなる」

アインがちょうど何を話しているのか気になったようで、それを利用させてもらった。

「分かった、分かった。確かにこういう話すると勘違いされそうだもんな。妖気が欲しいんなら、俺妖石持ってるぞ。ツーハが持ってきたやつを、そのまま持ってただけで、使ってないし」

「いいのか?」

「いいぞ。別に俺、みんなで戦う時は妖力不足にならないし」

「じゃあ、ありがたく借りよう」

こうして手に入れた妖石だったが、そこに込められているのは当然ながら炎の妖力だったので、うまく変換できるかわからないが、やってみることにした。ギーヨ様に教えてもらった時は全く出来なかったが、今は思ったよりも簡単にできた。どんどん妖気が入ってくるのを感じ、もう十分だと確信した時、テールハンドを風を纏わせて高速回転させ、そのまま突進した。

「テールドリル!」

ライトが驚いて横に跳んだのが見えた。しかし、ロボットにはそこまでの機動力はなく、見事に命中した。やはり金属は硬かったが、残り妖力を気にせず一気に回転を速めると、金属を貫き、さらに中の部分やもう片方の金属も突き破り、ロボットは動かなくなった。すかさず後ろに跳んで様子を見ると、ロボットは妖力で動き出した。おそらく取り込まれたやつの妖力だろう。こんな状況で、それだけ妖力があったらいいのになあと思ってしまった。一体さっきから何を考えてるんだか。あんまりこういうことを繰り返していると相手に悟られかねないから、やめたいとは思っているのだけれど。でも、もはやロボットは入れ物でしかなく、動かしている妖力を止めなければならない。ロボットは不思議な力で空に浮かび、そのまま空中で静止した。戦っている時は気が付かなかったが、もうとっくに夜になっていた。しかし、空には月が輝いていて、暗さはあまり感じなかった。ロボットは闇攻撃を開始した。かなりの威力だろう。かわして地面に当たったのだが、その跡はかなり大きな穴となっていた。みんなで懸命に攻撃したが、穴の空いたロボットは壊せても、その本体に届かず、ダメージはなかった。どうしたものかと空を見上げると、ロボットの上空に光るものを見つけた。妖気を感じる何かが。

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