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フォニックス 運命の始まり(年明けより大幅改稿予定)  作者: ことこん
第十七章 イネイを救うために
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第五部 イネイの決意

 家に帰ると、みんなは疲れていたので、帰って来ていたコウがすでに作っていた夕飯を食べ、歯磨きや風呂など、やるべきことを済ませ、すぐ寝た。疲れもあったのか、熟睡できた。


 翌朝。ゆすられているのを感じ、フウワが来たから、そろそろ起きようと思って目を開けると、イネイだった。

「ふえっ!?イネイ?」

「ライトさん。早く来てください。もうみんな着替えてますよ!」

イネイは勢いよく部屋を飛び出して行った。俺も急いで支度し、後に続いた。食卓に行くと、いい匂いが漂っていた。なんだろうと思って入ってみると、美味しそうなパンケーキが皿に乗っていた。奥では、スインがみんなに話しかけられていた。もしかしてと思ってカレンダーを見ると、やはりスインの誕生日だった。やらかしてしまった。大きな任務の翌日だったので、気が抜けてしまっていた。

「遅かったな、兄者。仲間の誕生日を忘れてぐっすり熟睡とは、どういうことだ」

今回ばかりは反論も出来ず、目を逸らしただけだった。

「お誕生日おめでとう、スイン。いつもありがとな」

「おはよう、ライト君。毛がはねとるで」

「あ、ありがとう」

ソウマがスインに水蓮をあげたり、美味しいパンケーキを食べたり、賑やかな雰囲気の中、イネイが真面目な顔で口を開いた。

「あの、いい雰囲気の所申し訳ないんですが、私、思ったんです。今回のようなことは、また起こるかもしれない。それだったら、私は穀物屋敷に大人しく帰るのが1番かもしれません。でも、そうしたら誰がツーハさんやコウさんを守るのかなって。迷惑かもしれませんが、もし、あの力を使いこなすことができれば、私も戦えるかもしれない。時間はかかるかもしれませんが、きっと、できるようになるはずです。だから、私にもう1度だけチャンスをください。それでもし、また皆さんの足手纏いになったならば、大人しく帰ります。守ってもらうだけなのはもう終わりにしたいんです。私、もう少しだけ、ここにいたいんです。どうか、お願いします!」

思いっきり頭を下げたイネイに戸惑う自分達だったが、口を開いたのは意外にもスインだった。

「確かに、イネイちゃんの能力はまだまだ未知数で、どれだけでも伸び代があると思う。でも、身の安全は保証できやんし、何よりここにおったら穀物狐の使命は果たせやん。もししばらくして帰っても、周りからの視線はいいものやないやろな。それでもここにいて、強くなりたいんなら、それでもええ。後は、イネイちゃんが決めることや」

「もう、答えは決まっています。お言葉に甘えて、ここにしばらくいさせてもらいます。もちろん、掃除や洗濯などは、自分でしますし、足手纏いになったら帰るという約束も守ります。どうか、よろしくお願いします」

そう言ったイネイは、出会った頃の正義感の強さはそのままに、更に凛とした雰囲気を漂わせていた。

「ああ。引き続きよろしくな、イネイ」

「はい!」

イネイはパンケーキを平らげると、皿を下げ、中庭に行った。どうやら、かなり本気らしい。

「食べてからすぐ動くと、お腹痛なるに!」

「分かってますよ。動くんじゃありません。あの力は想いが由来していると思いますし」

次いで、フウワもまた、中庭に出て行き、その後はアイン、エント、ソウマ、スイン、俺の順に中庭に行った。中庭では、イネイが真剣に考え込んでいた。

「どうやら、まず召喚の仕方が分からないらしい。どうにかならないのか…」

「力を入れてやってみても、無理だったぞ」

「妖気を集中させるイメージを持っても、無理だったし。それじゃあ、何で呼び出してるんだろ?」

「うーん、イメージが浮かばなくても、昨日のようなピンチを再現してみればいいんじゃないか?」

「悪くないな」

フウワにイネイを襲ってもらい、試すことにした。フウワの蹴りに、イネイが後退りして行き、壁に当たって逃げ場を失った。フウワが容赦なく蹴りを繰り出したその時、あの時のようなエネルギーを感じ、エレンが険しい顔でフウワの蹴りを受け止めていた。

『何をやってるの?あなたたち』

「実は、呼び出し方が分からなかったから、フウワに敵代わりになってもらって、呼べるかどうか試してたんです」

『なーんだ。びっくりしちゃった。それなら、いいこと教えてあげる。私とかのエネルギー体を呼ぶ時は、強い想いが大切よ。そうすれば、いつでも助けてあげる。頑張って練習すれば、呼び出したままでいられる時間も増えるしね』

エレンはイネイを取り込まずに、そう言った。イネイはただコクコク頷いただけだった。

「イネイを取り込むことに、意味があるんですか?」

『それは、私が安定するためよ。エネルギー体の状態だと、やっぱり不安定だから。イネイが私を離さないって強く思い続ければ、長い時間いられるはずよ』

じゃあ、とエレンは消えて行った。少し不思議な能力を使いこなすことを、イネイが決意した午後だった。



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